ねこになるひ
>>はじめに
勇気をだして、ただ一歩前に出るだけだった。
そう・・・あたしに足りないのは、『勇気』。
ただなんてことないハズなのに・・・。
たった一つの勇気が、あたしは持てなかったんだ・・・。
あと一歩進むだけ。
ホラ・・・今、歩み出そう!
さあ・・・今、手にした勇気と共に!
・・・と言うわけで、チラリとコイサン様を登場させました(えええええそれだけえええええ!?)
ねこになるひ
「な〜」
「・・・?」
サァサァと、降りしきる雨の中で、
フリルはカサをさしながら、道路を歩いていた。
「な〜」
「・・・な〜」
さっきから、足下ですり寄ってくるソレの声を真似る。
・・・いや、特に意味はないのだが。
「な〜」
「・・・どうしたの?」
ちいさなちいさな、ソレの身体を抱き上げる。
雨の滴で、冷たく濡れていた。
「な〜」
「ひとりなの?」
「な〜」
「ウチに来るの?」
「な〜」
「うん、行こう・・・」
フリルはソレを抱きかかえ、雨の中再び歩き出した・・・。
「・・・ただいま」
「あ、おかえなさい」
「おかえり・・・フリルお姉ちゃん」
あれから、雨は更に強くなっていた。
フリルは部屋に戻ると、エナとテレアに迎えられた。
「それにしても・・・凄い雨だよね・・・」
「ホラ、タオル持ってきましたよ」
「・・・うん」
エナからタオルを手渡されて、濡れた服を拭う。
肌に張り付いている水分が、吸い取られていった。
「・・・部屋に戻ってるね」
「あ、うん」
そして、そのままフリルは奥の部屋へと行ってしまった。
「・・・?」
ずいぶんと素っ気ないフリルの態度に、エナは疑問を持った。
奥の部屋へ入って、パチンと電気をつける。
さっき自分を拭いたタオルで、隠し持っていたソレをくるむ。
「な〜」
「あばれちゃダメ」
そのまま、ゴシゴシとソレの身体を拭く。
ソレをある程度拭き終えてから、フリルは暖めるように抱きかかえ、自分の方に寄せた。
「な〜」
「うん」
そして、なでなでとソレの身体を触れる。
「・・・なに、それは?」
いきなり目の前から聞こえた声に、ビクリと身体を竦ませる。
「なんでそんなの連れ込んでいるの?」
声は普段と変わらない。
でも、妙な凄味を持った声に、フリルは顔を上げられなかった。
「・・・わたしの妹」
しかし、フリルはソレを守るように抱えて、言う。
「あ、そうだったんだぁ〜・・・・って、んなワケないでしょ!!! 何でネコなんて連れ込んでるの!?」
「な〜」
怯えつつも、ゆっくりと顔を上げると、やはりそこにはエナが居た。
エナの顔を見ながら、フリルはポツリと呟く。
「・・・可哀想だった・・・雨の中濡れてる・・・」
フリルの痛々しげな・・・その表情に、エナはズキリと痛んだ。
「・・・フリルちゃん・・・」
「・・・わたしの背後を取ったから」
「ええええ゛!? 何のカンケーがあるの!?」
「フフ・・・」
はぁ・・・と、ため息を一度ついてから、
「明日、野に返さないとダメですよ。ウチじゃ絶対管理が無理なんだから」
「えー」
「ごねてもダメ」
「なー」
「なんでわたしの名前だ!!! いい!! 絶対今日だけですからね!!」
エナに言われてる中、フリルはギュッとネコを抱きしめた。
部屋から出ていくときに、チラリと後ろを見たエナは、「ちょっと言い過ぎたかな・・・」と、少し後悔した。
そして、バタンと扉が閉められた。
「あ・・・ネコさんだ」
フリルがリビングの方にネコを連れ出してきた。
「名前は何なの?」
「・・・通称:過去TOP絵テレア」
「うぅ・・・」
テレアは、フリルのいつもの冗談に、軽く涙しつつもネコを撫でる手を止めない。
「ん〜・・・そうねぇ・・・」
エナは、今しばらく呼ぶ名前くらいなら良いかと、少し考える。
「・・・ぞうもつ・・・」
「フリルちゃん、そのネタ禁止!!」
「・・ナナ」
「ぞうもつナナ!? ナナだけで良いよね!?」
「ぞうもつナナちゃんって言うんだ・・・凄い名前だね」
「そこ!! 真に受けない!!」
討論の末、ナナと名付けられたネコ(オス)
「オスなのにナナ!?」
二人でナナを相手に遊んだりしているのを見ながら、エナは「今日だけだって言うの忘れんなよ」と注意を促す。
そして、夜が明けた!!
「ええええ!? たった二行なんですか!? というかドラ○エ的なまとめ方!? なんで!?」
朝は、エナのツッコミと共に来た。
「あああ!? 今日という日の『おはよう』という爽やかな朝の第一声を取り返せ無ぇぇぇ!!」
午前十時、起きるのには少々遅かった時間。
少々心に傷を負いつつも、エナは奥の部屋へ行く。
「全く・・・フリルちゃん。ネコはちゃんと放してきた?」
・・・。
へんじがない、ただの・・・・
「余計な言葉を付けるな!!」
ガラリと奥の部屋へと入る。
そこには、
「・・・あれ?」
ネコ一匹と、それを撫でているテレア。
フリルの姿は何処にもない。
テレアは困ったように、ナナの相手をしている。
「エナお姉ちゃん・・・」
テレアが、エナに紙切れを渡した。
そこには、
『ねこになるひ』
それを見て、ハッとなる。
ナナの耳元に付いているのは、フリルの髪飾り。
テレアは自分だけが持っていた不安がエナも持ったことによっていっそう不安が増したのか、涙目でおろどろしている。
「もしかして・・・」
「やっぱり・・・?」
ネコをジッと見て、
「フリル・・・・ちゃん?」
「な〜」
ナナが、一つ鳴いた。
「・・・マジ?」
明らかに何処をどう見てもネコである。ナナ(=フリル[?])
「もしかしてナナちゃんって、お化け酸とか、ネコマタ酸とかかな・・・?」
「いや・・せめて『酸』じゃなくて『さん』でしょうよ・・・」
因みに、過酸化でも強酸・弱酸でもない・・・いや、どうでも良いのだが。
エナがツッコミを入れるも、テレアは自分で言った『お化けさん』という言葉で身震いする。
エナ自身考えたところ、ナナとフリルが何らかのカタチで混ざってしまったのではないのかと思った。
「な〜」
こうなると、フリル兼ナナを野に放す等と言うことは出来ない。
少なくとも、フリルを外に放り出すほど、エナは鬼ではない。
むしろ、1日だけでも一緒にいたナナを放り出す事にも、傷ついているのだから。
・・・まあ、本人が不器用なために、周りに誤解されているのだが。
「はぁ・・・どうしましょうか」
三回目のトラブルに、壁により掛かりつつ、頭を悩ませた。
もう一つ、ナナの方が強く表面上に出ていると言うことだ。
「ああもう!! 暴れちゃダメですって!!」
ナナ(=フリル[?])を膝の上に置いて、エナは書物を読んでいたところ、
急に「シャー!!」と(ほんの子猫なので可愛いモノだが)暴れ出す。
で、喉元をぺちぺちと叩いてやると、コロコロと喉を鳴らす。
「エナお姉ちゃん・・・こっちもダメだったよ」
エナと同じく、書物をパラパラとめくっていたテレアがぱたんと閉じた。
「な〜」
喉を撫でていたエナの指を、ペロペロとナナ(=フリル[?])は舐める。
ふぅ・・・と、一息ついてから
「もう少し、頑張りましょう」
と、テレアを励ました。
「つ・・つかれた・・・」
夜の八時。
よくも今まで書物とぶっ続けでにらめっこ出来たものだ。
ナナ(=フリル[?])は、自分自身の足やら身体やらを舐めて、毛繕いしている。
お茶でも入れようかと思って、リビングに出た。
「!?」
そこに、サッと台所に隠れる陰。
「っ・・誰!?」
追いかけて覗く、そこには・・・
「フリルちゃん!?」
「ただいま・・・」
エナの驚いた声に、テレアも台所へ来る。
「え・・? なんでフリルお姉ちゃんが・・・?」
その問いに、フリルは少し黙った後、
「わたしの妹」
「あ、そうだったんだぁ〜・・・って『わたしの妹』って言葉のキャッチボールが通じてないでしょ!?」
「フリルお姉ちゃんに妹なんて居たんだ・・・」
「驚いた?」
「そこ!! 真に受けない!! 冗談を本気にさせない!!」
「・・・ふたりになる・・・・」
「それは一つ前の事件でしょ!?」
「・・・カタパルト」
「そもそも単位からして違いますよねぇぇ!?」
「・・・どうも、フマル=フルマルです」
「フマルお姉ちゃん・・・?」
「どう考えてもどう見てもフリルちゃんでしょ!? ああもう!! これじゃあ話が進まないから!! なんでこんなコトしたのか話しなさい!!!」
「なるほど・・・こうしてみればわたしに情が移って考えが変わるかも知れないと思ってわざとそうしたワケね・・・って、なんでわたしが説明調!?」
「(こくり)」
フリルは、ナナ(≠フリル)を膝の上に乗せて、頷いた。
「エナお姉ちゃん・・・フリルお姉ちゃんもここまで考えているんだし・・・」
テレアの言いたいことは解る。
それに頷きそうになったが、
「・・・ダメ、それでもウチじゃあ飼えません」
その気持ちをグッと堪えて、言った。
直後、
「な〜、な〜な〜!!」
フリルの膝の上で、ナナがもがいてパッと地面に飛び降りた。
「あ・・」
そのまま、タタタと開いていた窓から飛び出て行ってしまった。
ほんの一瞬だった。
ただ、ジッとフリルはナナの出ていった窓を見ていた。
「フリルお姉ちゃん・・・」
テレアがフリルに声を掛ける。
その肩を掴んで、エナは首を振った。
テレアは頷いて横に退く。
そしてエナは、フリルの前に立って、
「野の者には、野の者の生き方がある。わたし達が干渉しちゃいけなかったの。今は辛いかも知れないけれど・・・」
ギュッと正面からフリルを抱きしめ、
「・・・その悲しみは、一刻のものだから・・・」
そう言った。
フリルは肩を震わせて、
「ぅぅ・・・っぅ・・・・」
ただただ、静かに涙した。
あれから、フリルが元気ない。
時々ボーっとすることが多くなった。
「・・・困ったね」
テレアが、本当に困ったようにポツリと呟く。
元気がないのは何だか寂しい。
寂しいと、自分も悲しい。
「でも、こればっかりはね・・・」
エナは、はぁ・・・とため息をついた。
下手に慰めてもしょうがないのだ。
(それにしても・・・)
エナは思う。
ネコは可愛いけれど、時に気紛れであり残酷だ。
何処かに行ってしまうくらいなら、初めからフリルに寄って来なければ良かったのに・・・。
「うーす」
「あ、コイサン・・・」
突然来た来訪者に、テレアが迎えた。
しかし、コイサンはテレアの頭を一つ撫でてから、フリルの方へ行く。
「フリル、こいつをあげよう」
「あ・・・」
そう言って出したのは・・・ネコのぬいぐるみ。
それを見て、フリルがずいぶん久しぶりに微笑んでくれた。
それをチャンスとばかりに、
「コイサンナイス!! たぶんわたしは今始めてあんたをソンケーした!!」
バンバンと、コイサンの背中を叩きつつ、場の雰囲気を盛り上げる。
「しつれいな!! オレは何時でも素晴らしい!!」
「ウソ付け!!」
ぎゃーぎゃーと言い合う中で、
「この子は・・・」
フリルは、
「ぞうもつポチって名前」
「第二段!?」
「ネコにポチとはオレが認めん!!」
いつものフリルだった。
「えへへ・・・ぞうもつポチちゃんだね」
テレアが、フリルの膝の上にあるネコのぬいぐるみに微笑みかける。
「せめて『ぞうもつ』を抜いてポチにして下さい!!(血涙)」
「ダメだ!! ネコの名前は『ミオ』が王道だ!! ネコ魔法使いだ!!」
「『パティシ○なにゃんこ』ですか!?」
「ち、ちがう!! オレとは別の何者かの意識「エナちゃんクロスチョップ!!」がはぁ!!!!」
いつものような雰囲気をやっと取り戻した。
最後に、フリルは誰にも聞こえないようにポツリと呟いた。
「・・・・おかえり、ナナ」
あとがき
ギャアアアアアアアアコイサン様ならびにダンボールマンこと団長様ゴメンナサ「エナちゃんクロスチョップ!!(第二段)」ゴブハァ!!!!
ぴぴるぴるぴ・・・・
おおっと、そんな危険なネタを使用し終える前に・・・はい!! 神無月カイなのです!!
やっと三作品書き終えましたです!!
一番苦労したのは『ふたりになるひ』で、
一番ラクだったのは、この『ねこになるひ』でしたです!!
・・・やっぱり、メインプロット(ノート書き)は重要なのですね・・・。
最後までお付き合いいただき、並びにコイサン様、団長様には彼女たちを使わさせていただき、
本当にありがとうございますです!!
以上!! 姫k・・ゲフンゲフンっ。 神無月カイでした。
・・・今回の裏話は、メインプロット(ノート書き)に、『エナ』を『エネ』と書いていたこと。
誰だよ。エネって・・・orz
※『フリル』を『フマル』と読み間違えたのは自分です。
え〜・・・以下のことはちょっとつまらない雑記ですので、読む必要&価値なんて全くないと思いますです。
>>では、読み間違えたフマルとは一体?
フマルとはフマル酸(HOOC-CH=HC-COOH)。
カルボン酸のトランス型である幾何異性体の一つことである。
因みにもう一つはマレイン酸と言って、一般的には無水マレイン酸のカタチで覚え、シス、トランスのカタチを覚える。
・・・いや、化学反応式の事を言ってる時点で『一般的』から遠くかけ離れていますが・・・。
・・・いや、ホントにどうでも良いことですから。
今からでも、つまらないと思った人はコイサン様の『10歳エナちゃん』で眼腹する事をオススメしますですよ? ホント時間の無駄ですから・・・(じゃあなんでこんなの書いているんだよ…)
カルボン酸は、置換基名称カルボキシル基。
カルボン酸で有名なのは・・・一般的なのは蟻酸、虫に刺されると痒くなる。ドコサヘキサエン酸、魚に含まれるD(Docosa)H(hexaenoic)塩のA(acid)
化学の世界で一般的なのは、パルミチン、ステアリン、リノール、リノレン酸。
上から順番にCとHの数で覚えやすい。
で、最後にフマル酸は常温高圧で固形。水に溶けやすいという性質を持ち、芳香族カルボン酸なんかでも出てくるしつこい化学物質です。
まあ、直球ストレートな時期に新しい看板娘の『フリル』が出てきて『フマル』と読み間違えるのは仕方がないかな(←絶対変だ)
と言うわけで、コレが私のフリル→フマルと間違えた言い訳です。
最後にコイサン様へ一言。
いろんな意味でゴメンナサイ・・・orz
この小説は神無月カイ様にいただきました(^^)
これで三部作は全部終了ですね、お疲れ様でした〜。
素敵なSSをありがとうございました(^^)