〜秀&智香〜 「智香さ〜ん、これで荷物最後?」 「え?あ、そうそう。ごめんね、秀・・・重くない?」 「クスクス。結構ね・・・何入ってんの?」 「ん〜?ナンだったっけかなぁ。開けてみないとわからない。」 「あはははっ。ダンボールの上にマジックで書いとけばよかったのに。」 「あー、ホントだ。すっかり忘れてたそんなの。じゃぁ、開けてからのお楽しみって事で・・・。」 「お楽しみっつぅか、お片づけっつうか?」 ――――ピーカン晴れの土曜日。 私はバレンタインデーに秀から贈られた(?)彼と一緒に住む為のマンションへと引っ越して来た。 引越しは業者に頼むからいいよって言ってたのに、当たり前のように休みを取って手伝ってくれる秀。 それでお店の方、本当に大丈夫なの? 業者に混じりながら手伝ってくれる秀に嬉しく思いながらもそんな一抹の不安が心を過る。 秀曰く、『普段、人の倍以上働いてっからいいんだって。』だ、そうで。 彼が言うように、休みの日以外は朝早くから出て夜も日付が変わった頃に大抵帰ってくるから強ち嘘ではないと思うけど。 だったらこんな休みが取れた日ぐらいは、ゆっくり休んでたらいいのに。 なんて事を思ったりもするんだけど、本当に嬉しそうに先陣を切ってあれやこれやと働いてくれる秀に甘えちゃってたりもする。 私ってば、秀に甘えすぎかしら? 秀と付き合う前までは、どちらかと言うと甘えるより甘えられる方が多かった私。 男が変われば自分も変わるもんだわね。秀と付き合いはじめてから、確実に私の方が彼に甘えちゃってるんだもん。 年下の男の子なのに・・・って、この際年齢は関係ないか。 「おっし、業者も荷物搬入し終えて帰っちゃったし・・・2人で片付け頑張りますか!」 「え?帰っちゃったって・・・もう?代金は?」 「あぁ。代わりにサインして払っといたよ。」 「嘘!ごめん・・・ありがとう。後で代金返すね。」 「クスクス。いいっていいって。これは俺からの引越し祝いって事で。」 「なにそれー。ちょっと意味合いが違う気がするけど?」 「いいの!ほらほら。とりあえず大まかに片付けようよ。」 そう秀にせっつかれて、腑に落ちないまま片付け始める。 もう・・・秀ってば。 でも。一人暮らしの割りには結構荷物があったのね・・・片付けても片付けても中々綺麗に片付かない。 気が付けば辺りは薄暗くなり、部屋の灯りをつけなければいけない時間。 私達は一旦作業を中断して、宅配ピザを頼み腹ごしらえをする。 「はぁー、もぅ。片付かないわね。」 「あははっ。智香さん、荷物多すぎなんだって。まぁ、これから時間をかけてゆっくり片せばいいじゃん?」 「そうねぇ。これでも出るときに結構捨てたつもりだったんだけど・・・貧乏性はダメね。」 食べ終わって空になった箱をシンク脇にあったゴミ袋に捨てながら、はぁ。とため息混じりに言葉を吐き出す。 「モノを大事にするっていうのも大事な事じゃない?折角汗水たらして働いたお金で買った物を、簡単に捨てるのもどうかと思うし。」 「そう思って残した結果がコレよ。」 まだ山のように積み上げられているダンボールを見て、再び私の口からため息が漏れる。 その言葉におかしそうに笑いながら秀は私の元にやってきて、きゅっと体を抱きしめる。 「ゆっくり片付けようよ。ね?これからはずっと一緒なんだし、俺も手伝うからさ。」 「ごめんね、何か秀に甘えっぱなしで。秀が引越しの時は殆ど手伝えなかったのに、私だけこんなにも手伝ってもらっちゃって。」 「そんなの智香さんが気にする事じゃないじゃん。俺さー、夢だったんだよね。智香さんと一緒に暮らす事が。それが現実になってさ、すんげぇ嬉しいわけよ。だから手伝うのなんて全然屁でもない・・・っつぅか、俺がやりたいんだからさ。手伝ってもらってるだなんて思わないでよ。」 「・・・・・秀。」 ホントに・・・どうしてこの子はこんなにも私を幸せな気持ちにしてくれるのかしら。 私と一緒に暮らす事が夢だったなんて・・・嬉しすぎるじゃない? 私は彼の首の後ろに腕をまわすと、ありがとう。って囁き、自分から唇を重ねる。 何度重ねても脳を刺激させられる彼とのキス。 次第にキスが深くなり、彼の舌と絡みはじめる。 「ぁっ・・・んっ・・・しゅう・・・。」 「智香さん・・・好きだから。ずっとずっとこの先も俺、智香さんの事しか見えないから・・・護って行くよ、この先もずっと。」 「秀・・・私も好きよ。ううん、愛してる・・・秀の事。」 「俺も。愛してる・・・・・智香。」 彼から降り注がれる甘いキスとその言葉だけで、意識が飛んでしまいそうになる。 秀はキスをしながら私を横抱きに抱き上げると、そのまま隣りの部屋へと移動する。 お互いの身に纏ってるモノをすべて脱ぎ去り、一緒に選んで買ったダブルベッドに身を預ける。 肌を重ねながら、何度も耳元で囁かれる自分の名前と愛の言葉。 秀、この先あなたは何度この場所で愛を囁いてくれる? ・・・なんて言ったら、嬉しそうに笑ってこう言ってくれるよね。 そんなのずっとずっとに決まってんだろ?って。 ずっとずっと感じていたい、あなたの温もり・・・あなたからの愛。 あなたの愛を感じられる確かな場所――――just in the bed |