このお話は、Twitterの診断メーカー「クリスマスのお作法」で、今年のクリスマスの手順を「真田」で診断したら出てきた以下の諸々から妄想したものです。「真田のクリスマスの手順は その1.シャンパンを飲む その2.目隠しをする その3.縛る その4.ローソクに火をつける その5.ケーキを食べる」友人から「筆頭に期待させるだけ期待させといて真田酷い、本当に酷い」と言われたので、これを無理矢理曲解してどうにかしてラブラブにしようとしたのがこのお話になります。あくまで全てが冗談です。現代版では真田がある意味とても酷かったので、戦国版では筆頭に幸せになってもらいたくて書き始めたはずなのですが・・・「いいじゃない、受が攻を縛ったって」と言う方はお友達になりましょう(真顔)。ではどうぞー。

 

 

聖なる夜に妄想を 戦国版 1

 

 

 師走下旬のとある日、陽はとっくに沈んでもうそろそろ日付も変わろうかと言う時間帯。幸村は甲斐の躑躅ヶ崎館近くにある自分に割り当てられた屋敷に居た。幸村の祖父の代に武田家より賜ったものだ。何故幸村が本城である上田ではなく甲斐に居るかと言うと、訳あって本日は躑躅ヶ崎館にて奥州の独眼竜が招かれて宴が催されていたのだ。その宴も先ほどお開きとなった。これ以上の夜更かしは油の浪費、最近めっきり冷え込みも厳しくなり、宴の酒で体が温まっているうちに床に入るが得策と、幸村は寝間着に着替えてかいまきに潜り込もうとしていた。その矢先、屋敷の門辺りが急に騒がしくなった。
「一体どうした。」
このような時間に何用かと、眉を顰めた幸村が佐助を呼び寄せると、苦労人の忍は頭が痛そうに主に報告をした。
「あー、えっとー、竜の旦那がおいでです。」
「なにっ?!」
吃驚して飛び起きた幸村が慌てて羽織を取り肩口に引っ掛けた瞬間、幸村の部屋の障子がカラリと開いた。
Yey! 上がるぜ。」
幸村が声も出せずに口をぱくぱくさせている間に、政宗はどかどかと幸村の部屋に上がり込んで来た。
「ま・・・政宗殿! 斯様な時間に如何なされた!」
いつも自由奔放な好敵手に振り回されっぱなしの幸村が、目を白黒させて政宗の前に膝をついていると、政宗は邪魔そうに手を振った。
「狭いんだから、とっとと布団上げろ。」
他人の部屋に勝手に入り込んだ挙句に狭いと言い切る政宗はそりゃまあ傲慢なものだが、幸村はそんな些事には慣れっこになっていた。だがこんな時間に押しかけてくるには何か重大な理由があるのではないかと幸村が身構えた瞬間、政宗が提げていた竹籠を幸村に差し出した。
「今晩は南蛮教の目出度い宵なんだとよ。せっかくアンタもオレも此処に居るんなら、興に乗って祝ってやろうと思ってな。」
「なんと・・・!」
理由はどうあれ、思いもかけなかった嬉しい出来事に、目を細める幸村であった。

 

 部屋には灯りが燈され、かいまきやら何やらは綺麗に片付けられ、火鉢が幾つか運ばれてきた。屋敷の者も佐助もその場から下がらせると、幸村は改めて政宗から渡された籠を覗き込んだ。政宗の持ってきた竹籠の中には、大ぶりの瓢箪とギヤマンの器二つ、そして大きな南蛮菓子と思わしき白い塊が竹の葉に乗せられて入っていた。
「おお、これは・・・」
ふわりと鼻腔をくすぐった甘い香りに、幸村はこの白い塊の正体が分かった。すぽんじと言うかすていらに似たふわふわした甘いものに、牛の乳と砂糖と卵で作ったくりーむと言う泡立った菓子が塗りたくられたけえきと言う名の南蛮渡来の甘味だ。以前も、意外とまめな政宗が、幸村の誕生日にと作ってくれた事がある。幸村は目を輝かせて真っ先にその甘味を取ろうとしたが、即座に政宗にその手を叩かれた。
「こいつは後だ! まずは乾杯しろ。」
「そ・・・そうですな・・・」
見るからにしょんぼりした幸村をまだ餓鬼だなァと笑い、政宗が籠の中から瓢箪を取り上げて栓を開けた。すると、ポンッと思いのほか大きな破裂音に似た音がして、幸村がびくっと身体を強張らせた。
Haha! この南蛮の酒は発泡しててな。」
そんな事を言いつつ、政宗はギヤマンの細長い盃を一つ幸村に渡した。トクトクと器に瓢箪の中身が注がれると、そこには濁りの無い、細かい泡が連なって立ち上る美しい酒があった。
「ほう、これはまた素晴らしき酒にござりまするなぁ!」
そう言って器と酒を眺め透かす幸村を、政宗は満足そうに眺めていた。

 

さすがに政宗の持ってきたものだけあって、この酒は上等な味がした。元々酒好きでそこそこ酒に強い二人だ。つまみはないのにぐいぐいと進んだ。さて、散々躑躅ヶ崎館での宴で飲んでいた上に、意外と酒精の割が高い酒を胃に入れた二人は、流石にいつもより酔いが早く回ってきていた。特に政宗は、見た目はさほど変わらないのだが、瓢箪が空になる頃には多少自分より背の低い幸村の肩に肘を乗せて顔も寄せ、はわはわと真っ赤になる幸村の表情を愉しむくらいには酔っていた。
「ま、政宗殿・・・某・・・」
幸村が何か言おうとしたのを、政宗がその唇に指を当てて遮った。
「黙ってな。」
そう言ったかと思うと政宗は、いつも幸村が額に巻いている紅い鉢巻を乱れ箱からしゅるりと持ち上げた。
「今夜はこれで、オレの好きにさせてもらうぜ。」
「好きに、と申されますが一体・・・」
酒のせいだけでは絶対にないような耳まで赤くした幸村ににじり寄り、腿に半ば乗っかりながら政宗はニヤリと笑って言葉を続けた。
「例えば・・・」
ほとんど無抵抗な、そしていつまで経っても初な幸村に笑いを零しながら政宗は、鉢巻で幸村の目を塞ぐように当てた。
「こうやって、目隠しするのはどうだ。」
「ま・・・」
更に何か口にしかけた幸村の両手首を取ってぐいっと一纏めにし、政宗は幸村の両腕の自由を奪った。政宗は見た目に反して相当酔っ払っているようだ。一体これから何をされてしまうのかと、紅い布で視界が塞がれた幸村は聴覚を研ぎ澄ませた。期待半分不安半分でごくりと小さく幸村の咽喉が鳴ったのを、政宗は聞き逃さなかった。
「なんだ、目隠しだけじゃ足りねェのか? じゃあ、こうしちゃァどうだ。まだ余ってんだろ。」
幸村の目隠しをしても、幸村の鉢巻はまだ長く残っていた。肌触りの良いそれは、肌を直接縛ってもそれほど痛くもないし痕も残らないだろう。政宗は幸村の腿に跨ったまま、幸村の手首に巻き付いていた鉢巻をキュッと締めた。すると、目隠し兼拘束具と成り果てた紅い鉢巻に、頭の後ろで交差した手首がきっちりと縛られた幸村が出来上がった。

 

 

つづく