その後、俺は町に戻り、ふくよかな町長に解決した旨を伝えた。 そして感謝の言葉を恐縮してしまうほど頂いてしまってから、ヤルツを後にした。 WAIT ナジュは協会まで送ってくれ、報告した後は家まで送ってくれた。 WAIT GB b79.jpg 家に着き、すぐ立ち去ろうとしたナジュを、俺は引きとめた。 WAIT G1 naju.gif 350 「折角だから、世間話の一つでもしていかん?」 「……構わないが」 「じゃあ、こちらにでもどうぞ」 俺はソファーに座り、その横を手で示した。 ナジュは素直にそこに座った。 G1 none 「あのー……」 俺は口を開いた。 「何だ」 「……実は俺たち、昔会った事あるんだけど」 その言葉に対するナジュの反応は意外だった。 「知っている」 「えっ、うそ」 「本当だ。この近くの森にある泉の畔で会ったな」 「……うん」 「その時まだおまえは幼かった」 「ああ。……八歳くらい」 「……道に、迷っていたろう」 「……うん」 俺は親の注意も無視して森の奥まで入り、日が暮れて困り果てた。 危ない魔物はあまり出ない森だったが、夜になると普通の肉食獣が出没する事は有名だった。 そして半泣きになりつつ辿り着いた泉の畔に立っていたナジュに出会った。 「あの時あんた、何してたんだ?」 「さてな。意味など無かっただろう」 美しい泉でも眺めつつ何か感傷に浸っていたのかもしれない。 突っ込むところでもなかったので、そっとしておいた。 「ふうん」 「おまえに突然服の裾を掴まれたのを覚えている。よく私が怖くなかったものだ」 「必死だったし。何も考えてなかったんだと思うけど」 俺はナジュの服の裾を掴み、見下ろされて、最初に思った内容は「怖い」というものではなかった。 「あ、きれいなにーちゃん」とか、そんなものだったろう。 当時の俺は、ばあちゃんの話くらいでしか魔物を知らなかったし、彼に怯える根拠を持ち合わせていなかった。 彼は俺に、無表情で「何だ」と問い掛けてきたように記憶している。 「迷っちゃって……。道を教えてくんない?」 俺がそう言うと、ナジュは陰鬱に笑った。 「道? ……私は精霊だ。そんな人間の作ったものなど、知るはずがない」 「せいれい?」 ばあちゃんの話すら半分くらいしか聞いていなかったバカな俺は、その時「せいれい」を職業の一種と思い込んだ。 「そうなんだ? でも、町に帰るでしょ?」 「……帰るはずがない。わかっているのか。私はおまえ達とは違う生き物だ」 バカな俺は、それでもわかっていなかった。 「同じだよ?」 俺がそう言うと、ナジュが少し驚いた顔をしたものだった。 そこで回想を打ち切り、俺は少し照れ笑いをした。 「……いやあ、バカなガキだったもんで」 「覚えているか? おまえが私に言った言葉」 「色々言った気がするけど」 「同じだよ、というものだ」 「ああ……言いましたねえ」 「おまえが何の気なしにした発言だという事は私も理解していたが」 結局ナジュは俺を町まで送ってくれた。 瞬間移動などに今までお目にかかった事がなかった俺は、大喜びしたものだった。 「すげーすげー」と感激する俺に、ナジュが不可解なものを見る目を向けていた気がした。 ナジュが遠い目をしつつ、呟いた。 「人間と精霊が違う事は当然だ。だが、それを理由にサマラに去られた私は、おまえを奇妙に思うと同時に、何か気に掛かった」 サマラ、は例のお姫様の名前だった。 「そっか……」 まず俺は、彼が自分を覚えていてくれた事が嬉しかった。 次に思ったのは、サマラさんも罪な事をする、だった。 彼女がどういう心理だったのか俺にはわからないが、精霊と人間が違うなんて本来どう考えても当然の事で、その上で愛する事がどうして出来なかったのだろう。 俺はつい、それを言った。 「……俺は昔あんたに確かに『同じだ』なんて無責任な発言したけど、本当は人間と精霊はどう考えたって違う」 「……私もそれはわかっている」 「うん。でも、違うからってわかり合えないわけじゃないだろ? 人間同士だって随分違いは多いけど、それでも成り立つ場合も多い。……えーっと、サマラさんに文句つける訳じゃないけども、人間にも色々いるから、運が悪かったとでも……いやいや、何て言ったらいいのかな」 そこまで言って、ナジュが鬱っぽい顔をしているのに気付いた。 どうやら失言をしたらしい。 しかし上手いフォローも思いつかず、俺はつい口走った。 「た、例えば俺なら、あんたとうまくいくかも」 「……おまえと?」 ナジュが眉を寄せてこちらを見た。 その瞬間、俺は気付き、焦った。 こっちは一応、友達同士、もしくは召喚主と召喚獣、まあそういう普通の関わりについて言ったつもりだったのだが、良く考えると話の流れでは恋愛相手に自分をお勧めしたみたいかもしれなかった。 IF 「あ、う。いや……つまり」 1:2:3 20.scn @ end3.scn