++ カズの試練 ++ 会社の昼休み、俺は社員食堂で昼食を済ませてからタバコを吸う為に屋上にやってきた。 煙草に火をつけ、肺の奥まで吸い込み、ふぅっ。と吐き出す。 美由紀とごり押しで付き合いはじめて早2ヶ月・・・・・って、もう2ヶ月かよ。 吐き出された煙を目で追いながら、はぁ。とため息が口から漏れる。 2ヶ月も付き合って、キス以上の発展はナシ。最近マジで凹む。 美由紀と会う度、今日こそは!と意気込んで行くのに、結局キスまでで「お休み」、と来る。 ・・・・・ったく、そろそろ許してくれてもいいんじゃねぇの?かんなり俺の性欲に対するフラストレーション貯まってんだけど。 いや、別にヤりたいだけって訳じゃねぇんだぞ?でもさ、本気で惚れた女と付き合えて、抱きたい。って思うのって普通じゃねぇ?美由紀だって分かってるはずなのにさ。キスより進みそうになると、「まだダメよ。」なんて軽くあしらわれちまう。 まだ、俺の事本気で見てくれてねぇのかな。 そんな不安が心を過る。 ごり押しで付き合い始めたんだから、こうなる事は見えてたはずなのに、いざ美由紀が「俺の女」ってなると、どうしても全部手に入れたくなっちまって・・・。 あぁぁぁ!どうすりゃいいんだよっ!! ったく、女を手に入れるのにこんなに苦労なんてした事ねぇぞ。 「あぢっ!!」 考えに没頭してたら、いつの間にか煙草の芯が指先近くまできてて、軽く熱を浴びてしまった。 地面に落ちた吸殻を靴の底で踏み消し、灰皿に投げ入れる。 はぁぁ。今日も仕事が終わったら美由紀と会う約束だったよな。 俺、いつまで理性持つと思う? ・・・って、誰に聞いてんだよ俺。 29にもなってこんなに翻弄されるなんて思ってもみなかったって。 ごり押しで付き合ったんだから、そのまま強引に抱くか!!・・・って、んな事出来てんならこんなに悩まねぇっつうの。 美由紀に誓ったもんな。――――『美由紀がOK出すまで俺は手を出さない。』って。 何であんな事言ったんだ?俺。 ――――後悔先に立たず・・・ってか? 美由紀ぃ〜。そろそろ自分で慰めんのも辛くなってきたぞ〜!! 俺は新しい煙草に火をつけると、思いっきり肺に煙を送り込む。 「ぶほっ・・・ぶはっ。」 ・・・・・何やってんだ。 はぁ、もう少しの辛抱だ。 ・・・頑張れ、俺。 ・・・・・負けるな、カズ。 ・・・・・・・・・・言ってて空しいぞ。クソッ。
++ FIN ++
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