私は亡くなった父の後を継ぎ、
木乃伊つくりを生業としておりました

猿やほかの動物ではなく、ひとを
材料にした私の作品は
ありがたいことに大勢の方から
お褒めをいただいておりました

つみぶかいこととは思いません

私が鬼や人魚と成した肉は
すべて、死びとでありました

寄る辺なき哀れ児がすがたを変え
神社仏閣に祀られる。
これも功徳に御座居ましょう?


ただひとりの妹と
おだやかな暮らしが送れれば
それで、私は満足でした

ある日 妹は
墓地の枯れ木に縊れておりました


あまたの死びとをみてきた私には
みずから縊れたものではないと
一目でわかりました
だれかが妹を絞めころし
愚かなものの衝動と
見せかけようとしたのです

妹のはらわたは野犬に破られ
こぼれた赤子が
からすについばまれていました




この世の苦を知らず
生まれついての童女であった
可憐な妹を
どこの誰がこのような目に
遭わせたのでしょう
私は 妹の赤子の 
こわれそうにほそい骨を漆喰にくるみ
鬼の赤子の木乃伊をこしらえました

誰にも気付かれず生まれ
誰にも気付かれず去んだ
ひとのかたちをしていない赤子


私は 妹のなきがらと
鬼の赤子を前に
ある誓いをたてました
淫ら心のままに妹を弄んだ男を
私は すぐに見つけ出しました
男の妻は
妹が慰みものにされるのを
笑って見ていました

あまつさえ、吊るした死体から
きものをはいで
隠し持っていたのです




厚い面皮はなかなか剥げず
肉ごとごっそりと
そぎおとすほかありませんでした


妹の腹を噛み破った犬は
屍肉の味をおぼえたか
まだ 同じあたりを
うろうろしておりました
かれらの肉をつぎ
皮を縫い
私は いやしい三面の鬼を
つくりあげました


 おまえたちは、成仏などしないよ。


み仏に背いた異形なるものとして
いついつまでも
衆目に晒されつづけるがいい。

おまえたちの魂は、
あの三面の鬼にも劣って
醜いのだから。

「…これが私の罪にございます」



語り終えた女はしずかに手をあわせたまま
しずかに血を吐き、こときれた。
俺のもとへ来る前に毒を呑んでいたのだ。

咎人の死体として
お上に引き渡しても構わない−−−
女はそう言った。
だが、女の望みはほかにあるはずだ。
だからこそ同じ木乃伊つくりの
俺にこの話を打ち明けたのだろう。


女が多肌身離さず持っていた妹の骨と
彼女自身の肉をつなぎあわせ、
俺は長駆の鬼をつくりあげた。


この鬼が人々から
畏れ崇められるか
忌み嫌われるか
はたまた 顧みられることもなく
朽ちるのみか

それは、後の世のものたちに委ねよう
−もとねた。−
羅漢寺 鬼の子のミイラ
善行寺 三面鬼
大乗院 鬼のミイラ
■モドル■