筆頭の優雅な一日 2

 

 幸村への返事の内容をつらつらと考えているうちに、時計の音が鳴っているのが聞こえた。この時計は、最新式南蛮からくりで、起きたい時間に音を鳴らしてくれると言う優れものだ。南に遠征した際、妙な南蛮城を攻めて手に入れたものだったが、意外と重宝している。政宗のお気に入りの一つだ。それはさておき、もっと早く起きているならば軽く身体を動かそうと言う気にもなるのだが、今朝は幸村の事を考えているだけで時間が過ぎてしまった。そんな自分に少しだけ舌打ちをして、政宗は寝たふりをした。

「筆頭、朝です。起きて下さい。」

誰が悪い訳でもないのだが、朝の時間を全部幸村に奪われたような気がして、政宗は一回目に起こされても知らんふりをした。寝たふりをしていた上にそんな事をするなど、子供っぽい真似はお止め下さいと小十郎あたりに言われそうだが、そんな事知るかと政宗は寝返りをうった。

「筆頭! 起きてるんでしょう。」

じっとりとした視線を容易に想像できるような声で家臣が再び声をかけてきた。

An? ふざけた事言ってんじゃねぇよ。今起きた。」

「本当っスか?」

「当たり前だろ。」

「じゃあ、それでいいっスよ。卯の刻です、筆頭。」

毎朝何だかんだとからかわれて遊ばれているような気がして仕方がない家臣たちの諦めに似た溜息混じりの声に機嫌を直した政宗は、ニヤニヤしながら襖を開けた。家臣たちは基本的に、政宗が開けない限りは私室の襖や障子に触れる事すらしない。

Good morning guys!」

「おはようございます。」

「おはようございます筆頭。」

 

つづく