バナナ記念日



 どうかしているんじゃないか、とモン太は自分が心配になった。今晩は春にしては暖か過ぎる日で、まだ冬用の布団を使っていると、少し暑い。けれども今目が覚めているのは、外部の気温の所為ではなかった。内部が、身体の中が熱くて、眠れないのだ。
 布団を跳ね除けて、上半身を起こす。パジャマのズボンは生地が柔らかく、それだけに興奮したペニスがはっきりと山をなしているのが判る。モン太はそれを、布地の上から揉んでみた。確かに気持ちが良いけれども、内部の熱は収まりそうに無い。はぁ、と溜息を吐いたモン太は、顔を覆ってこっそり呟いた。変態だ、と。
 疼くのは前だけでは無かった。寧ろ今、より刺激を欲しているのは、男が生来持つ性器ではなく、セナとのセックスによって開発され作られたもう一つの快感の源、つまりは尻であった。初めての際には、なんとかペニスへの快感だけで挿入の痛みをこなしていたのに、幾度と無く貫かれるうちに、モン太の尻はすっかり、本来とは別の役割をも担えるようになっていて、それどころか下手をするとペニスよりも貪欲に刺激を求めてさえいる。
 ズボンとトランクスを一緒に脱ぎ捨てて、誰に見せるでも無く四つん這いになる。視線の有無ではなく、体勢そのものによる羞恥で、ただでさえ熱い身体がいっそう火照る。何をやっているのか、頭の隅をちらりと過ぎるが、その一方で自分の身体はいつものセックスのように指をしゃぶり、ただセナがやっている役割をも自分でこなす。唾液に塗れた指は、中は既に熟しているも、未だ外側は素っ気無い尻穴を撫で回す。触れる度にヒクヒクと震え、それに合わせてペニスはぴくんぴくんと大きくなっていく。
 そのまま意を決して指を挿れる。幾ら尻を性器化されようとも、流石に異物を挿入する瞬間は慣れなくて、苦しげなうめき声が漏れる。しかしそれも一瞬の事で、荒らされるを待ち望む内壁は、自身のしっかりした指で弄られると、その声を快楽交じりの喘ぎへと変化させた。とは言っても大声を出す訳にはいかず、噛み締める枕には唾液の染みが広がっていく。
 けれども指の刺激では、セナの肉棒に慣らされた尻は満足しきれず、既に膨らんだモン太のペニスも、精液を放つまでには満足していなかった。二本挿れている指が、快感を求めてあちこちに動こうとも、あの、肉棒に貫かれる刺激には劣ってしまう。モン太は指を抜くと、何か無いかと周囲を見てみた。今の頭に有るのはただ尻穴の欲望を満たすモノだけで、もの欲しそうな顔は性欲に満ち満ちている。
 そこでバナナを見つけたのは、モン太の好物を考えれば必然であった。安物で、まあ熟しきっていない、小ぶりの青いバナナは、そのうち食べようと自室に放置してあったもので、少し大きめではあったが、それだけに一人でのオナニーには、ピッタリだった。ぐちゃぐちゃに乱れたかった。
 皮を剥いて、真っ白な実を口に含む。普段なら思いっきり齧る所だが、今夜は優しく、セナに奉仕するようにたっぷりと舌を絡めて、しゃぶりつく。すると不思議なもので、ただの食べ物が淫具に思え、期待で尻穴がヒクつく。青臭い味わいも、この状況では却って食べ慣れておらず良いと思えた。
 その半剥きのバナナを右手にしたまま、復た四つん這いになる。尻を誇張するこの格好は、尻にペニスを求めるのには格好の姿で、もう片方の手で尻を支えながら挿れていくと、ねちょりとした異物感が、体内に広がっていく。それは指とも肉棒とも違うもので、それだけに未知の感触は色に溺れるモン太のペニスを期待で張り詰めさせる。
 出し挿れはゆっくりと始まった。奥まで入ると、感触にペニスは先走りを零し、触れられない乳首も尖って、体内に快感が充溢しているのを表す。期待通りに尻穴を犯されたモン太の顔は、嬉しそうに緩められて、腰も自然と突き出してしまい、引き締まった尻肉が異物を飲み込む姿が、真っ暗な室内に晒される。あぁ、と漏れ出る声を押さえようにも押さえきれず、時折くぐもった声が聞こえては、瞬間ヒヤリとする。こんな姿を家人に見られるのは恥ずかしい所の騒ぎではない。
 それでも、モン太の腕は相変わらず動いては、にゅぷにゅぷと云う音を立てて、モン太の快楽を犯し、目を蕩けさせていく。性の快楽は、この年頃の青少年にはただでさえ抗い難いものなのに、背徳の尻穴の快楽を以て得るそれは、単にペニスを扱く以上のものがある。指より数段太いバナナは、肉棒により近い快楽をくれた。
 そのまま、モン太のペニスは触れられもしないのに濃いザーメンを布団の上に撒き散らし、バナナとは又違った青臭い臭いが部屋中に広がる。後片付けが大変だと、モン太は荒い息の中考えるが、それ以上に尻穴を満たすバナナを、まだ味わいたいと云う欲望の方が勝った。今まで布団に付いていた手でペニスを擦りながら、慣れてきた尻穴弄りを再開する。まだ精液を残すペニスに、手にはやや黄色みすら帯びる濃縮された欲望が付くが、それが丁度良い潤滑油となって脳に残る快感の残滓を煽る。直ぐに膨らむペニスは。大きな手の中で、熱くまだまだ健在な性欲を示していた。
 バナナは大分滑らかに動き、ぎゅうぎゅう締め付ける内壁を、思うがままに動いては、貪欲な欲望を満たしていく。両方の性器への直接的な快感に、二戦目とは言え高校生の肉欲がそう抵抗出来るはずもない。涎塗れの枕に顔を埋めながら、モン太はあっさりと射精してしまい、手の中に精液をたっぷりと漏らした。

 流石に疲れたのか、仰向けになって横になる。すると、背中にひんやりとした精液の残滓を感じ取り、途端にこれからの始末が面倒臭く感じる。しかも、厳密にはまだ欲望は鎮まりきっていなかった。確かに表面上の欲望は収まったのだが、どこか物足りない。
「やっぱりセナとしてーな」
代用品相手の自慰と生の肉体相手のセックスでは、どうしても違いがあった。バナナがなまじ気持ち良かっただけに、余計にセナの体温が思い出される。二度も放出したのに、モン太の尻は、肉棒を思い出してついピクっと反応してしまった。
 




平成十八年丙戌四月十日公開