Milk tea

ぺた、と頬に冷たい感触。

「……何しやがる」
「涼しいでしょ?」
重い瞼を開くと、がにっこりとした。俺の頬からミルクティーの缶を離して、軽く振ってみせる。

「お昼だから起こしに来てあげたよ」
「もっとマシな起こし方はねぇのかよ、テメェ」
「てめぇの彼女を放り出してサボってるあっくんが悪いと思うよ?」
「あっくん言うな、馴れ馴れしい」
頬についた水滴を拭ってそう吐き捨てれば、はくすぐったそうに笑う。

……この笑顔に惚れてる俺も、大概どうかしている。

「じゃあ起こしたお詫びに、このミルクティーは亜久津君に差し上げます」
「……あぁ? 俺はンな甘ったるい紅茶なんか飲まねぇ」
「そう言わずに、ささ、どうぞどうぞ〜。どうせ朝ごはんもまだなんでしょ」
「どうせならノンシュガーコーヒー買って来いや」
「寝起きにコーヒーじゃ胃が荒れちゃうってば。それに、」
「それに? 何だよ」

「――乳飲料は煙草の匂い消しにいいって、昨日テレビで言ってた」

キスの時に気になるから、と声のトーンを落としての言い訳に、思わずニヤリとなる。

なるほど、それが目的でこのチョイスか。
だが俺はあいにく、そんな面倒は好きじゃねえ。



「もっと簡単な方法があるだろうが」

の腕を引き寄せる。思わずあっと口を開いたところに唇を押し当ててやった。



(このキスの味に慣れてしまえば、煙草なんてきっと気にならなくなるから)



End.


←back

2007/09/08 up
夢小説企画サイト『slow step』投稿SS
企画者NARU様、参加させて頂き有難うございました。
甘く素敵なSSに囲まれて非常に幸せです。