掃除のじかん



 校舎の裏手を四苦八苦しながら移動してたら、聞き慣れた声が飛び込んできた。
「何やってんだお前」
「何って、ゴミ捨てに行くの」
「馬鹿かテメェ。んなこた見りゃ分かんだよ」
 亜久津が呆れるのも無理はない。私の両手には大きなゴミ袋がふたつ。何度も往復するのが面倒だからえいやと持ってきてしまったけど、この状態では歩くのも一苦労なのだ。やっぱり誰かに手伝って貰えば良かったかも。
「ま、まぁ、もうすぐゴミ捨て場だし。一人でも平気だよ」
 そう言ったら睨まれた……。何で。
 亜久津は舌打ちすると、低い低い声で「貸せ」と言った。返事も待たずにゴミ袋をふたつとも奪い取る。
 え、言う意味がないじゃん!
「亜久津ー、いいよ、私が掃除当番なんだし」
「うるせぇ。お前がとっとと戻ってこないせいで帰りのホームルームが遅れてんだよ。俺が手伝った方が早いっつーの」
「……あれ、亜久津さっきまで教室にいたの? 何でこんな所に」
 先を行く亜久津の足がわずかにもつれた。
 追いついて脇から見上げると、嫌そうに目を逸らしてウゼェと呟く。……帰りのホームルーム、だって。亜久津いつもは無視して先に帰ってるのにね!
 亜久津は速度を上げてずんずん歩いていく。その後ろを小走りに追いかけながら、私はこみ上げてくる笑いを懸命にこらえた。

 だって、わざわざ探しに来てくれたんだものね
 ありがとう


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2007/07/20
ヒロインが筆者的に珍しいタイプになりました。
ネタは挫折した『学校備品で30題』より。
もしかしたら少しずつ書きためて30題達成できるかも?
今回の…は、一応ゴミ袋が該当品…ということで。

作業BGM:Symphony No.9 (Scherzo)