芋子−いもっこ−

 わたしがお屋敷に買われてきたのは、まだ三つか四つの幼い子供のころでした。
家はまずしい農家でした。五人兄妹のすえで、ただでさえ居場所のなかった
わたしはもうひとつ大きな問題を抱えていました。女の子であるのに、同時に
ちっぽけなお珍棒をつけていたのです。わたしのおしっこは女の子の場所ではなく、
裂け目のあるお珍棒のねもとから出ていました。
 そんなからだの女をおよめにもらってくれる者などいるはずもありません。
だからといって、男のような力仕事もできません。

 そうしてわたしはひとつかみの米とひきかえに村で一番大きなお屋敷に
買われたのでした。

 おとこは太陽、おんなは月。どちらでもないわたしは新月。
お屋敷でわたしはむつきと呼ばれるようになりました。わたしに与えられる
仕事は他の使用人でさえいやがるようなものでした。毎日暗いうちから便所の
そうじをし、家畜小屋で糞をあつめ、仕事が終わればそこで眠ります。それでも
生まれた家でおかあに殴られ、兄や姉につばをかけられる毎日よりずっと
ここちよいくらしでした。いつでも洗いものをしているおばあはわたしを
孫のように可愛がってくれましたし……。


 そんなある日、わたしはお屋敷の坊ちゃまに手ごめにされてしまったのです。
家畜小屋のかたすみで、牛達の黒い目がぶざまなわたしを哀れむようにみつめて
いました。未熟な性器は赤く腫れ上がって痛み、赤ちゃんのたねと血のまざった
ものがどろどろと流れ出していました。

「なんだ、いいお道具つけてんじゃねぇか。そんな体じゃ誰も相手にして
 くれねぇだろう?よし、おまえは今日からおれだけの玩具だ。まんこ人形だ」

 痛みと恥辱にふるえるわたしの頬をべろりと舐めて、坊ちゃまはそう宣言
しました。
 できそこないのわたしには、子をはらむちからなどないにきまっています。
それをいいことに、坊ちゃまはそれから毎日のようにわたしを犯しました。
家のものや使用人に見られていても、坊ちゃまは平然と腰をつかい続けました。
 わたしは玩具です。人間ではないのです。玩具はどんな扱いをうけようと
何も言えません。


 やがてわたしの体に今まで知らなかった変調がおこりました。
幼い少女のようだった乳房がにわかに豊かな膨らみを帯びてきたのです。
それだけではありません。わたしのお腹は月日が経つにつれ、だんだんと前へ
せり出してきました。

「赤子だね。赤子ができたんだよ」

 おばあは複雑な表情で告げました。
新月のわたしが、みごもった……?そんなことってあるのでしょうか。
 そのときのわたしはこの事をさほど恐ろしいとは思いませんでした。むしろ
とても幸せな気持ちだったのです。

わたしに赤ちゃんが生まれる。家族ができるんだ。

 小屋をきれいに掃除して、そうだ、この子のためにお花を飾ろう。
わたしはひとりでも、だいじにだいじに育ててあげる。
悲しい思いはけしてさせないからね。
 わたしは毎晩仕事が終わると、日に日に膨らんでいくお腹を優しく撫でて
赤ちゃんに語り掛けました。
 しかし……わたしが身ごもっていることはすぐ坊ちゃまに知れてしまい
ました。そのころわたしのおなかはとても重たくなっていて、産み月もちかい
様子だとおばあに言われていました。
 坊ちゃまは寒気のするような笑顔で家畜小屋のわたしを訪ねてきました。

「おまえ、俺の子が腹に出来たそうだな」

あくまで優しい声に、わたしは不安をおぼえながらも「はい」と答えました。

「そうか――だが、身重の体に家畜小屋の掃除はつらいだろう?」
「――――え」

 背中に回していた坊ちゃまの腕が、すうと伸ばされました。その手には太く
長い薪が握られていたのです。
 瞬間的な恐怖にかられ、わたしは逃げ出そうとしましたが、髪をつかまれ、
力ずくで地面に引き倒されてしまいました。
 耳元で風の唸る音を聞いた刹那――


ドゴォッ!!!


「ぎゃあああぁぁぁああっっっ!!!」

ボスッ!!ドッ!!ばしいっ!!!

坊ちゃまはわたしの膨らんだおなかを、何度も何度も薪で殴りつけたのです。

「ぐぶぅっ!!やめてぇッ!!!あか、赤ちゃんが!
 赤ちゃんが死んじゃう―――っ!!!」
「そらっ!そらっ!早く産気づけ!!腹ん中のガキを吐き出しちまえ!!!」
 
グシャッ!!ゴッ!!!

「いやあぁぁぁ――――――――――――!!!」
「俺はいっぺん赤ん坊ひり出したばっかの出産まんこを、子宮ん中を
 犯してみたかったんだ!早く出せ!!クソみてぇにブリブリ
 出せってんだよ!!!」
「いやいやいやいやいやいやあああぁぁぁああ――――――!!!!!!」

 しまいに坊ちゃまは薪を投げ捨て、赤ちゃんの入っているおなかの上に
体重をかけて飛び乗りました。

「ぐえぇっっ!!!!」

 咄嗟に庇った腕とおなかの肉に靴底がぎりぎりとめりこみます。その瞬間
わたしのおなかは大きく痙攣し、ひどい痛みが腰から駆け上ってきました。

「うぎいいいぃ!!いだっ、痛い痛い痛い痛いぃぃい!!
 おなかが!!赤ちゃんがーっ!!!」

苦しさに転げまわるわたしに、坊ちゃまは容赦なくとどめの一撃を入れました。

グジャアッ!!!

「あ゛――――――――――――――――――――――――ッッッッッッッ」

 わたしの膣にあてがった薪を、力任せに蹴り上げたのです。
本当に、子宮が潰れてしまうと思うほどの衝撃でした。
 ……そのとき、どこかで水風船が弾けるような音がきこえました。
それと同時に、薪の先端をめりこませた膣から勢いよく液体が迸り出て
きました。
 びくびく、びく、と、またおなかが痙攣します。

「ああ……いや……いや……産まれる…………産まれちゃうよぉおお………………」

 わたしは本能的に察しました。出産がはじまったのです。坊ちゃまは
それをきいてにんまりと笑いました。

「よぉし。里芋畑の穴へひり捨ててこい」
「え…………ぇっ……!?」

 里芋畑の穴――死んでうまれた子や間引かれた子を捨てるためのものです。

「ガキは腹の中で潰れちまっただろ。産みやすくしてやったんだ、感謝しな」
「そんな……いやぁ――――!!わたしの、あかちゃん……!!!!」

 息をするたび、びくんびくんと尋常でない痛みが襲います。坊ちゃまの言葉を
受け入れるのはおそろしいことでしたが、赤ちゃんはぴくりとも動いてくれません。
死んでしまったのでしょうか……
 立ち上がれないわたしに業を煮やし、坊ちゃまは家畜のえさを運ぶくるまを
引きずってきました。ひどく手荒に荷台へ投げ出されると、股間からなおもぬるい
液体があふれます。どうやらだいぶ血も混じっているようでした。
 農道を運ばれていきながら、わたしは泣いていました。しあわせな家族の夢と
まだ見ぬ赤ちゃんのことを思いながら。


「ほらよ。帰りは自分で戻ってきな」

 坊ちゃまはそういい捨てて行ってしまいました。
 緑色の傘の下からひどい異臭が上がってきます。なんとか身をおこして
のぞきこむと、何やら赤黒いものが穴の底いっぱいにたまっていました。なかには
明らかに小さな手と足がいくつも見えました。わたしの赤ちゃんもあんな姿に
なるのでしょうか。涙があふれてとまりませんでした。

「ぎいぃぃぃぃいいっ!!!痛いぃいいい――――!!!!」

 おなかを殴られ、踏みつけられ、わたしのお産はあきらかに正常なものでは
ありません。細すぎる産道は赤ちゃんに押し広げられて悲鳴をあげ、今にも裂けて
しまいそうでした。

「あ――――っ!!産まれる、産まれるううぅぅぅぅぅ――――っ!!!!」

 みりみりみりぶちちいぃぃぃっっっっ……
 ぐにゅうううぅぅぅ!!!!

 わたしの膣から、なまあたたかくて巨大なものがすべりでてきました。
『それ』は里芋の葉のうえをすべり、手をさしのべるひまもなく穴の底へと
落ちていきました。
 産声がしたのかどうかもわかりませんでした。
 ……やっぱり、おなかの中で死んでいたんだ。かわいそうに。
 人のかたちをしていない、踏み潰された肉のかたまりかもしれない。それでも、
ひと目自分の産んだ赤ちゃんを見てみたいと思いました。わたしは意を決し、
あなの底に目をこらしました。
 死んだ赤ちゃんやどろどろとしたかたまりの中に、わたしの産んだ赤ちゃんは
よこたわっていました。どこも潰れてなどいません。かわいらしく手足をちぢこめた、
生まれたての赤ちゃんです。
 雲間をはなれた月光に照らされ、小さくてまっかなおちんちんが見えました。
赤ちゃんは男の子だったのです。

(まだ……息をしてる………………)

 小さな胸は確かに上下していました。その様子は、生まれたばかりだというのに
みちたりた眠りについているようでした。
 わたしはたまらず、重たいからだを引きずって畑から逃げ出しました。
 ぬるぬると内股をぬらす血がふたたび量を増していきます。

(あっ)

 ぼとり、とわたしの股間から大きなかたまりが落ちました。暖かくてぶよぶよ
したものを踏んで、思わずよろけそうになります。わたしは一瞬もうひとり
赤ちゃんが出てきてしまったのかと思い、恐怖に襲われました。
 けれど、すぐに違うのだとわかりました。切れたへその緒のはしをひきずった
真っ赤な肉――それは胎盤でした。
 わたしは立ったまま胎盤を産み落としたのです。

「あ……いや……いやぁーーーっ!!!」

 その感触に悲鳴をあげつつ、わたしはよろけながら必死でお屋敷への道を
たどりました。


「遅かったな」

 家畜小屋にころむがりこむと、腕組みをしたまま坊ちゃまが立っていました。

「どうだ、ちゃんと穴にひり捨ててきたのか?」
「おわいのように言わないでください……わたしの……坊ちゃまとわたしの
 赤ちゃんだったんですよ!?」

 きょうという今日はこらえきれず、わたしはつい言い返しました。
 すると坊ちゃまは可笑しくてたまらないというようにくっくっと笑い出しました。

「赤ちゃん、か。まるでいっちょ前の母親のような口だな。片羽者の癖に」
「……………………」
「どうだ、あれだけやったんだ。死んでたろう?」
「………………はい」

 きっと……あのままにしておけば、明日の朝までには細い息も絶えてしまうで
しょう。死んで生まれたも同じです。
 悲しくて、赤ちゃんがかわいそうで、わたしはくちびるをかみました。

「さあて、本当に産んだか確かめてやろう」
「あっ……!」

 身をすくめる暇もなく、坊ちゃまはわたしのきもののすそを大きくまくりあげ
ました。ぷんと血なまぐさい匂いが立ち上ってきます。

「ほほぉ……思ったほどめちゃめちゃに裂けてるわけでもねえな。これならすぐ
 また使えるんじゃないか?」

 坊ちゃまは血だらけのあそこをぎらぎらした目で見つめていました。

「たった今、ここから赤ん坊をひり出したんだよな……たまんねえな」
「お、おねがい……今は……今だけはかんにんしてください。からっぽの子宮が
 どんどんちぢんで、痛いんです」
「馬鹿。出産まんこにハメられる機会なんぞ滅多に無えんだ、やめる訳
 ないだろう?」

 坊ちゃまは荒い息をはきながら下帯をとき、いちもつを激しくしごきたてて
います。

「かんにん……かんにんして、ぃや、あ、あーーーーーーッ!!」

 わたしには抵抗するちからなど残されていませんでした。気づいたときには、
赤ちゃんを産み落としたばかりの傷ついたあそこを坊ちゃまの巨大ないちもつに
犯されていたのです。

「アハハハハッ、凄ぇ凄え!!何の抵抗もなく呑み込んでいきやがる!
 赤ん坊の頭でガバガバに広がっちまってるぜ!!」
「いやっ、いやっ!!痛い、痛いのっ!!
 犯さないで、子宮犯さないでェエ!!!」

 いつもより激しく強く坊ちゃまの腰がわたしを打ちます。ぐぼっ、ぐぼっっ、と
みだらに音をたてて血をとびちらせながら、なおも奥へ奥へと――。
坊ちゃまの下腹は、わたしの血で真っ赤に汚れていました。

「はぁあ!!いやあぁー!おち、お珍棒がッ、子宮に入ってるーーーーーっ!!
 いやっ、いやっ!!」
「んッはぁ……!!ビクビクしながらチンボに絡みつきやがる。エロい子宮だなァ」
「ううッ……!!抜いて……痛いの、おなか痛いの…………!!
 胎盤のはがれたところがこすれて……痛くてたまらないの……!!!」
「面白れぇ、さっきまでガキの入ってたところにチンボが入ってやがる!
 広ぇなぁ、チンボが中で遊んでるぜ!オラッ!オラッ!」
「うあっ、あっ、あぁあ!!いたい、いたいぃいっ」

 子宮内で暴れる坊ちゃまのいちもつは、きのうまでお腹の中で動いていた
赤ちゃんを思い出させます。体を痛めつけられるよりも、寂しさと悲しさで
涙がとまりません。
 坊ちゃまはそれを、わたしが気持ちよくて泣いているのだと思ったようでした。

「なんだ、泣くほどイイのか?そうだろう、精子が大好きなお前のことだからな!
 子宮に直接注ぎ込んでやるぜ、ドボドボってな!!オラッ!!孕め孕め!!
 俺のガキを次々孕めよ!!!」
「いやっ、もういやぁっ!!
 かわいそうな赤ちゃんを産みたくないよぉお――!!!」

 坊ちゃまはわたしのぱんぱんに張ったおっぱいをつよく握りました。

びしゃあっっ!!!

白くてしゃばしゃばした母乳がはげしくほとばしり、そこかしこを濡らします。

「ひっ!いたっ!!おっぱいちぎれちゃうぅぅう!!!」
「ひひひ、甘い甘い!メス乳ってモンはこんな味なのか!
 すげー、搾っても搾ってもピュウピュウ出てくるぜ!」
「ぐすっ……うえっ、えええっ、ああぁぁああんんんん」

 ――本当は赤ちゃんに飲ませてあげるはずだったお乳。今、それは部屋じゅうに
振りまかれ粘液とともにみだらな匂いを発していました。

(ごめんね、わたしのあかちゃん……ゆるしてくれないよね…………)

 穴のそこでひっそり死んでいくぼうやのことを思い、わたしはまた声をあげて
泣きました。

「相変わらず泣き声もそそるぜ!オラ、いくぞ!!出産まんこに精子ぶちまけて
 孕ませてやる!!!」
「うあぁぁぁ!!!いや――――――――――!!!!!!」

 坊ちゃまが獣のような咆哮をあげると同時に、からっぽの子宮に狂おしい奔流が
どっと注ぎ込まれました。胎盤の剥がれた大きな傷に熱くけがれた精子が容赦なく
降り注ぎ――あまりの激痛にわたしの意識は遠のいていきました…………


 気がついたとき、わたしは菰のうえに寝かされていました。坊ちゃまの姿は
すでになく、飛び散ったまぐわいのあとは片付けられていました。

「うっ……」

 身を起こそうとして、わたしは思わずうめきました。

「目が覚めたかいの……も少し、そのままで寝ておりゃれ」
「おばあ」
「子をうんだばかりでこんな無理、まっとうなおなごにもさせられんに……
 よう耐えたな、むつき」
「…………………………」

 わたしの下半身には布があてられ、まだたくさんの血がにじみ出していました。

「すまんのう……おまえと赤子になにもしてやれのうて」

 おばあの言葉に、わたしはあらためて知らされました。
 ああ。わたしは赤ちゃんを失ってしまったんだ。

「……あしたな、つらいだろうけれど畑へお行き。息が絶えちょったら、きちんと
 ほうむってあげなばならんて。な。」
「うん………………うん……わかってる…………」

 うなずいたわたしはこぼれる涙を悟られないよう、ずっと顔をあげませんでした。
おばあはなにも言わずわたしを抱き寄せ、背中をやさしくさすってくれました。


 よく朝の暗いうち、わたしは杖にすがりながらそっと屋敷を出ました。
ゆうべの血がまだ足元に点々と黒く残っています。とちゅう胎盤を産んだあたりを
ちらと覗いてみましたが、夜のうち獣に食べられてしまったのかそこには大きな
血だまりばかりが残されていました。

 やがてせいの高い里芋の葉が見えてくると、にわかに足ががくがくと震え出し
ました。たくさん血がでたせいばかりではありません。死んだ赤ちゃんを見るのが
こわくてこわくて、しばらくの間わたしは道のはたで動けませんでした。

(きちんととむらってあげなければ…………ぼうやは浮かばれないんだ)

 つよく唇をかみしめると、わたしは意を決して畑のなかへと入っていきました。


 赤ちゃんは、死んでいませんでした。
 自分のちからで穴から這い出し、すやすやと寝息をたてながらおおきな葉の下で
眠っていたのです。

「生きてる…………」

 とたんにぽろぽろと涙があふれてきました。
わたしは赤ちゃんを抱き上げ、なんどもなんども頬ずりをくりかえしました。

「ごめんね、ごめんね、坊や。ひとりぼっちにしてごめんね」

 わたしはいそいできものをぬぎ、赤ちゃんが冷えないようにくるんであげました。
おそるおそるおっぱいを唇にあてがってみると、赤ちゃんは自分から吸い付いて
きました。

「うふふ、くすぐったい」

 ちゅうちゅうと音をたてながら、びっくりするようないきおいで赤ちゃんは
おっぱいを吸います。

「おなかすいてたんだね、ごめんね」

 わたしは赤ちゃんを抱きしめたまま、涙をこぼし続けました。
 朝になって仕事にでてきた畑のもちぬしは、そんなわたしたちを見つけて
呆然と立ち尽くしていました。



 むつきの産んだ赤子は黄泉を見て帰ってきた尊い子、また逞しい生命力を
もつ子として、畏怖と歓待をもって村に迎え入れられた。

 生まれられぬはずを生まれ、生きられぬを生きた神の子。

それ故に生母は無いものとされ、むつきが母子としてまみえることは生涯
なかったが……

その貌にはつねに菩薩の如き笑みが浮かんでいたという。

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