〜*〜 記念日 〜*〜
「今日が俺達の記念日だな」
車の往来も人の影さえもない夕方の横断歩道の手前で、自分の掌に彼の温もりが感じられる事にドキドキしながら、赤いランプを見ていた私に、彼は繋いだ手にキュッと軽く力を入れて、ニッコリと微笑んで顔を覗き込んでくる。
「……え?」
私は一瞬何の事を言っているのか分からずに彼を見上げて首を傾げる。
彼はその反応に、少し呆れたように苦笑を漏らしながら、繋いだ手をそっと持ち上げて、私の手の甲に軽くキスをする。
「こういうのって女の子の方が敏感だと思ってたけど?」
「え?あの…記念日って?」
突然の彼の行動に、瞬く間に頬が赤く染まるのを感じながら、それでも意味が分からずに、首を傾げたまま彼の綺麗な瞳を見つめる。
「今日、俺が告白して涼子からOKもらえたよな?」
「あ、うん」
「涼子と俺との関係は?」
「え…こっ…恋人…同士?」
「そうそう。今日から俺と涼子は恋人同士」
「う、うん…あの…」
……だ、だから?
ここまで聞いても分からない私って、本当に鈍感かもしれない。
私のこの表情を見て、彼は突然、ぷっと噴出す。
「えっ?えっ??」
「あー。もう、たまんない。可愛すぎ!そういう所が堪らなく好きだよ、俺」
「やっ…あっあのっ…その…あぁありがと」
ストレートすぎる彼からの言葉に、茹でタコのように真っ赤に頬が染まった私。
ホント…たまんない。そう呟いて、彼は繋いでいない方の手で私の頭をくしゃっと撫でる。
「そ、それで…その、記念日って言うのは?」
「ん?分かんない?」
「ん…ごめん」
「あははっ!いいよ、そういう所が涼子らしいから。俺達の記念日って言うのは、今日から俺と涼子が恋人同士になったって言う大切な記念日って事」
「あ……」
……なるほど。言われてみれば、そういうのも記念日って言うんだ。
付き合った事なんてなかったから、思い浮かばなかったよ。
「分かってくれた?記念日の意味」
「う、うん」
「よかった。これから2人でいっぱい記念日作ろうな?」
2人で作る記念日かぁ……あ、なんか。すごい嬉しいかも。
私は彼を見上げたままニッコリ笑って、うん!と、頷く。
「じゃあ、付き合った記念日の次は……」
――――ファーストキス記念ね。
そう言って彼は、ごく自然に当たり前のように体を屈めてチュッと軽く唇を重ねてきた。
++ FIN ++
『それでも僕らは恋をする。』 美優さまへ一周年お祝いをいただいたお礼に♪
H17.09.10 神楽茉莉
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