コイサンどうのにちようび
コイサンどうのにちようび 〈ピンポーン!〉 こんにちはー、ルミス・エレニカですー。 …えっ、「またお家を抜け出して勝手にコイサン堂に来たのか」ですってー? むぅー、違いますー! 今日は間違いなく連絡入れましたしー、ルミには大切な用事もあるんですよー。 「わかさゆえのあやまち」は、もう繰り返したりしないのですー。 「…ルミちゃん、こんにちは!」 「テレアちゃん、こんにちはー。また会いたかったですよー♪」 「いらっしゃいませ、ルミスちゃん。今日はお約束の時間通りでしたね〜?」 「時間どおりですよー。…えっへん♪」 「…ルミっち、また攻め込んできた。…今日は日曜日だから、こっちには味方が いっぱいいる。…とりあえず、上がって。」 「はいー、攻め込んできましたよー。失礼しますー。」 玄関のドアを開けて、テレアちゃんとエナちゃん、そしてフリルちゃんが 出迎えてくれましたー。 エナちゃん・テレアちゃん・フリルちゃんは、この館でお絵描きをしている コイサンのお手伝いをしている「かんばんむすめ」なんですよー。 実は、ルミのお姉さまも今年「かんばんむすめ」になったんですー。 …でもー、「かんばんむすめ」って何なのか、ルミにはよくわかりませんー。 「エナちゃん、お姉さまはどこですかー?」 「レリスさんですか?今はキッチンでお仕事していますよ。今日はちょっと 忙しいので、みんなでお手伝いしているんです。…ほら、テレアちゃんも フリルちゃんもキッチンに行きましたよ〜。」 「エナちゃんは、お手伝いしないのですかー?」 「…うぅっ、私は……、ダメなんです★」 エナちゃんは、シクシク泣き出してしまいしたー。 …ルミ、いけないことしちゃったのでしょうかー!? 「いらっしゃい、ルミス。…今日は来る前に、ちゃんとコイサンさんに連絡を 入れていましたね。」 「はいー、入れましたよー!それからー、今日はSバスTャンに送ってもらい ましたからー、お姉さまがいなくても帰れますよー。」 キッチンに入ると、レリスお姉さまがエプロン姿で何かお料理をしていましたー。 テレアちゃんもフリルちゃんもエプロンを着て、お姉さまをお手伝いして いますー。それから… 「えっ、ナニ!? この子が師匠の妹?かわいいなぁ〜☆」 「本当ね、目元がレリスさんにそっくり。…あなたがルミスちゃんですね?」 「いいなぁ、みんなかわいい妹いて!私も姉妹ほしかったな〜……」 テレアちゃんと同い年くらいの、髪の短い女の子ー。 その子と同じ髪の色をした、長い髪のお姉さんー。 髪の毛がおだんごみたいに真ん丸なお姉さんー。 みんなお姉さまと同じようにエプロンを着て、いっしょにお料理をしていますー。 …よく見ると、お菓子を作ってるみたいですー。 「こんにちはー。レリスお姉さまの妹、ルミス・エレニカですー。〈ぺこり〉」 「私はユナだよ。何を隠そう、料理の名人・レリス師匠の一番弟子なのだー☆」 「むぅ、ルミはレリスお姉さまの一番の妹なのだー☆ …ところで、 『ししょー』とか『でし』って何なのだー?」 「ルミス、『人真似はお止しなさい』と言っているでしょう!? それから、 誰とでも仲良くしなさいな。」 「はうぅー!…ごめんなさいー★」 「…レリスさん、すみません。妹がまた変なことを…。 …ごめんなさい、ルミスちゃん。わたしはユナの姉・エナ。 みんなはわたしのことを…」 「あれぇ〜!? エナちゃんがもうひとりいますー!」 「…この世には、同じ名前の人が三人いると言われている。…そして、 同じ名前の人が同じ部屋に入ると、不吉なことが起きるという言い伝えが…」 「フリルお姉ちゃん、変なこと言ったらルミちゃん信じちゃうよぅ!」 「???」 …ルミの頭の中で、みんなの言葉がグルグル回ってわからなくなってきましたー? 〈ポン…〉 「ごめんね、ルミスちゃん。金髪のエナさんがキッチンでお手伝いできないのは、 特別な事情あってのコトなんだ。私たちはユナちゃんのお姉さんを髪の毛が 茶色だから『茶エナさん』と呼んでるんだよ。…それから、私はテレアちゃんの お友達・山城蒼葉。…よろしくね!」 ルミの頭を優しく撫でながら、おだんご頭のお姉さん−蒼葉ちゃん−がそう言って くれましたー。 「…ところでルミス、今日はどうしてコイサン堂に来たんですの?」 「はいー。お姉さまにお届けものがあるからですよー。」 ルミはポーチの中から封筒を何枚か取り出して、お姉さまに手渡しましたー。 「…何でしょうか、レリスさん?」 「…茶エナさん。これは、学生時代のお友達からのお手紙ですわ。きっとわたくしが コイサン堂に住み込みしていることを知らずに、実家に郵送してしまったの ですわね。…ありがとう、ルミス。」 「てへへー…。」 「ルミスちゃん!ちょっとお願いあるンだけどぉ…」 お姉さまに褒められていい気分のルミを、ユナちゃんが呼びましたー。 「いまリビングにコイサンのお客さんいっぱい来ててさぁ〜、みんなに出すための 紅茶やお菓子がちょうど出来上がったンだよ!私たちまだ後片付けあるから、 手の空いてるエナ姉ちゃんにリビングまで運んでもらいたいんだ。 呼んできてくれない?」 テーブルの上には、お茶やお菓子が7皿ずつ置いてあるお盆がいくつか ありましたー。 (…これ全部、エナちゃんがひとりで運ぶのかなー?) ……………………。 「ユナちゃん、ルミもお手伝いしますー!エナちゃんといっしょに、お盆運び したいですよー。」 「…えッ!?」 「そんな…、ルミちゃんもお客さんなのに…。大丈夫、テレアがエナお姉ちゃんと 一緒に運ぶから…」 そう言ってこっちに来ようとしたテレアちゃんを、お姉さまは両肩にそっと手を 掛けて止めましたー。 「ルミス、わたくしからもお願いしますわ。…テレアちゃん、ルミスをエナさんの お部屋まで案内して下さいな。」 「みなさん、お待たせしましたー!お茶とお菓子、お持ちしましたよ〜♪」 エナちゃんがリビングのソファーに座っているコイサンと6人のお姉さんの前に、 手作りケーキと紅茶を次々と置いていきますー。 「お持ちしましたよー♪」 ルミもエナちゃんとおんなじように、手作りクッキーの入ったバスケットを テーブルの真ん中に置きましたー。 「いやッほゥ!お待ちかねのおやつの時間だ〜♪」 「…まったく、港はいつも食べることばかりね…ふぅ。」 「でもさ美樹ちゃん、最近コイサン堂のお菓子ってレベル高いよね?」 「そうですね、烏丸さん。いつ来ても手作りみたいですし…。」 「本当ね、佳澄ちゃん。おいしさもなかなかのものよ。鈴香ちゃん家(ち)みたいに、 お店開けるかも。」 「君穂ちゃん…。ん!? そっちの小ッちゃな子は誰っスか?初めて見る顔っスね… コイサン!?」 「あぁ、今年になって入ってきた『看板娘兼ご飯係』の妹でな…」 「てへへー、ルミス・エレニカといいますー。」 「にゃいっス!私、桜川鈴香っス。よろしくっス☆〈なでなで〉」 「『にゃいっす』って、何ですかー?」 「挨拶っスよ、私オリジナルの。」 「そうなんですかー?…にゃいっすー、にゃいっすー♪」 「ああっ、もう!鈴ちゃんばかり触って!? 私にも触らせろー!!〈むぎゅぅ〜〉」 あうぅー、そんなに抱き締められると苦しいですぅ〜〜★ 「こらこら、遊んでばかりじゃ新しい話の打ち合わせが進まないではないか!? 鈴香、港、席に戻れ!…それからルミスも、みんなの部屋に戻るように。」 「あうぅ〜、戻って来ましたよー…。」 「ルミちゃん、何だかヘロヘロしてない!? …実はテレアも、あのお姉ちゃんたちに 可愛がられてヘロヘロになっちゃったことあるよ。」 「ルミスちゃん、ホントにお疲れさん!…そうそう。あともうひとつ、お願いが あるンだ☆」 「何ですかー、ユナちゃん?」 「実は、きょうわたしとユナ、それに蒼葉ちゃんがお手伝いを頼まれたのは、 レリスさんのご家族の分までお菓子を作ることになっていたからなの。 それをルミスちゃんに持って帰ってほしいの。」 「ほらっ、コレがお土産に取っておいた分。…もちろん、ルミスちゃんの分も あるからね!」 そう言って茶エナちゃんと蒼葉ちゃんは、いい香りがするケーキの入った箱を ルミに手渡してくれましたー。 「…ルミっち。そろそろ帰らないと、外で待っているセバSチャNの堪忍袋の緒が 切れて、身長50mに巨大化して大暴れする。」 「えぇー!? そうなんですかー??」 「そんなわけありませんよ。…でも、お家の方々が心配しないうちに帰った方が 良さそうですね〜。」 「ルミス、今日はありがとう。わたくしがここで楽しく元気に暮らしていることを、 お父様たちによろしく伝えて。」 「はいー、お姉さま。」 ルミは、もうお家に帰りますー。 コイサン堂のみんな、お姉さまをよろしくお願いしますー。 こんどルミが攻め込むときも、仲良くして下さいねー。 にゃいっすー♪ − − − − − − − − − − − − − − − − − − − − あとがき この度は,ごく普通の日曜日(?)をテーマにしてお届けしましたJolly謹製SS 第4弾「コイサンどうのにちようび」に最後まで目を通して下さり,ありがとう ございました.お楽しみいただけましたでしょうか? さて,本作には三つの挑戦が込められています. 一つ目は,これまでのJolly作品にありがちな「大事件」をいっさい使わずに 「コイサン堂」の賑やかさや楽しさを描写することへの挑戦. 二つ目は,いちど実験的に行ったことのある「主観書き」への再挑戦. 「コイサン堂」を外部の視点で改めて見つめ直すために,今回は登場から 日の浅いルミスお嬢様を,主役に抜擢してみました. そして三つ目は,「登場人物の多さ」に対する挑戦. そのため,毎回Jolly作品に必ず登場する「スペシャル・ゲストキャラ」として 鈴香さんはじめ「バか漫」の仲良し6人組を起用しています. 「コイサンさんが『バか漫』の物語を作るために,彼女たちと定期的に打ち 合わせを開いている」というイメージで纏めてみましたが,いかがでしょうか? 最後に,コイサンさんが作品の構成上「チョイ役」になってしまいましたこと, この場を借りて深くお詫び申し上げます. Jolly
このSSはJolly様に頂きました(^^)
今回はルミス視点な上に、バか漫のキャラまで出てきて賑やかさに拍車が掛ってます。
いつもいつもありがとうございます。