神の花嫁

 

この風の向く方へ この雲の流るる方へ
生きとしゆける者を運び そしてさらってゆく
この大地と 未来と 己に 耳を傾けよ 

この水の降り立つ場所へ この砂の還る所へ
死にゆく者を迎え そして奪ってゆく
この天空と 近しい者と 目の前にある時に 耳を傾けよ 

天を唄い 地に口付けよ
この場所に生きる者よ かつてこの場所に生きた者よ
木々の言葉を受け止めよ 実りの叫びを刻みつけよ
鳥の羽ばたきは海に還り うおの煌きは山に還る 

大いなる光が地を覆い隠し 己の闇が見えなくなる時
その闇にこそ 己を見つけよ
その影にこそ 咲き乱れる花を見つけよ
逆巻く波に 身を委ねよ
時を遡り 己に触れよ
咲き初めた激情を洗い清めよ 

己を鎮め 過去を見つめよ
手を伸ばし 己を抱きとめよ

大地と天空と大海と それら全てに宿る 

―――神の花嫁となれ―――