『Secret Face』より
□ 暑中お見舞い申し上げます♪ 「あ゛ぢぃ…」 新一は、額に浮かぶ汗を拭いながら、自分のTシャツの襟元を摘み、パタパタと扇ぐ。 7月も後半のこの季節。 夏本番はもう目前というのに、梅雨明け宣言は未だに出されず、連日のように続く雨に、へばりつくような湿気。 妙な蒸し暑さに気分も萎える。 姫子は、汗ばんだ頬を手の甲で拭いながら、そんな言葉を吐き出した新一をチロっと睨んだ。 「新一…暑いって思ってるんやったら、この体勢やめてくれへん?」 「あ?なんで?」 「なんで?じゃないやろぉ!ただでさえ、湿気がまとわりついて暑苦しいのに、新一にまで纏わりつかれたら死んでしまうやんかっ!!」 姫子はそう捲くし立て、自分の体に密着している新一の体を向こうへと押しやる。 すると新一は、是が非でも離れるものかと、姫子のウエストラインに腕をまわし、更に体を密着させてきた。 あ…暑苦しい… 「あのなぁ。遠征続きで久し振りに会うっつうのに、そういう言い方ねんじゃねえの?」 「だって、ホンマに暑いねんもん!エアコン壊れてて、明日まで修理に来てもらえないし…。久し振りに会えたのは嬉しいけど、ここまで密着せんでもええんちゃうの?」 「嫌。する」 「しんいちぃ〜…」 「お前ねぇ、どんだけ俺が姫子に会いたかったか分かってっか?試合の為に練習漬けで、遠征先でも声しか聞くことできなくてよ…」 「そりゃっ!私だって、すごく寂しかったよ?新一に会いたくて仕方なかったけど…でも、だけど…だからって…」 なにも、エアコンが効いてない、暑苦しい部屋で、こんなにべったりくっつかなくても…。 そう、言葉を繋げようとしたところで、新一の声がそれに被さる。 「じゃあ、脱ぎゃいいじゃん」 「………は?」 「暑いんだろ?じゃあ、服を脱げばいいじゃん♪少しは涼しくなるんじゃね?」 「え、いや…ちょっと、新一?」 このチャンスを待ってましたと言わんばかりに、言うが先に姫子の服に手を掛ける新一。 その顔は、もうすでに締まりのないニヤけた面に変わっていて。 こういう所はプロになって活躍していても変わってない部分だな、と、内心ため息を漏らす姫子。 新一は、プロのサッカー選手になってから大型新人として取りざたされ、連日のようにブラウン管でその活躍ぶりを報道されていた。 1年半経った今もそれは変わらず…いや、それ以上に、CMだの何だのと、マスメディアに引っ張りだこの新一。 クールな2枚目で通っている新一は、今やスポーツ選手の中では、注目度No,1になっていた。 そんな新一の姿がブラウン管に映るたびに、姫子はいつも複雑な心境に苛まれていた。 それでも、こうして時間を作っては電話をくれたり会いに来てくれる新一は、昔と変わらず自分を愛してくれているんだと、信じている。 そう、誓ってくれたから… だから、こうして昔と変わらず、自分だけに見せてくれる姿が妙に嬉しかったりもする。 新一には決して口に出しては言わないけれど… 「ちょっ、ちょっと!新一!?何やってんのよ、昼間っから!!」 「何やってんのよ、って、今からすんだけど?」 「だから、何を!!」 「エッチ」 「………」 聞くだけ野暮かと思いつつ、気付いた時にはもう既に下着姿にさせられていて。 相変わらずの早業だ。と、半ば感心していると、一気に床に組み敷かれた。 汗ばんだ姫子の背中が、ペタっと気持ち悪く、床に張り付く。 「姫子を抱きたくて、仕方なかったんだって」 「新一…」 久し振りに間近で見る、新一のキリっとした整った顔立ち。 ブラウン管ではない、今ここに現実にいる新一から熱い視線を送られ、吸い込まれるように見つめ返す姫子。 私も、そうだったよ。と、返そうとした姫子の言葉は、次の新一の言葉によって飲み込まれてしまった。 「ずっと姫子を抱けなくて、すんげー堪ってっし、俺。明日までオフもらってっから、いっぱいしような、姫子♪」 この言葉がどれほど姫子にとって恐ろしいものか。 今まで散々、身を持って経験している姫子は、言葉を失うしかなかった。 明日、みんなに暑中見舞いを書こうと思ってたのに… そう思ってはみたものの、やはり姫子とて新一を求めてるワケで。 久し振りに自分の唇に新一を感じると、一気に体が熱く火照り出す。 ぷっくりとした姫子の唇に、新一の薄い唇が重なる。 啄ばむようなキスは、次第に深く貪るようなキスに変わって行く。 「姫子っ…すげー久し振りっ…やっぱ好きだわ、姫子とのキス…」 「んっ…新一っ…ぁっ…私も好きよっ…新一とのキスっ…」 「毎日、こうして姫子とキスしてえ…毎日姫子に触れてえよ…姫子…早く短大卒業して、俺んとこに来いよ…」 「しん…いちっ…」 新一は、少し唇を離すと姫子のクリッとした大きな瞳を真っ直ぐに見つめる。 先ほどの緩んだ表情とは打って変わって、真剣なその眼差しに姫子もジッと彼を見つめ返した。 「俺、頑張ってっから。今のチームのエースの座も、日本代表のエースの座も獲得できたから。姫子の為に、姫子の親父さんに認めてもらえるように…俺、頑張ってっから。だから、早く俺の傍に…」 新一… 「うん…うん。私も早く新一の傍に行きたい…卒業まであと半年。あと、半年だから…待ってて?」 「あぁ、そうだよな…あと、半年の辛抱だよな。それまで我慢できっかな、俺」 クスクス。と、小さく笑う新一に対し、我慢してよ。と、姫子も少し笑う。 「愛してるよ、姫子」 「私も…愛してる」 お互いにそう囁き合い、一糸纏わぬ姿になると、新一は姫子を抱き上げてベッドへと運ぶ。 久々に、直(じか)に感じるお互いの体温。 学生の頃より更に逞しく綺麗な筋肉がついた新一の身体が、姫子の更に女らしく成長した艶やかでハリのある身体を包み込む。 新一は、ゆっくりと時間をかけて姫子の肌に唇を這わせた。 暫く触れていなかった姫子の肌を味わうようにゆっくりと丹念に。 新一の唇が移動する度、強く肌を吸われる度に、姫子の身体が敏感に反応し、彼女の口から甘い吐息が漏れる。 「はぁっん…新一っ…んぁっ…」 「姫子のその声、たまんない。もっと聞かせろよ、その声…」 「しん…いちぃ…っ」 高揚し、ほのかにピンク色に染まった頬。潤んだ大きな瞳。 無意識とはいえ、自分を煽るような姫子のその表情に、一気に新一の気分が高まる。 「ヤバイ…その顔。も…限界…先に姫子をイカせてからって思ったけど、やっぱ無理。一緒にイカせてっ…!!」 「んっ、ああぁぁんっ!」 新一は、めいっぱい熱の篭った自身を、姫子の入り口にあてがうと一気に中を貫く。 途端に新一自身を包み込む、この上なく極上の空間。 そして、姫子も久し振りに感じる新一の存在に、甘い声と共に顎が上がった。 知り尽くした姫子の身体。それでも、毎回違う表情を見せて新一を虜にさせる。 だからバカみたいに姫子を求めてしまうのだけど…。 「ぁっ…っくっ!…すげ…気持ちいっ…」 「あぁっ…いっ…気持ちいいっ…新一っ…あぁんっ…」 「ヤッベ…また、最短記録いきそ…ここ最近ヤッてねえから…も、出そうっ」 「やっ…新一っ…一緒にっ…一緒にイって…」 新一が、早くも自分の限界を感じつつ、色っぽい表情を浮かべながら律動のリズムを早めると、姫子は潤んだ瞳でせがむように新一を見上げてくる。 新一は、それに綺麗な笑みを浮かべて一つ彼女の唇にキスを落とすと、ギュッと姫子の身体を抱きしめ、首元に顔を埋めると掠れた声で耳元に囁きかけた。 「このままっ…中に出させて。姫子の中で…イキたいっ…」 「んっ…いいっ…安全日っ、だから…」 「万が一があってもっ…俺、もう…受け止められっから…姫子は絶対幸せにしてやっから…受け止めて…俺の全部」 「ん。信じてる…新一の事っ。だからっ…いっぱい出して?新一の全部…受け止めるから」 「心配しなくても、いっぱい出そう…しかも、すげー濃いの…」 「………アホ」 姫子から呆れたようなため息を浴びせられ、新一はそれに小さく、クスクス。と、笑って返すと、華奢な姫子の身体を再び強く抱きしめ、激しく腰を打ちつけた。 ベッドが強く軋み、新一の耳元に姫子の吐息交じりの甘い声が吹きかかる。 先ほどまで浮かんでいた汗の粒が、雫となって2人の体を伝って流れ落ちる。 新一の脳が悦によって白く霞み、熱が一気に一点に集中し始めた。 「あっ…マジッ…も、イクっ…姫子っ!!」 「しんいちっ…私もっ…やっ…イっちゃうっ…もっ…ぁんっ…あぁぁぁんっ!!」 「…ぁっ…くぁっ!!」 姫子の強い締め付けに、全てを搾り取られるように、新一は熱いモノを姫子の中に吐き出した。 この瞬間、この上ない幸福感が新一と姫子を包みこむ。 新一は、ぐったりと姫子に預けていた体を起こし、愛しい眼差しを向けながら、彼女の頬を優しく撫でる。 姫子はそれに気持ち良さそうに瞳を一旦閉じてから、真っ直ぐに新一に瞳を向けて、彼女もまた手を伸ばして彼の頬を撫でた。 お互いに、荒く息を吐き出しながら引き寄せられるように重なる唇。 ゆっくりと丹念に、味わうように互いに舌を絡み合わせ、唇を吸いあう。 2人の呼吸が整うまで、ゆっくりと時間をかけて。 「愛してる…姫子」 「私も、愛してる」 「ずっとこうして、姫子の中にいてえよ…」 「んっ…新一…」 チュッと姫子の瞼にキスを落してそう囁くと、彼女の口から色っぽい声が漏れる。 またニヤリと上がる新一の口角。 「色っぽい声出して…このまま第2ラウンドしてって誘ってんの?」 どこから繋げて誘ってると取るのか… 「は?なんで、そうなるのよ…やっ、やあよ。そんなたて続けになんて無理ぃ!」 「無理じゃねえって。いつものことじゃん」 予想できるだけに、その「いつものこと」が恐ろしい… 「そんなっ、いつものことって…久し振りなんだから、ちょっと間隔あけてよ」 「無理。久し振りだからこそ、今までヤれなかった分埋めねえとなぁ?」 そんな事をされたら、本気で壊れて立ち上がれなくなる… 「アホかっ!なに、言うてんのよ!!充分…1回で充分です!!!」 「俺には全然足りねえ」 足りてよ… 「もーっ、嫌やってばぁっ!」 「いっぱい出してって、可愛らしいこと言ってくれたじゃん、姫子♪」 改めて声に出して言わないでよ… 「そっ、それは、今の一回キリの話で…」 「諦めろって。すぐに元気になっちゃうし?」 はぁ、もう… 「やだぁぁっ!!」 このあと、どれだけ新一に愛されたのか…それは、姫子のみぞ知る―――― **暑中お見舞い申し上げます** 暑く、鬱陶しい日々が続いていますが、皆さん、如何お過ごしですか? 私、小暮姫子は、相変わらず、新一と、こんな生活を送っています(笑) 彼が、プロのサッカー選手になってから、会う時間が随分と減って、寂しいときもあるけれど、 こうして久し振りに会うと、大変なことになっちゃうけれど、 いっぱいの愛情を注いでもらって、幸せに過ごす事が出来ています。 私にとって、新一は、なくてはならない存在だから、 これからも、ずっと彼の傍で、彼の支えになれるように頑張ろうと思っています。 きっと、新一もそう願ってくれてるハズだから… 今度お会いする時も、幸せな私たちをお見せ出来るように、 喧嘩は程ほどに(笑)仲良く過ごしていきますね。 皆さんも、どうぞ体調など崩されませんように、お体をご自愛くださいね。 それでは。 また、お会いできる日を楽しみに… え?あのあと、どうなったか、って? それは…もう、ご想像していただけるかと… 小暮 姫子 ++ FIN ++ げほっ、ごほっ…。 久し振りの新一と姫子…お楽しみいただけましたでしょうか(汗) 相変わらずこいつらは…もとい、新一は(涙) 成長しても、成長してない、みたいな(苦笑) 高校を卒業したあとも、仲のいい2人をお楽しみいただけたら嬉しいなぁ、と思いますvv で。 こんな内容の話なので、誰もいらっしゃらないと思いますが… バカップルなこいつらを持ち帰ってやるぞーっ!といってくださる、奇特な方(笑) どうぞ、持ち帰ってやってくださいまし〜。 うはは〜。相変わらずな新一…ごめんちゃい。。。 H18.7.27 神楽茉莉 top |