大体、確認する必要がないと思うんですけど… 頬を染めながらベルトを外し、ジッパーを下ろす私は秘かに思う。 どう考えても正常に機能していますよね、コレ。 まだ触れてもいないのに、立派に盛り上がっている場所に思わずため息が漏れる。 ふと見上げると、ニヤリとした笑みを浮かべた先輩が私を見下ろしていた。 「早く全部脱がして確認しろよ、里悠」 いやだから…確認なんていらないでしょうに。 「言っとくけど、それ半勃ちだから。 ちゃんと完全に勃つかどうか舐めて確認しろよ?」 嘘だ…絶対嘘だぁっ! めちゃくちゃ勃ってるじゃないですかーっ!! 先輩に促され目を瞑りながらズボンとトランクスを下げたけれど、目の前に現れたいつ見ても驚愕な姿にそう叫びたい気分になった。 もちろん、叫べるわけがないのだけれど。 まだ慣れないその生々しい姿に尻込みをしていると、先輩が頭上から、早くしろよ。というような視線を送ってくる。 わかってますってば…あ〜、もう。いつもの事だけど、恥ずかしいよぉ。 私は軽く目を瞑ってもう一度気合を入れなおすと、立派に反り返った先輩のソレに手を添えてゆっくりと口に含んだ。 最初は先端を口に含んだまま丹念に舌を使って刺激を与える。 それから徐々に奥へ奥へと範囲を広げ全体を刺激してゆく。 まだまだこの行為に慣れない私だけれど、先輩に言われなくても自分で動けるようにはなっていた。 舌に、唇に感じる張り具合や微妙な動きに、先輩が気持ちいいと思える場所や力加減が何となくだけどわかるようにもなってきた。 自分では、すごい進歩だと思う。 それらが当たっているのかどうかは全く自信がないけれど… 静かな部屋には、私の口から漏れる卑猥な水音だけが響いている。 そこに手を加えると、更にその音は卑猥さを増した。 いつの間にか恥じらいや“確認”なんて言葉が私の頭の中から消え失せて、意識が集中しはじめる。 どんなはじまりであれ、最終的に先輩とこうして触れ合える時間が結局私は好きなのだ。 先輩は、ちゃんと気持ちよくなっているのだろうか。 こんな感じで大丈夫だろうか。 不安げに見上げると、切なそうなそれでいて色っぽい表情を浮かべながら私を見ている先輩と目があった。 先輩は私と目が合うとほんの少し微笑んで、優しく頭を撫でてくる。 その顔は、気持ちいいよ。って言っているようで、自然と私の顔にも笑みが浮かんだ。 「お前…日に日に上達してんのな」 「………?」 「すげぇ気持ちいいよ」 その言葉が凄く嬉しかった。 胸が熱くなって、より私の顔を綻ばせた。 口に含み、舌を使いながら動かすだけの動作から、吸い上げたり手で扱いたり、舌先や指先を使って色んな角度からの刺激に変えると、先輩の口から色っぽく吐息交じりの息が漏れ始める。 どんどん張り詰め大きくなっていく口の中の存在。 もうちょっとかな…それとも、まだまだかな… 自分の中で頃合いを見計らっていると、突然先輩が私の両脇に手を差し込んで上にグイッと持ち上げた。 引っ張られるように立ち上がった私の口からは、先輩のその突然の行動に気の抜けたようが声が出る。 「………へ?」 「俺だけ先にイかせる気?」 「え…ンっ?!」 反応する前に塞がれた唇。 すぐに先輩の舌が口内に割り込んできて、荒々しく中をかき回される。 一気に火照る私の体。 一瞬にして真っ白になった私の脳内。 貪るような激しいキスに応えるのに精一杯で、息苦しさを感じる暇さえ与えてもらえない。 私が先輩からのキスに翻弄されている間に、彼は器用に私のブラウスのボタンを外してそれを体から取り去ってしまう。 同様にブラもスカートも下着までも、いつの間にか私の体から取り去られていた。 私も先輩の真似をして、キスをしながら彼のシャツを脱がしてしまおうと試みたけれど上手くいかず、結局最後は先輩自らシャツを乱暴に脱ぎ捨てた。 「まだまだ修行が足らねえな、里悠」 そう言って笑いながら先輩は私の体を抱き寄せ、再び唇を塞いでくる。 あの日を境に私たちは、こうして直接肌を重ねるようになっていた。 とても自然な流れで、そうすることが当たり前のように。 互いの肌の温もりを確かめあう。 直に触れる肌の温もりは、どうしてこんなにも心を躍らせるのだろう。 私は、この肌と肌が合わさる瞬間がとても好きだ。 胸がキュッと締め付けられるような、ふわっと温もりが広がっていくような…そんな感覚がすごく好き。 だから私は、その温もりをもっと感じたくて先輩にしがみつくように首に腕をまわしキスをせがむ。 それに先輩が応えるように、ギュッと体を抱き寄せてキスをより深くしてくれる。 肌と肌の密着度が高まり、体の中心が熱く火照りだす。 次第にお互いの肌に汗が滲み出し、息も乱れ始める。 気分が急激に高ぶってくるのがわかる。 そして、先輩も同じように高ぶっているのを感じる。 いつもより激しく感じる先輩からのキス。 いつも以上に優しく感じる先輩からの愛撫。 私が求める以上に求められているような錯覚に陥って、さらに私の体を熱くさせる。 「蒼斗っ…せんぱっ…あっ、やっ…ダメッ…ふっ…ぁ…あぁっ!」 「何がダメなんだよ…こんなに愛液たっぷり出してるくせに…いつも言ってんだろ、ダメじゃなくてイイって言えって…」 先輩はそんな意地悪なことを言いながら、蜜で潤った秘部を指でかき回し突き上げる。 その度に私の口からは、悲鳴にも似た喘ぎ声が恥じらいもなく漏れた。 立っていることさえままならず、何もかもがどうでもいいと思えるくらい極上の空間。 以前の私では考えられないくらい、淫らな姿だと思う。 だけど、知ってしまった以上求めずにはいられない快楽の極地。 その果てがじわじわと近づいてくることを肌の痺れが知らせてくれる。 もう少しで… 私は懇願するように潤んだ瞳を先輩に向け、吐息交じりの声を吐き出した。 「あっ…ダメッ…先輩…も…イかせて…ください」 この時の自分の顔がどんな表情をしていたのかなんて私にはわからない。 だけど先輩はその私の顔をじっと見つめ、切なげに少し表情を歪めた。 「そんな表情(かお)して見ンなよ。俺のを入れたくなんだろ…」 少し辛そうに聞こえた先輩の声。 その言葉が何を意味するのか、今の私にはもうわかる。 でも先輩が何故そんな辛そうに言うのか私にはわからなかった。 そして私の次の言葉がどれほど先輩を追い込み、余裕をなくさせるものだったのかも。 「入れてください…先輩の…を…」 「お、まえ…」 「先輩ので…イかせて…欲しい、です…」 どんなに大胆なことを言っているのか自分でもわかっていた。 だけど言ってしまったものはもう戻せない。 私は耳まで真っ赤に染め上げながらも訴えかけるように先輩を見上げる。 「里悠…」 先輩はその言葉に突き動かされるように切なげに名前を呼びながら荒々しく唇を奪うと、私の片足を腕に抱え上げて、そのまま腰の部分に手を添えて自分に引き寄せる。 瞬間、彼の反り返った先端が私の秘部を撫で、潤いきった入り口に一瞬引っかかって弾かれた。 「ぁっ…」 と、思わず漏れた私の声。 先輩は、少しだけ唇を離して私をじっと見つめてくる。 とても綺麗な顔。 思わずうっとりとしてしまうほど整った顔。 だけどそれは、今まで見せた事がない表情だった。 こういう顔をきっと“男の顔”と言うんだろう。 その顔から目を逸らすことが出来なかった私。 ある種の期待を胸に抱き、その間近に見える綺麗な瞳を見つめ返した。 暫く無言で見つめあう二人。 やがて先輩がポツリと言葉を零す。 「イれる?」 耳に届く先輩の切なげな掠れた声。 その先輩の言った言葉にトクン。と胸が高鳴った。 「先輩…」 いよいよ結ばれる日が来たのかと、トクトクと胸を高鳴らせながら、コクンと一つ頷いて見せる。 だけど先輩はそのまま暫く黙り込み、震えるような息を吐き出してから、また今度な。と言って、少し笑って見せた。 その顔がとても苦しげに思えたのは私だけだろうか。 本当は、すぐにでも入れたいのに入れられないんだ。そう言っているように見えるのは私だけ? 今まさに先輩が心の葛藤と戦っているとは露知らず、私は不安げな面持ちで彼を見た。 「せんぱい…ど、して…」 「お前はイれて欲しい?」 その問いに私はまた一つ頷いて見せる。 先輩の瞳に迷いが浮かぶ。 傍から見ていた私にもそれをはっきりと感じることが出来た。 こんな先輩の姿を見るのは初めてだった。 いつだって私の意見は関係なく、先輩の気分次第で“する”“しない”が決定し、迷うことなど一度もなかったから。 何が先輩を迷わせているのだろう。 もしかして私を気遣っている? それなら、とっくにもう決まっているのに…先輩だって知っているはずなのに。 私は先輩と結ばれたい。 たとえそれが一方通行の思いだとしても後悔なんてしない。 そんな思いを込めて、私は先輩をじっと見つめる。 先輩もまた暫く私をじっと見つめてから、今度は何も言わずに再び唇を重ねてきた。 ゆっくりと口内を味わわれるような濃厚なキス。 私も、先輩が少しでもその気になってくれればと願いながらキスを返す。 お互いに唇を吸い合う音を響かせる。 より体を密着させようと二人の腕に力が入る。 やがてキスで頭がボーっとしてきた頃、先輩は抱え上げていた私の足の位置を少し変え、お尻に手を添えると秘部に何かを宛がってきた。 それが何なのか、すぐにわかった。 私は唇を少し離し先輩を見る。 先輩もまた私に視線を返してきた。 視線を絡め合わせたまま、先輩はクッと反動をつけて腕を引き寄せる。 その瞬間、秘部に圧力がかかり、グッと何かが少しだけ食い込んでくるような感覚に襲われた。 「………っ!!」 ピリリッ、と電流のようなものが脳天を突き抜ける。 反射的に私の目が少しだけ閉じた。 再び目を開くと、切なげに私を見つめている先輩の顔が映る。 その顔はとても苦しげで、辛そうな顔。 「せん…ぱい?」 先輩は、暫く何も言わずに私を見つめていたけれど、やがて眉間にシワを寄せながら辛そうに目を閉じると、抱えあげていた私の足を下ろして体を少し離した。 「やっぱ無理…まだ出来ねえ…」 「そんな…それって、私がまだまだ未熟…だからですか?」 「違う」 「だったらどうして…」 「俺の問題。 まだケジメつけられてねえから」 「ケジメ?」 「そ。所謂オトコのケジメっつうやつ? あ〜、マジほんとヤベぇ…さっさと手ぇ打たないと、俺の理性がぶっ壊れそう」 私には、先輩の言っていることがさっぱりわからなかった。 先輩の問題だとか、オトコのケジメだとか… 前にも同じような事を言われた気がするけれど、記憶を辿ってみてもそれらしいものを見つけ出すことが出来なかった私。 いつの間にか表情が曇っていたらしい。 きっと不安が表に出てしまったんだろうと思う。 先輩はそんな私の表情に気がついて、慰めるように頭をクシャクシャッと撫でてくる。 「そんな不安そうな顔すんな。 お前のせいじゃねえんだから」 「でも…」 「ま、これはお前にとっても良い話だと思うけどな?」 「え…?」 「お前がまだ俺のことを好きなら、の話だけど」 「もちろん、好きです!大好きです!! この先もずっと、ずっと!!!」 わけもわからぬままそう力説すると、先輩はおかしそうに笑いながら、わかってるよ。と、また頭を優しく撫でる。 「だから頑張ってんだろ? 俺らしくねえけどさ…」 「え…」 先輩らしくない? それって、どういう意味? 「まあ、もう少し待ってろ。あとちょっとでケリがつく…そうしたら、嫌ってほど抱いてやるから、それまではあんまり俺を煽るな。理性がぶっ壊れる」 理性がぶっ壊れる? 先輩の? 「それが壊れたらどうなるんですか?」 「あ? そりゃあ、足腰立たなくなるくらいお前をめちゃくちゃにすんだろうな」 「なっ?!」 めっめちゃくちゃって…めちゃくちゃって何? 足腰立たなくなるくらいって…何をするおつもりですか?? 全く想像が出来ない私は先輩の言葉に恐れおののき、一気に顔から血の気が引いていく。 その様子に先輩は声を立てて笑いながら、お前が煽らなきゃ済む話だろ。と言う。 別に私、煽ってませんから! そもそも煽るって意味もわかりませんし?! もう、先輩とのやり取りはわからないことが多すぎて本当に困る。 逆に言えば、私が知らなさ過ぎるんだけど… 「まあ、もう暫くは俺のナニで悦ばせてやることは出来ないけれど、その代わりに秘密兵器を用意してやっただろ? それで楽しもうぜ?」 そう言ってニヤリと笑った先輩の顔が少しだけ悪魔に見えた。 「ふっ…んっ…はンッ!…んんっ…」 「里悠…もっとこっち来ねえとお前の舐めらんねえだろ…」 先輩は呆れたような声を出しながら私の腰をグイッと引き寄せる。 その反動で口に含んでいた先輩のモノが、口の中から少しだけ姿を出した。 あれから先輩はソファに場所を変えると、自分は手摺部分に頭を乗せて寝転がり、私にその上に跨るように指示を出す。 方向は、先輩とは逆になるように… 所謂これが俗に言うシックスナインと呼ばれるものだと知ったのは、つい最近のこと。 「69」という数字を書いてそれを横にすると、丸い部分を頭だと見立てるとこの体勢に見えるだろ?と先輩から教えてもらい、なるほど〜。と、妙に納得してしまった私。 いや、納得してどうする。 わざわざ図解にしてもらってまで、私は何故こんな事を教わっているんだ…。 それにいくら不本意ながらも納得出来たとはいえ、これはすぐに馴染めるものじゃなかった。 だって…体勢が体勢だし、先輩がいちいち余計な事を言ってくるんだもん。 「お前の恥ずかしい場所丸見え…ピンク色したヒダがパッカーって…――――」 ぬわぁぁっ!それ以上言うなぁぁっ!! パッカーって…パッカーって何だぁっ!!! 恥ずかしさのあまり気絶しそうになったじゃないですか…。 先輩はこの状況を楽しむように声を弾ませながら、あーだこーだといつも色々説明してくれる。 もちろん、私の反応を見ながら。 まだ陽がある明るい場所であんな場所を先輩の目の前に晒しているだけでも卒倒するほど恥ずかしいものなのに、その上何故に先輩の言葉にまで辱めを受けなければならないのか。 先輩、絶対面白がってる… この、エロエロ大魔王!! と、口に出して叫べたらどんなにスッキリするだろう… だけど悲しいかな私の口からは絶対に言えない。 先輩に恋をしてしまったマスコットの悲しい性なのだ。 「里悠〜…どっちが先にイかせることが出来るか競争でもするか?」 先輩は私の秘部に舌を這わせながらそんな事を言ってくる。 するわけないでしょう!結果が見え見えなのにっ。 どうせ最終的にはアレを出されて私が負けるに決まっている。 いや、それ以前に先輩に勝てるわけがない。 私は先輩の言葉を無視し、口に含んだ彼のモノをジュルッと音を立てて吸い上げた。 「あ…無視しやがったな」 マスコットにだって反抗期はあるんです…微妙な反抗だけど。 静まりかけていた体が再び熱くなるのに時間はかからなかった。 先輩のほうもそうだったのか、次第に口数が減り余計なことまで言わなくなった。 お互いを攻めあう音だけが響く室内。 意識が集中すればするほど私の果てが近づいてくる。 それまで同じように攻めていたはずなのに、徐々に私のほうの余裕がなくなってくる。 いつしか口に含んでいたものが外れ、先輩のモノを握ったまま上半身が崩れ落ちていた。 「あっ…あっ…イッ…あぁっ…んんっ!」 「そろそろ…強い刺激が欲しくなってきた? 腰がいやらしいくらいに…動いてんだけど」 先輩はそう言いながら、指先で秘部を押し広げつつ舌を中に差し込んで蠢かせたり、指を使って内壁を擦ってきたりする。 その度に私は身を捩じらせ口からは喘ぎ声しか出て来なかった。 「どうする、里悠? すげぇ蜜が溢れ出てきてんだけど、そろそろイきたいよなぁ?」 「あっ、あっ…あンっ!!」 「ククッ…アレ使う?秘密兵器…お前が乱れまくっちゃうヤツ」 「ヤッ…ダメ…それはっ…ああんっ」 「その声、駄目って風に聞こえねんだけど? それに、俺の特権いらねえっつうの?」 「だっ、だって…やぁぁんっ!!」 先輩は意地悪く笑いながら、徐々に私を追い詰めていく。 体を限界ギリギリの所まで追い込み、“うん”としか頷けないように。 数日前から始まった新たな先輩の特権…それは、ある物を使った疑似体験だった。 まさかそんなものがこの世に存在し、それを使うだなんて全く想像すら出来なかったけれど、先輩は特権と称してそれを使いはじめた。 先輩がそれを手に入れたのは、あの青木先生との事があった時に立ち寄ったラブホテル。 いつの間にそれを買ったのか私は知らなかったんだけど、ここで初めて見せられた時は開いた口が塞がらないほど驚愕したことを覚えている。 「あんなボロいラブホにも売ってんだな、バイブって。 ちょうどいいからあん時に買っといてやったよ」 「は?ばっバイブ?」 …って、一体なに?! 「そ、バイブレーター。俺のを入れてやるまでに慣らしておいてやろうと思って」 そう言いながら先輩は、箱から取り出した中身をそのまま裸体の自分の股の部分に宛がう。 ちょうど元気に反り返っている先輩のモノと中身とが並ぶ位置。 形もサイズも良く似てる。 色こそ違えどリアルすぎるその形。 眩暈がしてぶっ倒れそうになった。 なに…それは…… 先輩はその体勢のまま、今回の特権は疑似体験な。と、ニヤリと口の端を上げて笑う。 まるで意味がわかりませんけども?っていうか…その体勢やめてください。 いつもの如くこの状況についていけていない私を余所に、先輩は楽しげに準備をし始めた。 そのバイブとやらに薄いゴムを被せ、トロンとした液体を塗りつける。 それから、さて。と、私を見てニヤリとまた笑った。 「俺のモノだと思え」 いやいやいやいや! 何を仰られているんでしょうか。 俺のモノだと思えって、思えるわけがないでしょう? 全く違うモノですし?! 理解不能な先輩の言葉にたじろいだけれど、抵抗しても無駄なんだと先輩の顔を見て悟った。 何がなんだかわからないうちに始まってしまった疑似体験。 最初は痛くて入らなかったものも、回数を重ねるうちにいつの間にかスムーズに受け入れられるようになってしまった私。 先輩が無理強いせず少しずつ慣らしてくれたお陰か出血もなかったし、指とは比べ物にならないほどの存在感と刺激にこの間は乱れまくって意識まで飛ばしてしまったほどだ。 だから抵抗があった。 アレを使うことに。 意識を飛ばしてしまうほど気持ちは良かったけれど、あんな風に乱れてしまう自分が恥ずかしくてならなかった。 「だって、何だよ。何か言いたいことでも?」 「だって…おかしく…っん!…なっちゃうから…恥ずかし…くて…」 「ぶはっ!何、いまさら。今まで散々お前の乱れた姿見てんだけど?」 「でっ、でも…あれは特別…」 「確かに特別乱れまくってたよなぁ…ククッ…この間は潮吹きながら気ぃ失ったもんな?」 あうぅ…潮吹きながらって意味がわからないけど、とにかくその通り。 だから嫌なんですよ、先輩。 「別にいいじゃん。乱れまくるほど気持ちがいいってことだろ?」 「う〜…そう…ですけどぉ…」 「俺好みのエロい女になってんだから、それで…いいんじゃねえの?」 先輩はそう言いながら上体を起こす。 そして体勢を変えて私の体を仰向けに寝転がせると、上から覆いかぶさってきた。 近い距離で絡み合う視線。 トクトクトク…と、心地よい速度で私の鼓動が脈を打った。 「もっと乱れた姿を俺に見せてみろよ…里悠」 「せん…ぱい…」 「俺がそう望んでんだから、恥ずかしがる必要なんてねえだろ? お前は俺のを入れられているつもりで、ただ感じていればいいんだよ。まあ、俺のはこんな物とは比べ物にならないほど桁違いな気持ちよさだけどな?意識がぶっ飛んだあと、暫く戻って来られないくらい狂うから。それに少しでも耐えられる体になってもらわなくちゃなぁ?里悠」 「え…」 ニヤリと妖艶な笑みを浮かべられ、ドクンッと一つ心臓が唸る。 こんな物とは比べ物にならないほどって…こんな物にさえ狂いそうになってしまうのに… 先輩と結ばれる日は、一体私はどうなってしまうのだろう。 一抹の不安が脳裏を掠めたけれど、すぐにそれはかき消されてしまった。 「お前を待ってたら日が暮れる。 もう、入れるぞ」 と、何の前触れもなく秘部に宛がわれた何か。 何を?と、反応したときにはもう遅かった。 先輩が少し体を倒したと同時に秘部に圧力がかかり、グッと何かが中に押し入ってくる。 「はっぅん!!」 突然襲われた脳天を突き抜けるような強い刺激に、思わず私の体が弓なりに仰け反った。 いつの間に用意したのか知らないけれど、先輩が体を倒す毎にググッと中に入り込んでくるバイブ。 慣らされてしまった私の体は、何の抵抗もなくそれを受け入れてしまう。 この体勢に、まるで先輩のモノが入ってきているような錯覚に陥って、一気に体が熱くなった。 先輩は、手に持ったバイブを最初は何もせずにただゆっくりと出し入れを繰り返す。 焦らすような、じれったさを感じるその動きに思わず私の体が捩ってしまった。 その私の様子に、クククッ。と忍び笑いを漏らしながら、先輩が軽く唇を重ねてくる。 そして、僅かに唇を触れさせながら意地悪く囁いてきた。 「どうした?里悠…こんなんじゃ物足りねえってか?」 「んっ…ちがっ…でも…あっ…やっ…」 「もっと素直になればいいじゃん…なあ、里悠。 いつもみたいに可愛くおねだりしてみろよ。もっと激しくして〜って」 「そんな…」 言えるわけがないじゃないですかっ。恥ずかしいっ!! イかせてください…とは言えるようになったけれど、その他のことはまだあまり言えないんですから。 それをわかっているくせに、どうして言わせようとするかなぁ。 早く言えよ。というような視線を送ってくる先輩にジト目を向けながら、それでもやっぱり恥ずかしくて言えなかった私は、腕を彼の首に回し自ら唇を重ね合わせた。 チュッチュッと、先輩の唇を啄ばむようなキスから舌を絡め合わせるような深いキスに変えていく。 先輩は、まあいいや、これで許してやる。と囁くと、私のキスに応えながらバイブのスイッチを入れて操りはじめ、徐々に手の動きを激しいものに切り替えてきた。 途端に襲ってくる肌の痺れと甘い快感の波。 先輩の唇が離れ、それが私の肌を這い出すと更に気分が高まってくる。 先ほどまで持ち合わせていた恥じらいはいつの間にかどこかに消え失せ、先輩が好む淫らな私が姿を見せはじめた。 甘い喘ぎ声を響かせながら、どんどん大胆になっていく私。 言われるがまま大きく脚を広げたり、あれもない姿を恥ずかしげもなく先輩の前に晒す。 もう、何も考えられなかった。 快感に身を震わせ、先輩の名前を何度も呼び、甘い声を響かせることしかできなかった。 どんどん昇りつめていく意識。 次第に自分の声まで聞こえなくなってくる。 激しく中を突き上げられ、あらゆる性感帯を攻められる。 きつ過ぎるほどの快感の嵐。 それらを全て受け取った私は、最後絶叫にも似た声を発しながらそのまま意識を飛ばして果てた。 暫くして意識が戻ると、私は背後から抱きしめられるように先輩と一緒にソファに横になっていた。 体には薄いタオルケットがかけられている。 目を覚ました私に気づくと、先輩は優しく髪を撫でながら耳元に唇を寄せて囁いた。 「意識飛ぶほど気持ちよかった?」 「う〜…は、ぃ…」 「ククッ…エロい女」 だぁーっ!もう、エロい女って言わないでくださいって。 なんか…凹む。 でも、先輩の話によると私が意識を飛ばしている間に、先輩は自分で自分の処理をなさったそうで。 それを聞いて何だか申し訳ない気持ちになった。 私だけ…だなんて。 先輩に対して申し訳なくてしょんぼりとしていると、何でお前が落ちてんだよ。と、おかしそうに先輩が笑う。 「だって…私だけって…」 「なに、俺も一緒に気持ちよくなって欲しかったって?」 「はい…」 「十分気持ちよかったけど? お前の特別淫らな姿をまた見られて…」 ククッと笑われながらそう言われ、思わず頬を赤らめてげほごほと咳き込んでしまう。 いやぁ…なんか、そういう意味じゃなくてですね。 それにあまりその事には触れて欲しくない気もします…はい。 「ま、残念ながらこの体でお前の体を楽しむのはもうちょっとオアズケなんでね。 これは俺が勝手に決めたことだから、お前がへこむ必要ねえんだよ」 「でも…」 「こっちのケリがついたら嫌ってほど抱いてやるって言ったろ? 今の心配するより、その時の心配をしてればいいんだよ、お前は」 わかったか。とでも言うように、先輩が私の頬をウニッと軽く摘んでくる。 その突然の刺激に心臓が一つ跳ねたけれど、先ほどから少し気になっていた言葉を拾わずにはいられなかった。 「あっ…あの。その、ケリって何なんですか?ケジメとか…先輩の問題って言うのも…」 「意味がわからねえってか?」 「はい」 「…教えて欲しい?」 「はい!」 是非とも!そんな勢いで私は頷く。 それを見た先輩は、考えなくても大体わかんだろ。と呟きながら呆れたように笑う。 それから少し考えるように黙り込んでから、やがて頬を摘んでいた手を離し体を少し動かして天井を見上げた。 「別に…大した事じゃねえよ。 単に、今まで関係を持っていた女を切っていってるだけ」 「え…」 「簡単に切れるヤツもいれば、なかなか納得しないヤツもいてさ…少々手こずってんだよな。 俺、今まで生きてきた中で女に頭を下げたことなんてなかったからな…若干プライドが邪魔して時間がかかってるんだよ」 「え…なんでそんな事を?」 不思議そうに呟きながら、首を捻って後ろにいる先輩の顔を見上げる。 先輩は私と目が合うと、暫くじっと見返してから、はぁ…。と一つため息を漏らした。 「わからないヤツには教えない」 「えぇっ!なんでっ?!」 「自分で考えろよ、それぐらい。 それがわかれば、俺の何が変わったのかもわかんだろ」 「えっ、えっ?!」 わかりません、考えても全然わかりませんっ!! え…どういう意味? どうして先輩はそんな事を? 先輩が私に対して何か特別な感情を抱くなんて意識を全く持っていなかった私には、先輩の言っていることが全く理解できなかった。 その様子に先輩はまた呆れたように笑いながら、どこまで鈍感なんだよお前は。と呟く。 そんな事を言われても、わからないことはわからないんだから仕方ないじゃないですかっ。 鈍感? 鈍感なの、私は? え…なにが? 「まあ、とりあえずケリがつくまでお前は忠実なマスコットをやってろってこと。 この前追加した条件、覚えてるよな?」 「え…あ、と…先輩以外の男の人とは馴れ馴れしく話さないことと触らせないこと?」 「それを破りやがったらタダじゃおかねえから」 「え゛?!」 タダじゃおかないって…タダじゃおかないって、何されるんですか私?! 若干恐怖に顔を引き攣らせると、何するかわかんねえし。と、先輩が更に追い討ちをかけてくる。 ひえぇぇっ〜〜。怖すぎるぅぅっ。 これは是が非でも守らなければ…。 そう、固く心に誓いを立てていると、先輩が突然私の腕を引いて体を自分に向けさせる。 背中に感じていた彼の温もりが胸に移動し、目の前に整った顔が現れた。 トクトクと逸りだす私の鼓動。 瞬く間に頬が紅く染まっていく。 先輩は私の瞳をジッと見つめてから、熱く火照った頬を指の背で優しく撫でてくる。 そして綺麗な笑みを顔に浮かべると、少し掠れた声で囁いた。 「お前のその顔も声も体も全部俺の所有物だから、気安く触らせんじゃねえぞ?」 「え…」 「え、じゃなくて、返事は?」 「あ、は…はい」 私のその気の抜けたような返事に、どこまでわかってんだか。と、先輩は小さく笑いながらも満足そうな顔をして私の体を優しく抱き寄せた。 なんだろう…なんだかよくわからないけれど 先輩がどんどん変わっていく… 学校で見せる姿でも、私にだけ見せていた姿でもない別の姿に。 きっとこの変化についていけていないのは私だけ。 先輩がどこに向かおうとしているのか検討もつかないのだから。 彼が何を思いどうしようとしているのか 鈍感な私がそれを知るのはもう少し経ってからのことだった。 |