このお話は、Twitterの診断メーカー「クリスマスのお作法」で、今年のクリスマスの手順を「真田」で診断したら出てきた以下の諸々から妄想したものです。「真田のクリスマスの手順は その1.シャンパンを飲む その2.目隠しをする その3.縛る その4.ローソクに火をつける その5.ケーキを食べる」友人から「筆頭に期待させるだけ期待させといて真田酷い、本当に酷い」と言われて何だか無性に酷い真田が書きたくなりました。全てがあくまで冗談です。しかし悪乗りしておりまして、本当に真田がある意味酷いです。むしろ酷い真田がテーマです。そしてこれはいつも書いている真田でも筆頭でもありません。同姓同名のよく似た口調とよく似た容姿の全く別のバカップルのお話だと思って頂ければ幸いです。いつものサナダテがご覧になりたい方は、「聖なる夜に妄想を(戦国版)」をご覧下さい。それでも構わない、こっち読んでやる! と言う心臓に毛の生えた方のみお楽しみ下さい。では、どうぞー。

 

 

聖なる夜に妄想を 現代版 1

 

 この日ノ本には不思議な定番がある。全くの無宗教にも関わらず、多くの恋人がその聖なる夜とやらに引っ掛けて甘い夜を過ごそうと言うものだ。そしてここにも一組のバカップルが存在した・・・。

 

 師走下旬のとある日、陽はとっくに沈んでもうそろそろ日付も変わろうかと言う時間帯。幸村は自宅のアパートで寒いし腹も減ったしもう寝ようかと思っていた。これから風呂を沸かすのも億劫だ。どうせ明日は休みだから、このまま寝てしまえと決心した瞬間、玄関からチャイムの音が聞こえた。
「一体誰でござろう・・・」
このような時間に何用かと、眉を顰めた幸村がインターホンを覗くと、そこにはこの部屋の鍵を開けようとしている政宗の姿が映った。びっくりしている間に、政宗は合鍵で部屋に上がり込んで来た。
Yey! 上がるぜ。」
「ま・・・政宗殿! 斯様な時間に如何なされた!」
いつも自由奔放な恋人に振り回されっぱなしの幸村が、目を白黒させて政宗の前に立つと、政宗は邪魔そうに手を振った。
「狭いんだから、とっとと中入れ。」
他人の家を狭いと言い切る政宗はまあそりゃあ傲慢なものだが、幸村はそんな些事は慣れっこになっていた。だがこんな時間に押しかけてくるには何か重大な理由があるのではないかと幸村が身構えた瞬間、政宗が提げていたデパートのものにしてはえらく豪勢な紙袋を幸村に差し出した。
Christmas Eveだろ、今日は。二人で祝おうと思ってな。」
「なんと・・・!」
思いもかけなかった嬉しいクリスマスプレゼントに、目を細める幸村であった。

 

 政宗の持ってきた紙袋の中には、幸村でも知っているような名のついたシャンパンと、ケーキと思しき大きな赤いリボンの掛かった箱が入っていた。
「おお、これは・・・」
腹の空いていた幸村は目を輝かせて真っ先にケーキを取ろうとしたが、政宗にその手を叩かれた。
「こいつは後だ! まずは乾杯しろ。」
「はっ。そ・・・そうですな!」
見るからにしょんぼりした幸村をまだまだ子供だなぁと余裕で笑って、政宗がシャンパンの栓を開けた。

 

 さすがに政宗の選んだものだけあって、このシャンパンは上等な味がした。元々酒好きでそこそこ酒に強い二人だ。つまみはないのにぐいぐいと進んだ。幸村の家に高級なグラスなどあるはずもなく、それでも政宗は辛うじて百円均一の無骨なガラスのコップ、幸村に至っては「天覇絶槍」と太い筆文字で書かれている真っ赤な湯呑みに注がれていた。
「入れ物が変わると酒の味も変わるってェのに、情緒のねェ野郎・・・」
などとぶつぶつ文句を言っている割には、上機嫌の政宗であった。

 

つづく