――――――――――――――――――― 『きみと居る幸せの世界』
筆の先には青。
キャンバスはその筆に命を吹き込まれて世界を作る。
青空の広がる世界。
風が吹き、緑が揺れて、静かに時間は過ぎ、そして平和な世界。
そんな世界の一角を写し取り――本当に時間が流れているような絵。
この人の描くものは、そんな穏やかな世界だ。
* * *
キャンバスには赤。
広いその場所は、少しずつ変化するその色で埋め尽くされている。
夕日の広がる世界。
やがて夜が訪れ、静寂へと変化していく。
平穏な安らぎと休息の世界。
そんな世界の一角を写し取り――穏やかな時間の一部を切り取ったような絵。
彼が描くものは、そんな静かな世界だ。
* * *
橘総輝(たちばな そうき)は新進気鋭――と言うには少し穏やかすぎる気もするが――の画家である。
青い空を写し取り、その中に世界を作っていく独特の画風で若者を中心に人気を博し、30代の若いうちから頭角を現していた。
34になって小さいながらも開いた個展の客入りは上々で、仕事のオファーも増えた。
年内には都内での個展も控え、製作も架橋に入っている。
総輝の黒い髪は、ここしばらく家から出ずろくに手入れもしなかったおかげでざんばらに伸びていて、長いところは肩から先まである。真っ白な肌はひきこもっているおかげでさらに白く、それでも食事だけはちゃんとしているから不健康な色ではない。
黒い目はまっすぐに前だけを見て、その手にあるパレットには、彼が作り上げた青が並ぶ。
それを取り、キャンバスに命を吹き込む筆は迷うことなく動き、それにあわせて時折肩甲骨がシャツの上に浮き上がる。
そんな様子の総輝を何をするでもなくただ見つめているのは、総輝の同居人である羽染晴天(はぞめ せいてん)と言う名の男だ。
赤みの強い茶髪は、総輝と同じく全く手入れをしていないから伸び放題だが、元々の顔立ちがどこぞのファッションモデルかと思わせるような完璧さを見せているので、それがファッションに見えなくもない。
睫毛が長く、同じくひきこもって白い肌だけを見れば、女性のように思えなくもないのだが、全体を取ってみると精悍に見える顔立ちをしている。
彼自身もついさっきまで筆を取っていて、その服にはいくつもの絵の具の汚れがある。
総輝と同じく、彼自身も新進気鋭――こちらは文字通りの意味で――の画家だ。
天才一家と呼ばれる家に生まれた彼は頭角を現すのも早く、28歳と言う若さにして、日本の中では名を馳せる画家のひとりだ。
部屋の中央に設置されたソファーは、絵を描く背中を眺められるように置かれてある。
ふたりのキャンバスは少し離れた位置にあり、描いている間はどちらも一言も発する事なく自分の絵に集中している。
今日の作業を一足先に終わらせた晴天は、その汚れも気にせずそのソファーにどっかりと座り、ただただ絵を描く総輝の姿を眺める事数時間。
ふたりの関係は、ただの同居人と言うと少し語弊がある。
正しく言えば『同棲』であり、その関係を言葉で表すのであれば『恋人』だろう。
その出会いは、短く説明するには複雑でややこしい。
ただ、出会うよりも以前から晴天は総輝に憧れを抱き、総輝は出会ってすぐに晴天に好意を抱いていた。
紆余曲折あり、片方は待ちに待って、もう片方はあっと言う間に流れた時間に苦笑して、告げたのは互いを想う言葉だ。
そうして再開した関係は、その幸せが時折おそろしく感じるほどにあっと言う間にふたりに馴染んでいった。
ただ絵を描ければよかった。
それだけだった互いの世界に、互いの存在が入り込み、そして出来上がった世界は幸せな色。
穏やかに過ぎる時間がこんなにも大切なのだと気づき、怖くもあり、何よりも幸せで幸せでしょうがない。
ただ背中を見つめる。それだけで幸せを感じられるなどとは、想像もしていなかった。
静かにただ筆を動かす音だけが耳に心地よく、幸せだと感じて訪れる安寧が晴天は好きだ。
僅かに動く総輝の背中と、その先で次第に姿を現していく絵。
青い青い、総輝の空。
(……ああ)
綺麗だな。
そんな事を思いながら晴天は穏やかに目を閉じる。
服や手が汚れているのも気にせず、訪れた眠気と戦う事もせずに静かな寝息を立て始めていた。
* * *
ふう、と息を吐き出して総輝は細かく動かしていた筆を止めた。
そうして目の前にある、自分よりも大きなキャンバスに描かれた絵を眺めて、小さく微笑む。
もうすぐこれは完成する。半年以上かけて描いてきたそれの完成が目の前に迫っていると思うと嬉しく、自然と笑みが浮かんでしまう。
そうして無意識に微笑んでから、ふと少し離れた場所で作業している晴天の事を思い出して首をめぐらせると、同じサイズのキャンバスの前に彼の姿はない。
一体どこにと思いながら視線を動かすと、部屋の真ん中にあるソファーの上で服やら顔やら色々なところに絵の具をくっつけたまま目を閉じている彼を見つけた。
「……まったく」
苦笑はするものの、言葉ほど呆れている訳ではないのは、呟く声でわかるだろう。
それから視線をめぐらせて眺めるのは、晴天の描く、総輝の絵とは反対の夕暮れ。
ふたつの絵は対になって完成する。だが空と言うテーマを決めただけで、何を相談した訳でもない。それでもふたりの絵は、ぴたりと隣り合わせると日が沈んでいく様子を表すような、そんな絵になりつつあった。
しばらく絵を眺めた後、総輝は立ち上がって眠る晴天に近づいていく。
「晴天、汚れたままで寝てると取れなくなるよ」
寝ている彼の肩に手をかけて少し揺すると、晴天はうっすらと目を開けてこちらを見た。
「んー?」
生返事なのは、彼がまだ半分眠りの世界に足をつっこんでいるからだろう。
寝ぼけた声は結構かわいいなあと考えつつ、総輝は続けた。
「起きてって言ってるんだよ。そろそろ夕飯作らないと」
両方あるいはどちらかの時間の感覚が正しくあるうちは、必ず決まった時間に食事を取ろうと約束してある。
なぜそんな約束をしたのかと言うと、ふたりとも作業に熱中してしまうと時間もわからないまま没頭してしまうからだ。
制作の時期が重なってしまうと、ふたりそろって時間も忘れて絵を描き続け、そのまま限界がやってきてあやうく死にかけたこともある。
その時は友人が土産持参で訪ねてきてくれたおかげで事なきを得たけれど、毎回毎回そんな奇跡が起きるはずもない。
このままでは危険だと判断した友人に釘をさされつつ、没頭してしまうのは仕方がないとふたりで言い合いながら、先ほどの約束を交わした訳だ。
「ああ……そっか」
うなずきながら、少しかぶりを振って晴天は体を起こした。
まだなんとなくぼおっとしている晴天は、甘えるように総輝の手を取って頬をこすりつけてくる。そんな様子を、ほんの少しだけ総輝はおかしく思って笑った。
以前であれば、立場は逆だったのだ。
子供の総輝を晴天が起こす。十数年前はそうだった。
それが逆転したのが、ほんの数ヶ月前の事。
出会ったのは総輝が16歳の頃。そして晴天は、今と変わらない28歳だった。
18年後の未来から来たと、当時の晴天に言われてもあまり実感はわかなかった。信じられるはずもないと当の本人が笑っていたし、彼はとても――普通だったから。
そう、あまり動じた様子もなく穏やかに笑って絵を描き続ける晴天は、普通だったのだ。焦る事もなく、ただ静かに絵を描いていた。
そして突然に総輝の目の前から消えてしまった。
残ったものは彼にもらった、当時は意味のわからなかった携帯の電話番号とメールアドレスのメモと、スケッチブックと一通の手紙。
それ以外のものは綺麗に――本当に綺麗に文字通り、総輝の絵の中からも晴天は消えていた。
そして待つこと18年。
ふたりが出会う直前まで居た個展の会場で、ふたりは再び出会った。
何も変わらない晴天と、大人になった総輝。
最初のうちは違和感だらけだった。けれど晴天は本当にそのままで――大人になっている総輝への態度も変わらず、すぐにその違和感は霧散した。
そうして数ヶ月。今ではふたりで暮らすほどの仲へと進展したのだ。
「今日何作る?」
のそのそと起き上がった晴天に問われ、ほんの数秒回想に浸っていた総輝は我に返る。
目をぱちくりさせている総輝の様子に晴天が首をかしげ、どうしたのと問いかけてくるけれど、それに対しては左右に頭を振ってなんでもないと答えた。
「鶏肉食べたい。バンバンジーとか」
「じゃ、中華?」
「あんまり凝ったのじゃなくていいよ。あとそれから、先に風呂」
すごいよと示したのは晴天のシャツだ。
赤、橙、黄色、白、それだけでなく、混ざり合って何色かもわからなくなった色もある。
様々な色が飛び散って、これはこれでまあ一種の芸術にも見えなくはないけれど、さすがに顔にもこすり付けてあるようでは、外では奇異の目で見られてしまう。
「晴天がシャワー浴びてる間に買い物行ってくるから」
くすくすと笑いながらそう告げると、晴天は少し驚いたように続けた。
「え、一緒じゃなくて?」
「時間短縮だよ。夕飯は一緒に作ろう?」
総輝は笑って答えながら「俺は大丈夫だからね」と、自分のシャツを示してみせる。
作業中は確かに汚れてもかまわないシャツを着るようにしている。けれど基本的に、総輝は服を汚さないようにする事を心掛けている。
汚れなかった理由には、細かい作業が多かった事もあるけれど、昔から絵を描いている最中に絵の具を飛ばす事がないように総輝は気を付けている。
貧乏と言う訳ではなかったけれど、裕福な家庭と言えるほどでもなかったので、ものは綺麗に使いたかった。
それに対し、自由奔放を絵に描いたような晴天は気ままに筆を動かして絵の具を跳ね上げる。
飛び散った色さえも作品の一部だと言うようなそのスタイルは、総輝とは全く逆に位置するものだけれど、気分を害するどころか晴天に似合いだと思うし――総輝には憧れでもある。
掃除をしている姿が大変そうなので、やっぱり真似はできないとも思うけれど。
「……ん、了解。あと油淋鶏も食いたいからネギよろしく」
理由を述べれば、目の前の男はあっさりと頷いて風呂場に向かう。
「鶏だらけだね」
歩きながらの言葉に言えば、晴天は笑って振り返った。
「今日は鶏デーと言う事で」
いいじゃん、美味しければ。と笑う晴天に「そうだね」と肯定しながら、総輝は彼に続く。風呂場に繋がる洗面台で少し汚れた手を洗い、財布を手に取っていってきますと笑うと、晴天は風呂場に入りながら「いってらっしゃい」とひらひら手を振った。
外に出れば、既に日は傾いてそろそろ暗くなろうとしているところだ。
夕方から夜へのグラデーションはいつも違う色を見せるから面白い。
同じものはひとつとしてない空に魅せられてもう20年以上の時間が過ぎた。それでも全く飽きる気配はない。
そして『飽きないもの』がもうひとつ増えていることに、総輝は知らず知らずのうちに笑みを作った。
晴天は総輝の横で笑っている。
18年、とても長い間ずっと待っていた。
だからこその今が、とても幸せだと総輝は笑う。
* * *
家の近くにあるスーパーは、ありがたいことに24時間営業で、いつでも開いているから助かる。
そこで鶏肉とねぎをカゴに入れて、さて後はどうしようかと野菜売り場周辺でうろうろする事数分。何かサラダでも作ろうかと手を伸ばした後ろから、ひょいと手が現れてもやしの袋を取り上げ、総輝が持っているカゴの中に放り込んだ。
「あ」
振り返れば総輝よりも頭ひとつぶん大きい晴天が、さっぱりした表情で立っている。
「や」
片手を上げて笑った後、総輝の持っているカゴを取り上げた晴天は、ひょいひょいといくつか野菜を取り上げてカゴの中へと放り込んでいく。
ここ最近は絵を描くためにひきこもり生活が続いていたおかげで、冷蔵庫の中は空に近いから、自然とカゴの中はいっぱいになってしまった。
「……早くない?」
だが総輝が告げたのはその事ではなく、晴天が現れたことへの疑問だった。
まだ家から出てさほど時間は経っておらず、それなのにどうしてここに居るんだと首をかしげれば、烏の行水、と彼は笑う。
「やっぱり一緒がいいからさっさと出てきました。以上」
「以上って」
「いいじゃんいいじゃん。それより早く買って家帰ろう。腹減った」
あれもこれもとカゴの中に色々つっこんでいく晴天をしばらく眺めた後、はやくと促されて後を追う。
その後ろ姿を見た総輝は、ほんの一瞬、昔を思い出す。
変わらない背中。変わった自分。ほんの少しだけ変わった――良い意味でだ――ふたりの関係。
そして、消える心配のない背中。
「……うん」
大丈夫。ここに居る。
もう安心していいのだと笑みを浮かべていると、目の前の彼が振り返って、はやくともう一度告げてきた。
「ほら」
足を止めた晴天が、腕を伸ばして手を掴む。
「片手じゃカゴ重くない?」
「ん? 別に」
大丈夫だよと言った晴天は手を離さない。
「迷子にならないようにね」
「……失礼な。それはそっちじゃないか」
「あはは、だいじょーぶ大丈夫。もういなくなったりしないって」
「どうだかね」
そんな会話をしながらふたりして数日分の食料を買い込んで――袋の中身の多くはインスタント食品が占めている――家に戻ると、気合を篭めて腕まくりをした晴天が手馴れた様子で料理を始める。
軽快な音を立てて野菜を刻む晴天の横で、酒と長ネギの青い部分を放り込んだお湯の中に鶏肉を入れて茹でるのが総輝の役目だ。
晴天はあまり総輝に包丁を握らせようとしない。
その理由は明快で、非常にばからしいと総輝は思っている。
一緒に暮らし始めてから一度だけ、総輝は料理をした。その時に包丁でざっくりと手を切ってしまい、その後から総輝は包丁を握らせてもらえなくなったのだ。
画家なのだからと、自分も画家のくせに包丁を取り上げた男は、総輝よりも器用な手つきで料理をこなしているのが、なんだか悔しい。
(そこまで気を使わなくてもいいのに。ていうか、俺のほうが年上のはずなのに)
最初はそりゃあ年下だったけれど。
多少むくれながら大丈夫だと抗議したこともあるけれど、結局笑って流されて料理をさせてもらえないままお手伝いと言う立場で我慢しているのが現状だ。
だが不満はあれど、大事にされている事は知っているから強く文句を言う事はできない。
結局自分も晴天に対して甘いのだろうと吐息しているうちに、あれよあれよと料理は出来上がっていく。自分にはできない手際の良さに関心もしているから、結局は任せてしまったほうがいいとも思うのだが、そこはそれ。
晴天は油淋鶏が食べたいと言っていたけれど、バンバンジーを作ってしまったら結構な量になってしまったから、油淋鶏はまた後日と言う事になった。
「別に明日までなら持つから作ったっていいのに」
「だから、いいってば。明日だって明後日だって、別にいつ何食ったって叱られやしないって」
また作ればいいだろうと言う男は晴れやかな笑みを見せて、名前の通りの性格をしているといつも思う。
だが総輝が気にしたのはその事ではない。
「いや俺が言いたいのはそうじゃなくて」
「ん?」
「いつも晴天、俺のこと優先してばっかりだから」
今日の料理のチョイスにしても、一緒に出かける際の行き先にしても、晴天は総輝を優先するのだ。それが嫌だとは決して言わないけれど、時折無理をしているのではないかと思う事がなくもない。
本当に大丈夫なのかと問えば、総輝の不安をよそに晴天は機嫌がいい時の満面の笑みをうかべるから、総輝は首をかしげた。
「なんで笑うの」
純粋に疑問に思って問えば、だって、と晴天は言う。
「俺の一番は総輝だから。総輝が優先になるのは当たり前なの。どうしてもやりたい事があるなら俺はちゃんと言うだろ? だから変な心配してないで食べる食べる」
はいはい席についてーと促す晴天の行動は、未だ総輝を年下扱いするような部分がある。
実際には総輝の方が4つ年上な訳で、それを考えればおかしいのかもしれないが、どうにも昔の癖が抜けないらしい。
どこか年齢感覚が逆転したままで数ヶ月。
出会って過ごしたあの期間と、大体同じぐらいの期間を過ごした。
それでも最初についてしまった癖はなかなか抜けてくれないらしい。
「はいはい、ありがとう」
それでも変化はあって、総輝は流されて甘やかされるだけでなくなった。
18年待った。その長い時間の中で総輝は大人になり――生まれる小さな棘のような感情を受け流す方法も覚えて、多くの事を知った。
だからこその今だ。
そして待ちに待ったからこそ、今の幸せを噛み締める事ができている。
「今日のは俺の特製だれだから、味の保障はしない」
「そんな事言って自信満々のくせに」
くすくすと笑いながら口に運んだ鶏肉には、晴天特製のたれがかかっている。
普通のバンバンジーのたれをアレンジして、香味野菜を加えたそれは、自信ありげな態度と同じく美味しい。胡麻の味がしつこくなく、ねぎやしょうがの味がそれを邪魔してもいない。
「油淋鶏と合体させてみた」
「やっぱり食べたかったんじゃないか」
食べたければそっち作ればよかったのにと笑って、そこはそれ、と晴天が笑い返す。
そんななんでもないやりとりですら嬉しい。それは晴天も同じだったようだ。
「こう言うのよくない? 一緒に買い物行って、飯作って、食べたいものもはんぶんこして。新婚さん、みたいなね?」
「……うん、いいかもね」
楽しそうに話す晴天の言葉に、小さく笑みを浮かべて頷くと、少しだけ驚いたように「あれ」と晴天は視線を投げてよこした。
「照れないんだ?」
「なんで?」
「いやまあ……総輝さんも大人になったなぁ」
「晴天くんよりも4つ年上ですからね?」
少し意外そうにされるのがおかしくて、笑いながら改めて照れないよと答えた。
「18年も待ったんだから、ご褒美もらったっていいと思わない?」
くすくす笑いながら、総輝は止まっていた箸を動かして食事を再開する。
晴天は少し驚いたような様子を見せた後、何か照れくさそうな表情を浮かべて笑う。
そしておかわりをして、食事中ふたりから笑みが消える事はなかった。
18年も待ったのだ。だからもう少し甘えていたっていいじゃないか。
そうして手に入れたものを大切に大切に育てて。
それから少しだけ、甘ったるいものを求めても悪くはないだろう?
ふたりきりの生活で、これからも笑って絵を描いて過ごしたい。
でも今はもう少しだけ――手に入ったし幸せを実感できる事が欲しいと思う。
だから好きだと告げて、唇を合わせて、そして何より大切に絵を描いて。
互いの一番を分け合って笑うのだ。
「ごちそうさまでした」
最後の一口を終えて、箸をおいて両手を合わせる。
おいしかったよと笑うのを忘れずに。
それが今できる、幸せの表現。
END
Pixivに上げていたものを加筆修正。
変わったんだか変わってないんだかの、微妙な関係性。