「フラッシュって部下には優しいよね」
「部下にも、な」
「私には冷たいよね」
「当たり前だ」
「……じゃあ私をフラッシュの部下にして。それなら優しくしてくれるでしょ?」
「突拍子もない事言うな。しかもそれ、ものを頼む態度じゃないだろ。せめて、『して下さい』とかな。もっと言うと、『私事で誠に勝手ではございますが、フラッシュ様の部署で働かせては頂けないでしょうか』、な」
「わたくしごとでかってではござ」
「あーもう面倒だから下僕にして下さいの一言でいいぞ」
「ちょっと職務経歴書と履歴書書いてくる」
「あー、はいはい分かった分かった! お前は今から俺の部下だ!」
「はーい」
「上司に向かってその間延びした返事は止めろ」
「……フラッシュ厳しい」
「私語は慎め。敬語も使えないなら、使えないなりに丁寧語を使え」
「……はい。分かりました」
「じゃ、まずは俺を綺麗にみがけ」
「頭をですか」
「全体的にだ! タイムストッパーは光が命だからな!」
「紙やすりで拭きますね」
「馬鹿止めろ馬鹿!」
「冗談ですよ」
「上司にそういう冗談をほざくとは余裕だなぁ、おい」
「嘘もちょっとした冗談も、駆け引きには必要なんですよ」
「言うじゃねーか」
「ふふん、もっと褒めてもいいんですよ?」
「褒めてねーよ。アホか」
「いたっ! デコピンする事ないでしょ!」
「上司に向かってその口の聞き方と有頂天のお前に制裁だ」
「有頂天って……はいはい、拭きますよー」
「ったく、最初から素直にやってりゃ良かったんだよ」
「うるさいなー」
「こら、減らず口叩いてると減俸すんぞ!」
「ワイリー様の懐事情含め、悪の組織に給料も何もないのではありませんか?」
「こらっ!」
「いたっ! またデコピンした! 人間のパンチぐらいの力があるんだから、体罰止めてってば!」
「だから指一本でやってるんだろーが」
「あ、そうか……うん……ありがと」
「な、……そうかそうか、俺の優しさがやっと分かったか。まあ俺も素直な奴にはちゃんと」
「でも痛いものは痛いんだよね」
「はぁ?」
「今はいいけど。ああ、この前ショットマン達が『隊長は優しいし、気遣ってくれるし、良い人を上司に持ったな』って話してたよ。フラッシュって面倒見良いんだね」
「なっ……!」
「後ね、スナイパージョー……っと、前とデザインが違うけど、そのスナイパージョー達も、『隊長はいつも気配りの出来るナイスガイです!』だって。やー、いいねー。ね、隊長?」
「……うるせー」
「うん、綺麗になった」
「頭しか拭いてねーだろ……」
「あら? いつもの覇気がありませんよ隊長」
「うるせーよ……」
「……私も……褒めてよ」
「……よくやった。えらいぞー」
「優しくして」
「おお、よしよし……」
「心がこもってない」
「そんな事はな」
「あるよ」
「なんだよ。藪から棒に」
「そうやって皆との対応に温度差があるから。たまに私の事嫌いなのかって思うの」
「……嫌いじゃないんだよ。ただ、……ただな」
「ただ、――何?」
「い、いや……なんでもない」
「なんでもないって何? 私、エスパーじゃないから」
「……言わないと駄目なのか?」
「うん」
「うーんと……えー、あー、えー……からかうと面白いから」
「……酷い」
「あー泣くな! くそ! 面倒くせー!!」

(おしまい)

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