ふたりになるひ


 初めに

>>作品にコイサン様が出ていない理由について

 この二作品に、コイサン様を登場させていない理由は、
 神無月がセリフの中とは言えコイサン様を『呼び捨て』にしてしまうというというトコロにあります。
 決して省りとかではないです。
 ・・・深く謝罪。



 ふたりになるひ


「ん〜・・・」
 真夜中。
 テレアはむくりと起きあがって、お手洗いに向かう。
 事を終えて、洗面所に出たとき、

 ゴチン!!

 と、暗いのと寝ぼけていたのとで、鏡に頭をぶつけた。
「う〜・・・」
 涙目になりながらも、布団に戻って潜り込み、そのまま眠りについた。


「おっはよー!!」
 と、明るい声が部屋に響く。
 朝はまだ早い時だ。
 エナは起きながら「なによ、もう・・・」と、目を擦った。
 それにしても、なかなか聞かないニュアンスだ。
 ユナでも遊びに来たのだろうか?
 目を開ける。
「あ、おっはよ!! エナお姉ちゃん」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
 数秒固化。
「テ、レア、ちゃん・・」
「そーだよ? いったいどうしちゃったの?」
(いや・・『どうしちゃったの?』って私のセリフだと思う・・・)
 エナは、寝起きで痛む頭を押さえて、布団から起きあがった。
「うにゅ・・・」
 ふと、
 エナのベッドの中から、もう一人出てきた。
 そのもう一人を見て、またテレアを見て、そしてもう一人に目を戻す。
「・・・・・・・・・・・え?」
 数秒石化。
「ええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!???」
 エナの大絶叫が、朝早くに部屋の中で響いた。

「・・・幼児化の次は分裂?」
 『四人』で、朝食を取りながら、フリルが第一声を上げる。
 エナの隣にはフリル。
 エナ側の正面にはテレア。
 フリル側の正面にもテレア。
 つまり、テレアの隣にテレア。
 ついでに、エナ側に座ってるテレアは顔を赤くしてゆっくりとパンを囓っている。
 そして、フリル側のテレアは、「おいしーねコレ」と言いながらはむはむ頬張っている。
 エナは、何度目かの頭痛を抑えるようにしながら、
「なんでこうなっちゃったワケよ・・・・」
 テレアを見てからテレアを見て、天井を仰ぐ。
「わからない・・」
「うー。そんなのワカンナイもん。エナお姉ちゃんだって少し前に幼児化したクセに」
「それを言わないで・・・」
 二人のテレアに反論され涙ぐみながら、エナはオレンジジュースを一杯飲む。
「・・・細胞分裂・・・・・」
「人は単細胞生物じゃないんだから・・・」
「じゃあ・・減数分裂・・・・」
「黙れ!! その単語は知る人にとっては非常にアブナイ事を連想させる単語だ!!」
 そして、フリルとのツッコミで叫んだ後に、はぁ・・と、ため息を吐いた。
 頭を抱える。
 前回の因果は、『ちいさくなるひ』と言うことで、『ひ』限定だった。
 しかし今回は、どうもそう言うわけには行かないかも知れない。
「・・・でも、タイトルは『ふたりになるひ』だけど・・・」
「そこは突っ込まない約束でしょ・・・」
 そう・・・今回は別の理由でこの状態だ。
 はぁ・・と、やはり今日何度目か判らないため息を吐いて、机に肘をついた。
「二人・・二人か・・・」
 ホントに、見るカタチも影も同じで、
 まるで、双子のように似ている。
 ただし、性格は正反対だ。
 全く同じ外見で、正反対の性格・・・。
「そうだエナっち」
「ん?」
 フリルが、エナに真剣な表情で話す。
「カタパルト食べる?」
「うん、そうね・・・って、食えるワケ無いでしょうが!!!」
「エナっちならイケる(グッドサイン)」
 はぁ・・・と、胃の辺りが痛くなるのを感じながら、エナは腰を下ろした。
「エナお姉ちゃん・・・頑張ってね」
「エナお姉ちゃんファイト!!」
「応援されても嬉しくないもとい応援されても食えるか!!」
「・・・こうして子供は荒んでいく・・・ふっ」
「何!? 何その勝ち誇ったようなため息は!?」
 ああもう!! と、一声出してから、
「で、話をまとめさせてもらうけど、明らかにこっちのテレアちゃんの方が偽だよね」
 明るい方のテレアを指さして、エナは言う。
 偽、という言い方にちょっとキビシイものがあったかも知れないと言った後に後悔したが、
「うん。そーだよ」
「うん、ごめんね・・・って、そんなあっさり!?」
「だって、私は『カガミ』のテレアだもん」
「カガミの・・・テレアなの?」
「あ・・・」
 外見はそっくりで、性格が正反対・・・つまり、自分の動きとは違った動きをする。
 何かに似ていると思ったが、カガミだったんだ。
「本当は光の反射による虚像で上下左右が逆に映るだけなんだけど・・・」
「なんでファンタジーな設定をぶち壊しにしようと働く!?」
「う・・私じゃない何かの力が働きかけて・・・」
「誰!? それ誰!?」
「・・・テヘ♪」
「可愛くとぼけない!! ああもう、とにかく話戻すよ!!」
 ドカッと、もう一度座る。
「エナお姉ちゃん・・・いつもながら大変だね」

>>2

「あっちゃあ・・・」
 テレアから話を聞いたエナは、割れた鏡を見て息をついた。
 テレアは、鏡が割れた時のショックによって、こっちの方にころりと飛び出てきたのだという。
 で、現場を見に来たというわけだ。
「もう、元には戻れないし・・・」
 シュンとなって、テレアはポツリと呟いた。
 ただし、解決しようと進む事に、見る見る元気は無くなっていった。
 今ではもう、すっかり落ち込んでいる。
「テレアは、二人も要らないよね・・・わたしは、偽なんだもん。要らないテレアなんだもん・・・・」
「そんな寂しいこと言わないで・・・」
 ふと、弱音を吐いたテレアに、テレアが言葉を重ねた。
「あなたもテレアで、テレアもテレアだよ。ちゃんとテレアの中に居るテレアなんだよ。偽とか要らないとか言わないで、そんなのテレアは悲しいよ・・・」
「テレアちゃん・・・」
 エナが、テレアの肩に手を置く。
 フリルは、魔法陣を鏡の前で描く。
 其れは、二人のテレアには言っていなかった方法。
「戻るんじゃないの。一つになろう」
 エナは、二人にそのことを告げた。
 ただし、消えるのはテレアなのか、テレアなのか。
 それが、たまらなく怖かった。
 ・・・でも、
「うん。一つになろうよ。テレアは、テレアなんだから」
「う、うん・・・」

 そっと指をふれあい、手を握る。
「・・・描いたよ」
 フリルは、テレアを真ん中に、魔法陣を描き終えた。
 カァ・・・と、魔法陣から光が漏れる。
 爆発するような光が納まった後、目を開けばそこには・・・
 テレアが、一人立っていた。
 ・・・最後に、
「明るい性格・・・ちょっと、羨ましかったんだよ・・・」
 と、テレアは目を閉じて心の中にいるもう一人のテレアに呟いた・・・。



  あとがき

 一度読み返してタイプミスを発見。
 『フリるん』って誰ですか・・・?
 フリルのネームミスが多すぎる自分・・・orz


この小説は神無月カイ様にいただきました(^^)
えっと…あれはあくまでも冗談ですので本気にしないでくださいな(^^;;
いつもいつもありがとうございます…ただ個人的にはエナの口調が気になっちゃって(失礼)
エナは誰に対しても敬語なのでorz
…とはいえ、本当にありがとうございますm(__)m