* ピクニック *







澄んだ青空が広がるピクニック日和。

寒いわけでも暑いわけでもなく、ほどよく暖かく心地よい風が頬を撫でる桜の咲くこの季節が私は好き。

今日は天気がよかったから、修吾君と一緒に近くにある文化公園へとお弁当を持ってやってきたの。

桜の咲き始めたこの公園には日曜日と言う事もあってか、今日は家族連れが目立つ。

公園の中は子供のはしゃぐ声が響き渡り、辺りを駆け回る姿も見受けられる。

私達は桜の木の陰になった芝生の上にレジャーシートを敷き、そこに並んで座ると持ってきたお弁当を広げる。


「うわっ。すごい…これ、全部美菜が作ったの?」


修吾君は広げたお弁当を見て、すごいうまそう。と、微笑みながらそう漏らす。


「えへへ…うん。今朝行くことが決まったからあんまり時間がなくて、冷凍モノとかもあるんだけど…ダシ巻きとかきんぴらごぼうとかはちゃんと作ったんだよ?」

「へぇ。すごいよ、美菜。これだけ美味しそうなのが並ぶと、どれから食べようかって迷っちゃうね」

「う〜…美味しいかどうかは自信がないんだけど。どうぞお好きなものから召し上がってください♪」

「クスクス。ありがとう。美菜が作るものだったら何だってウマいんだから、もっと自信を持ってね?」


そう言って修吾君は優しく微笑みかけてくれて、ダシ巻きを一つ取ると口に頬張り、うん美味い!ってまた微笑んでくれる。

それにホッと胸を撫で下ろし、自分もウインナーをお箸に挟むとパクっと口に運び込む。


「ねえ、修吾君。こういういいお天気に外でご飯食べるのっておいしいね?」

「うん。美菜が作ってくれたお弁当だから尚更ね?」


私の作ったお弁当を頬張りながらそう微笑む彼。

その言葉を聞いて頬が赤くなりつつも、嬉しくって心が躍ってしまう。

頑張ってお弁当作ってきてよかったぁ〜。


「えへへ。ありがとう」


そう照れ笑いを見せると、修吾君は、俺の方がありがとうだよ。と笑って返す。


あぁ。でも本当に気持ちがいいなぁ。木陰だから心地よいし、空を見上げると真っ青な空。

思わず、すぅっ。と深呼吸をしてしまう。


『こら、裕也。そんなに走ると転ぶよ〜』


なんとなく耳に届いたその声につられ視線を動かすと、私達のすぐ傍で小さな男の子がたどたどしい足取りで、きゃっきゃとはしゃぎながら、てこてこと芝生の上を走り、その後ろを両親らしき2人が微笑みながらその姿を追う。

とても幸せそうな風景。


「かわいいなぁ」


思わず口から出た言葉に、修吾君も、ほんと可愛いね。と笑みを漏らす。


「美菜の子供もすっごい可愛いだろうね」

「え〜!?そ、そんな…修吾君の子供の方が可愛いと思うよ?」

「じゃぁ、俺と美菜の子供だったらすっごく可愛くなっちゃうね」

「えへへっ。そうかなぁ〜」


え……ちょっと待って。私と修吾君の子供?

イコール……ケッコン!?

きゃぁぁぁ!!想像したら頬っぺたが真っ赤になっちゃった。

そんな様子の私を見てクスクス。と笑いながら私の頬に手を添えてくると、


「いつかそうなろうね」


と、そっと耳元で囁かれちゃった。

私は言葉にならず、ただただ頷くだけだったけど、私達の前を横切るその幸せそうな家族を 眺め、自分と彼に当てはめてみる。

修吾君が子供を抱っこして…その横には私がいる。


………私もいつか修吾君とそういう日が訪れるといいなぁ。なんて思ったりして。




お弁当もすっかり綺麗に空になり、私達はのんびりした時間を過ごす事にした。

なんか、遊園地とかで遊ぶのも楽しいけれど、こういった自然の中でのんびりするのって気持ちが いいよね。

私は空になったお弁当をしまうと、う〜ん。と大きく伸びをする。

隣りでは修吾君がシートの上で横たわり、気持ち良さそうに目を閉じている。


「修吾君…寝ちゃった?」

「クスクス。そんなすぐに寝れないって」


おかしそうに笑う修吾君と視線が合い、それもそっか。と呟くとこちらも笑みが漏れる。


「でも、本当に気持ちいいね?たまにはこうやってのんびりするのも私は好きだなぁ」

「うん。ほんと気持ちいい。久しぶりだよ、公園なんて来るの」

「クスクス。私も〜」

「木陰で気持ちいいし、美菜の美味しいお弁当も堪能してお腹も膨れたし…眠くなる」

「あははっ。修吾君、半分目が閉じてるぅ」


そう言って笑っていると、修吾君は眠たそうな目で私を見あげて、ちょいちょいっと手招きをする。


ん?何だろ…来いって事かな?


首を傾げながら、ずずっと座ったままの形で修吾君に近寄ると彼は徐に私の体を引き寄せ、 自分の頭を私の膝に乗せてくる。


「ひゃっ!?あっ、あの…しっ、修吾君?」

「美菜の膝枕、すっごい柔らかくて気持ちいい」

「ぶぅっ。それは太ってるという事でしょうか」

「そんな事一言も言ってないでしょ?前にも言ったよね、もっと食べた方がいいって。美菜は気に しすぎなの」

「だってぇ」

「俺は今のままの美菜がすごい好きだから、気にしなくていいって。あぁ…でもマジ気持ちいい。すごくいい夢見られそう」


そう呟きながら本当に気持ち良さそうに再び目を閉じる修吾君。


う…も、もぅ。

そうやって照れちゃう事をサラッと言っちゃうんだからぁ。


彼の言葉に火照った頬を擦りながら、自分の膝枕で気持ち良さそうに目を瞑る姿に笑みを漏らし、修吾君の黒いサラサラの髪に指を通す。


「・・・美菜?」

「ん?」


「キスしよっか」


「はっはい!?だだだっダメだよぉ。外だもん!人も通るもん!!」

「クスクス。じょ〜だん」

「もっもぅ!修吾君!!」


修吾君はクスクス。と笑いながら私の手を取り指を絡めて一緒に自分の胸の上に乗せる。

再び目を閉じる彼を眺めながら、ちょっとだったらしてもよかったかも。と、そんな事を思い、 辺りを確かめてからちょこっとだけ彼の頬に唇を寄せた。


+ + Fin + +



ちょっと春モノ短編を書いてみました(笑)と、言ってもお気づきの方はお気づきですよね?
そう。コチラの作品は随分前に一コマリクで書かせていただいた、「未来予想図」と「膝枕」を合体させたものなんです。
えぇ…完璧手抜き(おぃ)でもちょっぴり春らしく書き換えられたかな?とか思ってるんですが。
高校時代のほのぼの〜。としたお二人をお楽しみいただけましたでしょうか♪
こっからまた「プロポーズ編」などを読んでいただいてもお楽しみいただけるかと(笑)
あー…なんか。まったりだなぁ。(何) H18.3.17 神楽茉莉





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