バナナ記念日2 大体どの学校でも特別教室近くのトイレというものは盲点で、何か授業なりイベントなりでも無い限り、滅多に人は来ない。そうなると不良の溜まり場には絶好の場所になったりしそうなものだが、生憎そんな脛に傷持つ身の人間が、この泥門で平穏無事に悪さを全う出来る訳もなく、結果として昼休みともなると、ガランとして寂しいばかりの空間になってしまう。 それを乱す人間が現れたのは、つい最近になっての事だった。ブレザーのポケットを不自然に膨らませ、黄色い半身を覗かせながら小走りに向かってくる人影。モン太である。入る前に周囲を見渡して、自分以外誰もいない事を確かめると、手馴れたように奥の個室へ一直線に入り、鍵を掛ける。 初めて尻穴にバナナを挿れてから、既に二週間が過ぎていた。結局あれから一度も、モン太はセナに抱かれていない。練習は大変で、偶の休みに会ったとしても、普通にゲームなどしていると、どうしても恥ずかしくてセックスの話など持ち出せない。それでも肉棒を咥えたくて尻穴はムズムズしてしまう一方で、ついに学校でまで頻繁に慰めるようになってしまったのだった。 まさしく変態だと当然悩んだりもしたし、最初にやった時は流石にどうかと思って数日止めたりもしたのだが、そうすると下手すれば着替え最中のセナの姿にまで欲情しかねず、悶々と悩むぐらいならと結局は日課が一つ出来てしまい、今日もこうしてバナナを皮ごとしゃぶる。下半身だけ晒した姿は滑稽だったが、房を舐めるだけで期待にペニスを膨らませている姿はいやらしくもあって、それが自分でも感じられるのだろう、誰見るとも無くその舌使いは挿入を哀願するような空気を醸し出していた。実際濡らすだけにしては十分すぎる量の唾液を垂らしている。 尻穴の方も指を伸ばして伺うが、色だけはまだ貞淑な桃色を守るそこも、いざ受け入れるとなると貪欲なモン太の肉欲に相応しい応じ方を見せる。唾液で濡らした指は、少々の痛みさえ我慢すればもう一本などは平気で、しかも自分でも快感の点が分かっているだけあって、あっ…とつい声を漏らしてしまう。 (やっぱ変態だよな…) 最初は自責の響きを伴っていたこの言葉も、もう今では快感の香辛料程度のものでしかなく、真っ白な壁にもたれかかりながら、白昼太い指を挿れて自慰をする感覚は、夜の密やかな自涜に勝る。 それでも、いざ挿れるとなると想像するのはセナのペニスであり、セナの肉棒によって何度も犯された経験を思い出しては、自分の腕を動かすのだった。壁に顔をつけながら、尻だけ突き出してバナナを挿入していく。実際セナは控えめで、布団での経験以外無く、又セナの性器もバナナよりは細めではあるのだが、生の肉を挿れられるのは純粋に快感の視点からでも気持ちが良い。そこが植物と欲望を持つ生物を相手にする違いで、それでも今日に至っては昼食を後回しにしてしまった、そんなあさましい淫らな尻は喜んで締め付けては、モン太の噛みしめた唇から音を漏らさせる。 「んっ……くそっ…ヤッパいい」 頭がぼんやりとしてくる。ただでさえ思春期の脳が、快感を求める真っ最中ともなれば、その刺激は至上命題で、無意識に声は少しずつ大きくなっていく。幾ら偽りの肉棒で慰めたとしても所詮はバナナで、セナという人間が全身で以て自分を攻め立てるのに比べれば、不満は残ってしまい、その燻りはどんどん高まっていて、それがとうとう爆発してしまったのかもしれない。 「セナ…っ」 言った瞬間、ビクリ、と体が震えて止まった。予想外の声の大きさに、誰かに聞かれたらどうしようかと、一気に汗が噴き出る。 その汗が、さあっと引いた。遠慮がちにドアがノックされたのだ。 「……どうしたの?」 その声はセナであった。混乱した頭のどこかで予想していた展開に、モン太は頭がぐるぐると回るようで、判断力などという言葉は綺麗さっぱり消えてしまう。 そこで代わりに行動を指示したのは、モン太の本能だった。ただしとびきり焦らされて、頭の中はセナの身体でいっぱいな、射精前のものであったが。躊躇う事など無い。モン太のペニスは好きな相手に攻められて精液を出してしまいたかった。 「セナ、か…?」 「大丈夫?」 「……ちょっと、入ってくれ」 自分を案じる声に対して、ガチガチのペニスはいっそふざけている。それでもカチャリと中側から鍵を外すと、自ら下半身丸出しでバナナを手にした痴態を晒した。セナの視線が痛い。 ここ数日続いた便所通いに、今日はついに昼さえ食べずに席を外したモン太に、流石に心配になって、少々やりすぎかなと思いながらもトイレに来てみれば、自分の声を呼ぶ掠れ声は紛れもなく追う相手である。そこで声をかけてみれば、見てしまったのは勃起姿で自分を見る顔で、そのねっとりとした視線に声も出ない。腕を掴まれて個室に入ってしまった所で、漸く混乱の声を上げようとしたが、そこを唇で塞がれてしまっている間に、鍵をかけられてしまった。間近で見る目は正気を逸していて、ぞくり、と震える。 「やろうぜ」 何を、と今更言うまでもない。モン太はバナナを上着にしまうと、床に膝を付けてセナのジッパーを下ろす。トランクスのボタンも外して出したセナのペニスは、まだ小さいままであったから、睾丸ごとまとめて口にしてしまう。しかしセナも溜まっていたのは同じで、寧ろモン太のように毎日自慰をしていたのでもないペニスは、直ぐに膨らんでいく。一旦弾みがつけば、もう何もせずとも止められない。果物のバナナより大好きな肉バナナが、こうしてテラテラと自分の唾液にまみれながら熱を持っていくのは、本能にとって喜ばしいことであった。 セナにしてみれば、こうまで素直にかつ授業も構わず自分を求める姿に、男としての気持ちが刺激されないはずもない。アメフトで自立していく精神に、内部の雄性も亦大きくなっていて、それが一気に目覚めていく。自身のペニスを嬉しそうにしゃぶるモン太の目つきに、理性という眠りが覚まされてしまったのだ。 「…お尻、出して」 その言葉にモン太は喜んで尻を突き出す。小さいとはいえバナナを先程まで受け入れた尻穴は、ヒクヒクとして早くセナの肉バナナを挿れて欲しいとせがんでいる。 「なんでバナナ持ってたの?」 しかしセナは望むものを使わず、モン太の上着からバナナを取り出しながら、尋ねた。欲望はただ肉欲をブチ込むのでは物足りずに、思いっきり嬲ることを望んでいた。 「…言わなきゃ駄目か」 「だって気になるし」 「お前の、チンポと思って挿れてた」 「こうやって?」 バナナを咥えて濡らしたセナが、末の方から挿れていく。寧ろ告白させられることに悦びを感じていたモン太は、セナの無体にただペニスから先走りを漏らすばかりで、漏れる声を耐えようと腕を噛んでいる表情も嬉しさが滲み出ている。 それでも、やはり結局は念願のペニスを挿れて欲しくて、セナぁっ、と少し大きめの声で哀願してしまう。先走りを鈴口から零すモン太は、このままではバナナで達してしまうと、何度も振り向いては名前を読んだ。 「じゃあ、挿れるね」 「ん、早く…」 バナナを抜いて上着に戻しておくと、主を失った尻穴に本物の肉の味を植え込む。生のペニスは熱く、モン太も一気に高ぶって、そのまま白い壁にボタボタっと精液を飛ばしてしまった。セナもそんなに持たず、腕を噛んで声を抑えようとするモン太にのしかかるようにして、内部に精液を散らして果ててしまう。 ただそれで収まる程久々のセックスは大人しいものではなくて、昼休みの終了を告げるチャイムが鳴る中、モン太の短い髪の中に顔を付けていると、うっすら汗の臭いがして、またつい腰を動かしてしまう。まだまだ生のセナを味わい足りないモン太にしてみれば、そこで抗うなんて選択肢は端からない。五限目の授業など、意識になかった。 平成十八年丙戌八月二十一日公開 |