*恋の予感 『今日、カズの家に泊まりに行くから。』 そう美由紀から俺の携帯に連絡があったのは金曜の昼休みの時間。 俺はその言葉に暫し固まる。 ・・・・・え、今なんて? 『ちょっとカズ、聞いてる?もしも〜し?』 「あ、悪い。今日泊まりに来るって?美由紀・・・俺、手を出さない自信ねぇぞ?分かって言ってんの?」 『今日さ、会社で運動会みたいな事やってんのよ。その会場がカズのマンションの近くなのよね。だから、シャワー借りついでに今夜泊まらせてね。』 「いや、だから・・・」 俺が確認したいのはそっちじゃねぇんだって。 「お泊り」=「夜を共に過ごす」って事だぞ? ・・・・・分かって言ってんのかよ、美由紀。 俺の言葉を遮るように美由紀の声が被さる。 『んじゃ、そういう事でヨロシクね。』 帰る時、また電話するから。と、美由紀は慌しく携帯を切った。 ・・・・・ヨロシクね。って。 おいおい、それはどう取ればいいんだよ? 泊まりに来るっつぅ事は襲ってもOKッつぅ事か?・・・それとも俺を試してる? 俺は昼飯どころじゃなくなって、そればかりが頭の中を駆け巡る。 美由紀とごり押しで付き合い始めて2ヶ月から更に2ヶ月が経っていた。 オアズケを食らったままの4ヶ月。マジで最近限界に近い俺。 美由紀が俺の部屋に泊まりになんて来たら・・・絶対抑えらんねぇぞ? ヤベ・・・考えただけでも元気に・・・。 俺は熱を持ちそうな自身を何とか堪えると、煙草を咥えながら空を見上げる。 美由紀・・・お前、何考えてんの? その日は殆どと言っていいほど仕事に身が入らず、時間が経つもどかしさだけを感じていた。 終業のチャイムが鳴るとほぼ同時にカバンを掴み、帰路を急ぐ。 ・・・・・って、俺すっげぇ必死? 学生の頃の自分を思い出し、思わず苦笑が漏れる。 29の男が一人の女の為に必死こいてるなんてさ・・・中坊の恋愛みてぇじゃん。 でも、もしかしたら今晩美由紀が手に入るかもしれない。そう思ったらいてもたってもいられない俺がいて。 なんてたって10年越しだぞ?そりゃ必死にもなんだろ。 今日、美由紀が拒んでも押し倒してしまいそうな自分がいて正直怖かった。 いや・・・多分間違いなく押し倒す。 家に着くと程なくして美由紀からの連絡が入る。 『カズ?今、終わったんだけど・・・まだ仕事?』 「いや、家に着いたとこ。今どこ?」 『え?!もう、家に着いてるの?早いじゃない。カズの仕事が終わるまでどこかで時間潰そうかと思ってたんだけど・・・。じゃぁもう家に行っていい?結構汗かいちゃってて気持ち悪いんだよね。』 「あぁ、いいよ。家分かってんだろ?風呂沸かしておいてやるよ。」 『マジで?わぁ、サンキュー。じゃぁ後でね。』 ピッ。と携帯を切ってから、俺は洗面所に向かいお湯を張ってバスタオルなどを用意する。 そんな事をやっていると、ピンポ〜ン。と軽快なチャイム音が部屋に響く。 ・・・美由紀もう来たのか? ドアを開けると美由紀の姿。心なしか頬が少し赤らんで見える。 「おぉ。早かったじゃねえか。」 「おっス。ん〜結構近くまで来てたからね。お邪魔しま〜す・・・学生の時以来だね、カズの家に来るの。」 「そう言えばそっか。っつぅか美由紀、今日俺の家に泊まるって事はそうなってもいいって思ってもいいのかよ?」 「何よ・・・のっけからその話?とっ泊まるって言ってるんだから・・・それよりも、シャワー借りていい?」 美由紀の頬が更に赤く染まり、俯き加減でスタスタと洗面所へと向かっていく。 それを追いながら、俺の声も一緒に追いかける。 「って事はいいんだな?襲ってもいいって事だよな?もう俺、自制きかねぇぞ。嫌って言っても今日は抱くぞ?」 「あぁのね・・・そうはっきりと言わないでよ。まっまだだからね!寝る時まではオアズケなんだから。」 真っ赤な顔のまま、シャワー浴びて来る!と洗面所に消えた美由紀を見送り、自然と口角があがる。 寝る時までオアズケってか?そんなここまできて・・・守れるわけねぇじゃん? 正直、ここまで頑張った俺を賞して欲しいよな。 俺はシャワーの音が響く浴室のドアに近づき、自分の服を脱ぎ捨ててそっと中に入ると、頭を洗い終えてクリップで髪を留めている美由紀の身体を後ろから抱きしめる。 「ひゃっ!わっ!!かっカズ?!なっ何やってんのよ!!!」 「もう待てない。今すぐ美由紀が欲しい。」 「やっん・・・寝る時まで・・・オアズケって言ったでしょ?」 「無理。もう限界・・・充分待ったじゃねぇか。付き合うまで10年、付き合ってから4ヶ月。これ以上待たせんなよ。」 俺は美由紀の身体を自分の方に向かせると、貪るように美由紀の唇に自分の唇を重ねる。 その勢いに美由紀の重心が崩れ、背中が壁に着く。 それでも俺はキスを止めずに、美由紀の口内を弄った。 「んっ・・・ぁ。カズ・・・ダメだって。」 「俺も・・・ダメ。もう止まんねぇ。」 もう・・・止まるわけがねぇじゃん。 「――――美由紀・・・もう入らせて。」 美由紀の腕が俺の首の後ろで絡み、お互いの舌が口内を行き交う。 俺は愛撫もそこそこに、反り立つ自身を美由紀の身体に押し付けながら耳元で囁く。 こんな余裕がねぇの初めてだって。 すぐにでも中に入らないと爆発しそう。 潤んだ瞳に頬を高揚させながら、美由紀の視線が俺の視線に絡む。 「ん・・・来てカズ。カズのが欲しい。」 「美由紀。」 美由紀のその言葉に俺の中で何かが弾けたような気がした。 俺は美由紀の片足を肘で抱え上げると、自身を美由紀の入り口にあてがい一気に中を突き上げる。 「あぁぁんっ!!」 「っく!!」 言いようの無い快感が俺の脳天を刺激する。 俺は何かにとりつかれたように、美由紀の身体を抱きしめ激しく中を突き上げた。 「あっ・・ダメっ・・カズっん!!」 「みゆ・・・っき。」 「そんなっ・・激しくされたら・・・イッちゃう!!」 「いいよっ・・何度でもイかせてやるから。」 「あぁぁぁっ!!」 美由紀による強い締め付けを何とか持ちこたえると、繋がったまま彼女の身体を抱き上げて脱衣所の床まで運び、寝転ばせてその上に覆いかぶさる。 「はぁっん!!」 先程よりも奥深くに進み、美由紀の顎が色っぽい声と共に上がる。 「ごめん、ベッドまで持ちそうにないから。」 俺は腰をグラインドさせながら、彼女の内壁に擦りつけ敏感に反応を示す部分を探る。 先程果てたばかりだからか、美由紀の反応は凄くよくて、俺が動く度に自身を心地よく締め付けてくる。 「カズ・・・ダメッ・・・そんな、またイきそうになっちゃ・・・ぅんっ!!」 「言ったろ?何度でもイかせてやるって。これで終りと思うなよ?10年と4ヶ月分抱かせてもらうから。覚悟しとけ。」 「やっぁ・・・壊れちゃう。」 「そうさせたのは美由紀だろ?責任取れよな・・・っく。俺もそろそろヤバイ。」 さっきからの美由紀による軽い締め付けのせいで、そろそろ自分の限界が近づく。 俺は美由紀の唇を塞ぎ、口内深くで舌を絡め合わせながら律動の速度を上げた。 「あっあっ・・・カズッ・・カズっんっ!いいっ・・イッちゃう・・・イッちゃう!んん!!」 「んっ・・・俺も最高気持ちいいっ・・・はっぅ・・も、ダメ。イクッ!!」 「あぁぁぁんっ!!カズぅぅっ!!!」 「みゆっ・・・!!」 俺は美由紀の腰を持ち、激しく奥を攻め立てて美由紀が頂点に達してから程なくして彼女のお腹に欲望を吐き出した。 「・・・もぅ、カズ。激しすぎるって。」 お湯に浸かりながら、俺に後ろから抱きしめられている美由紀は、ぼそっ。と呟く。 「激しくさせたのは美由紀だろ?俺だって最初は優しく抱こうって思ってたのにさ。待たせすぎなんだよ、お前は。」 「だって、カズの事本気で好きになりたかったんだもん。ちゃんと中身を好きになった上で抱いてもらおうって・・・。」 「っつう事は俺の事を芯から好きになってくれたっつう事だよな?」 美由紀にまわした腕に、ぎゅっ。と力を入れながら、彼女の肩に自分の顎を乗せる。 「・・・・・ぅん。」 小さいけれどはっきりと聞こえた美由紀の声。 その声に自然と笑みが漏れる。 「ごめんね・・・随分と長い時間かかっちゃって。でもこれでカズと同じ位置に立てたよね?」 「ん?まだまだ俺の方が先に立ってるな。」 「えぇ?どうしてよ、私だってカズの事本気で好きになったんだよ?」 美由紀は抱きしめられたまま、顔だけを俺の方に向けてくる。 俺はその唇に軽くキスをしてから、クス。と軽く笑って、まだまだ。って呟く。 え〜、どうしてよ?って美由紀は不思議そうに首を傾げるけど、美由紀はやっと俺の事を本気で「好き」になってくれたんだよな? でもさ、俺は今美由紀を本気で「愛してる」からさ、まだまだ距離は縮まらないよな。 ――――きっと縮まらない、この距離は。 だっていつだって俺の方が美由紀の事を想ってるんだから。 美由紀が俺を好きになってくれた分だけ、俺は美由紀を愛するから。 ・・・きっと、ずっと縮まらない距離。 俺は再び美由紀の身体を強く抱きしめるとそっと耳元で『愛してる。』って囁いた。 ++ FIN ++ ++ 神楽のちょこっとあとがき ++ 携帯サイトで公開していた作品をこちら、メインサイトに移行して来ました♪ たははっ。カズ・・・待たせすぎた(爆)さぞかし辛かった事でしょう(他人事) 好きだからこそ待てたと言うのもあるでしょうが・・・それにしても(^▽^;んにゃっ♪ 相変わらずの甘い仕上がりとなっておりますが(笑) 自分よりも相手の方が『好き』って想ってくれるって嬉しいですよね。 美由紀は幸せ者だなぁ〜・・・。 初回から3作品は「全年齢対象」でしたので、サブサイトにて公開しております。 こちらだけでも多分お楽しみいただけると思うのですが、よろしければカズの耐える姿など(笑) サブサイトにてお楽しみいただけたら嬉しく思いますv 最後までお目を通してくださってありがとうございました♪ お楽しみいただけましたでしょうか?? H17.3.14 神楽 |