●1-1. 愛 称・路線の考え方
「東北・ほっかいどう銀河新幹線」とは,東京−札幌間を結ぶ高速鉄道の愛称です。この名前は,あたかも夜空に流れる銀河のように,この高速鉄道が北海道・東北・関東を貫流し,多くの人の流れを創りだす「川」となってほしい,との願いから,このサイトが独自につけたものです。
なお次項「経緯」でも述べる通り,このサイトでは『東京−札幌間の高速鉄道は一体となったとき,はじめて本来の機能を発揮するものであり,そのつながりは東海道新幹線と山陽新幹線の関係以上に密接である』と考えています。したがって一般によく使われている…
・東京−新青森は東北新幹線
・新青森−札幌は北海道新幹線
…といった分け方をせず,以後,歴史的経緯を踏まえた記述を除いて全て「東北・ほっかいどう銀河新幹線」と表記することにします。
●1-2. 路線の構成
「東北・ほっかいどう銀河新幹線」東京−札幌間の総延長は1,035.070kmです。これは航空機の894km(羽田−新千歳間)には及ばないものの,現在のJR在来線(1,211.5km)より約15%も短縮されています。特に八戸−新青森間と新函館−札幌間は短縮幅が大きくなっており,在来線の約2/3です。
「東北・ほっかいどう銀河新幹線」を整備の進展状況からみると,大きく3つの区間に分けることができます。
(1)東 京−盛 岡 間(496.5km)
既に”東北新幹線”として営業している区間です。
東京−盛岡間の全区間で1971年に工事実施認可がなされたにもかかわらず,2度のオイルショックや国鉄財政悪化に伴う資金難,さらに新幹線による騒音振動公害を懸念する東京都北区・埼玉県南部の地元住民からの工事差し止め訴訟,地元との折衝によるルート変更などもあり,工事は大幅に遅れました。
はじめに開業したのは大宮−盛岡間465.2km(実キロ)で,1982年6月23日のことでした。この段階では,上野−大宮間は在来線にアクセス列車「新幹線リレー号」を運転する変則的な輸送体系でした。
続いて上野−大宮間27.7kmが1985年3月14日に開業,北への新幹線は,ようやく都内に始発駅を持つことができるようになりました。
残る東京−上野間3.6kmは,国鉄の財政事情の悪化に伴い,着工自体を先送りしていた区間です。大宮−盛岡間の開業が目前に迫った1981年9月に着工に漕ぎつけたものの,国鉄の分割民営化を前に工事は中断。1987年に工事を再開,1991年6月20日にようやく完成しました。これにより東海道・山陽新幹線との乗換えがスムーズになりました。
2001年3月現在,東京−盛岡間を最速列車は2時間21分で走破しており,表定速度は211.3km/h(実キロ基準)です。
(2)盛 岡−新青森 間(178.4km)
1990年代に入って着工した区間です。
歴史的な経緯は次項に譲るとして,現在は盛岡−八戸間96.6kmと八戸−新青森間81.8kmの2区間に分けて工事が進められています。このうち盛岡−盛岡運転所間の3.3kmは1982年に完成しているため,盛岡−八戸間の実際の工事延長は93.3kmとなります。
盛岡−八戸間96.6kmは着工から10年(盛岡−沼宮内間は7年)を経た2002年12月に開業する予定です。一方,八戸−新青森間81.8kmは1998年3月に着工,現在の予定では2012年頃の開業が予定されています。これらの区間は大部分がトンネルです。なかでも長大トンネルが多く,盛岡−八戸間の開業時点では陸上トンネル世界最長となる岩手一戸トンネル(25.810km,沼宮内−二達します。戸間)や,その記録を更新することになる八甲田トンネル(26.455km,七戸−新青森間)はその象徴です。
盛岡−八戸間のルートは,当初沼宮内−八戸間のみを建設,前後の区間は在来線の改軌(軌間を広げること)=ミニ新幹線化で対応しようとした影響もあり,沼宮内・一戸・八戸と全ての駅を現在の在来線に併設,各駅間を最短距離で結ぶよう,トンネルを多用しています。勾配や曲線も少なくありませんが,10‰程度の勾配が多いので高速運転に影響は少なく,曲線半径も300km/h程度までは問題とならない半径4,000m(=R4,000)程度に抑えられています。
これに対し,八戸−新青森間のルートは三沢・野辺地といった青森県内の小都市へのアクセスを考慮せず,また青森のターミナルも延伸を前提に郊外部の石江地区に「新青森」駅を設置するなど,とにかく東京−札幌間を最短距離で結ぶことを第一義としたものになっています。このため,八戸−新青森間は長大トンネルの連続で,途中国道4号線と交差する七戸町付近に七戸駅が設けられるだけです。
JR東日本によると,八戸開業時点で,東京−八戸間は2時間50分程度(最速列車)で結ばれる予定です。
一方,国土交通省によると,新青森開業時点での東京−新青森間の所要時間は3時間20分程度と試算されています。しかしJR東日本は独自に300km/h超の高速新幹線を開発して同区間を2時間台で結ぶ構想を発表しており,今後の動きが注目されるところです。
なお当サイトの試算では,東京−新青森間の所要時間は500系タイプの車両による320km/h運転の場合で2時間42分,同300km/h運転の場合で2時間48分(いずれも大宮・仙台停車)です。
(3)新青森−札 幌 間(360.2km)
現在も未着工の区間です。
北海道庁はじめ関係団体は長らく全線の一括開業,つまり東京−札幌間全線開業を求めていましたが,2000年12月より,新青森−新函館間148.9kmと新函館−札幌間211.3kmの2区間に分け,前者を八戸−新青森間の開業にあわせて先行開業させる,いわゆる「青函同時開業」に方針を転換しました。
調査自体は1972年から継続されてきましたが,1998年2月にルート・駅が公表され,2000年7月より環境影響評価が開始されました。2001年度は青函トンネルを在来線と共用するための調査が行われ,特に問題ないという結論を得たことから,2002年1月8日に新青森−札幌間の全線で工事実施認可申請に至ったものです。
新青森から大平(おおだい)付近まで一直線に進み,そのまま現在在来線として開業している海峡線に接続します。そもそも海峡線は北海道新幹線として建設された構造物を在来線に転用して使用しており,そのまま新幹線への転用が可能です。現在のスキームでは運行事業者となることが想定されているJR北海道は貨物列車の新幹線走行に難色を示していますが,この場合も海峡線区間だけは3線軌道として在来線と共用することが考えられており,構造物も3線軌道に対応したものになっています。やがて青函トンネルを通過して北海道に達し,木古内駅の手前で再び在来線と分岐,上磯町へ直進した後,大きな左カーブで函館平野を横切って新函館駅に達します。新函館駅は,新青森−札幌間を最短距離で結ぶという前提のもと,計画当時に想定していた木古内−大沼−森−八雲を経由するルート上に位置する地点として,函館市内より約15km離れた現在の渡島大野駅付近が選定されています。
新函館からは中山峠の地下を経由して新八雲,そして長万部へ直進します。中山峠へ登る区間は22〜30‰の勾配とトンネルが連続する第一の難所です。中山峠直下には北海道新幹線最長の桧山トンネル(20.035km)があります。
長万部から静狩まで噴火湾沿いに進んだ後,静狩峠を直進して昆布,ニセコを経て倶知安に至ります。静狩峠へ登る区間は30‰の勾配と内浦トンネル(15.555km)が存在する第二の難所です。
倶知安からは二ツ森トンネル(12.630km),後志トンネル(17.975km)の2つのトンネルで赤井川村のカルデラをかすめながら新小樽へ。朝里川温泉付近からは,手稲山の地下を貫通,さらに手稲区南部を地下で通過する手稲トンネル(18.840km)で一気に発寒へ達します。ここから在来線に並行して札幌に到着します。
国土交通省によると,新青森−札幌間は1時間40分(260km/h運転)で結ばれる計画です。先の東京−新青森間3時間20分とあわせると,東京−札幌間は5時間00分となり,全区間通しての利用はほとんど期待できません。しかし当サイトの試算では,東京−札幌間の所要時間は,500系タイプの車両による320km/h運転の場合で3時間48分,同300km/h運転の場合で3時間57分(いずれもノンストップ)となり,航空機に対する一定の競争力を持つことが可能と考えられます。