++ 美由紀の想い ++


昼休み、私は作ってきたお弁当を事務で一緒の女の子達とワイワイ話をしながら食べ終わって、「ちょっと銀行へ行って来るね。」と、先にお弁当をしまって席を立つ。


「あぁ、いい天気!!」


思わず背伸びをしたくなる程、真っ青に広がった空を見上げて独り言を呟く。

今日はカズと会う約束をしてるから、少しぐらいお金持ってないとね。いつもカズが出してくれてるから、たまには私がご馳走しないとバチが当たりそうだもん。

カズに押し切られて始まったお付き合い。それももう2ヶ月か・・・。早いなぁ。


でも、最近身にしみて感じるの。私の中のカズへの想いが大きくなってきてるって事。

仕事の合間にくれるメールにドキンッ。としたり、夜寝る前にかけてきてくれるお休みの電話を今か今かと待ちわびてたり、彼と唇を重ねる度、「もっと。」って思ってる自分がいる。

いつの間にか一日の間にカズの事を考えている時間が増えているし、服を買いに行った時なんか、「あ、これカズに似合いそう。」なんて思ったりして。

あぁ。私、カズの事好きなんだなぁ。って実感する事が多くなってきた。

キスをする度、先に進みそうになる雰囲気を「まだダメよ。」なんて余裕のあるフリをして断ったりしてるけど・・・そろそろいいかな。なんて思ってきてるんだよね。

唇を離した時のカズの辛そうな表情を見る度、ごめんね。って心の中で呟いているんだよ?すごく我慢させてるっていうの分かるから。

だけど、カズ。あの日、言ってくれたよね?『顔ばっかで選んでねぇでさ、中身を見れるようになれば?』って。

だからね、もう失敗をしないように、本当のカズを見ようって思ってるのよ?


私は今までどちらかと言うと、付き合ったらすぐに体を許してた方だから、結局のところ『体の関係』だけで終わってた部分もあったと思う。

カズが言うように『顔』だけで彼氏を選んでいたっていうのもあって、性格合わないかも。って思いながらもカッコイイから好き。って騙し騙しきてたんだよね、きっと。

だから、相手の本当の姿を見る事が出来なくて、結局は捨てられちゃってたんだろうな・・・。

でももうそんな失敗はしちゃダメだって思うから、カズの本当の姿を好きになりたいって思ったから・・・


・・・だから、私の我侭だけどもう少し我慢してもらってもいいかな?

ちゃんと真っ直ぐカズを見て、あなたを好きになるから。池垣 和也という一人の男性を好きになるから。

多分、もうほんの少しの時間、私の我侭に付き合って?

カズならきっと分かってくれるよね?

・・・カズなら絶対。

私は降り注ぐ太陽の光に目を細めながら、横断歩道の信号が赤から青に変わるのを待っていた。

++ FIN ++




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