(なんとなく臨時)
日記に書くほどメジャーじゃないので、別ページにしてみました。ちょいと啓蒙活動してみます。絵は仁義なき甲子園にちょこっと。
『怪物伝』を読みたいけど入手できない、という方はお気軽に御連絡ください。



わざわざ目次
『怪物伝』とは…
あらすじ
設定勝手に大検証!
その他の重箱のすみ

[更新:2007.2.8]
「その他の重箱のすみ」と単行本背表紙画像を追加。

『怪物伝』とは…
石川賢が1985年に雑誌『週刊サンケイ別冊BBC』に描いた読みきり漫画39ページ。
大都社発行の単行本『雀鬼-2025』(1986年発行,定価600円)に収録。
巻頭の扉カラーページは『石川賢画集 2 邪神 Acollection works work』に再収録。

『雀鬼-2025』は現在は絶版。探せば古本で購入可能ですが、プレミア価格は必至です。ちなみに私は2500円で購入しました。他の収録作も面白いものばかりなので、復刻や再収録されていないのが謎で仕方ありません。石川バイオレンスが好きなら、絶対に買って損なし!
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で、なんで今『怪物伝』なのかと言いますと、原因はわかりませんが、なぜか局地的ブームなのです。単行本を購入したという人もなんだか結構いらっしゃるようですし! そしてとうとう猛者が出現。本が出るよ...!しかも女性向けです。詳しくは根岸さんのHP『SOUL SQUARE』をチェックだ!


あらすじ
港町・久魔港町にある新設校「久魔港高」にケタ外れの強力バッテリーが出現した。ピッチャーのタケシの投げる豪速球、強打者・キャッチャーであるヒロミツの活躍で、無名の久魔港高は地区予選を快進撃、とうとう決勝の切符を手に入れる。最強のバッテリー...なのだが、2人の仲はとんでもなく悪かった!

ピッチャーの本間竹志(タケシ)は久魔港町を代々仕切ってきた「九竜会」の次男坊。キャッチャーの山崎ヒロミツは九竜会のライバル、久魔港町に進出してきた暴力団「山崎組」の長男。気性の激しいタケシは、家の事情からヒロミツを敵対視し、野球を始めたのも、ヒロミツが野球をやっていたから。そしてピッチャーとして球を投げるのは、その剛球でヒロミツのタマをとっちゃる(=殺す)ため! ヒロミツはうって変わって冷静沈着な性格で、野球を純粋に愛し、甲子園を目指している。タケシの性格をうまく誘導し、野球をものにしているのだった。

残すは地区予選決勝戦のみ! 対戦相手の米山実業は、甲子園出場11回を誇る野球名門校。しかしこの凶悪かつ強力なバッテリーを相手にすることに、激しく焦りを感じていた。一方順調(?)なタケシとヒロミツ。甲子園の切符を目前にしても、タケシはそんなものに興味はないとうそぶく。しかしヒロミツに「お前は野球が好きだ」と指摘されるタケシ。口を開けば「ヒロミツぶっ殺す」と言っているのに、まだとっていないのはなぜか。「お前は知っとるんよ お前の球を受けられるのは わししかおらんコトをな!」。かくて、それぞれは決勝戦前日の夜を迎えるのだが、そこに異変が...!?

※以下ネタバレ。反転させて読んでね。
決勝前夜、タケシは子分の山中と帰路についていた。そこへ現れたのは、明らかに2人を狙った大勢の不良たち。圧倒的数に、タケシと山中は倒れる。そして同じ頃、ヒロミツはタケシの名前で呼び出され、同じく大勢に囲まれてしまうのだった。
翌日、地区予選決勝戦。ヒロミツはろっ骨を3本折った状態でベンチにいた。ヒロミツの取り巻きは、襲撃をタケシの側がやったことと怪んでいるが、ヒロミツはタケシの真っ向な性格を頑に信じている。そこへ遅れて現れたタケシも、包帯グルグル巻き! 一緒にいた山中は、2度と野球のできない体になってしまったと言う。それを見ている対戦相手・米山実業の選手と応援団の面々が、にやりとほくそ笑んでいるのも知らず、タケシは襲撃をヒロミツ側がやったと思い込んでいた。しかしヒロミツはあえて否定せず、自分の怪我も隠し、タケシの怒りを豪速球に変えさせる!
そして試合は0対0のまま、米山実業の攻撃。米山実業の選手の背中に、噛まれた痕を見たヒロミツ。奥歯が1本ないその歯形は、タケシのものに間違い無かった。2人は昨日の襲撃の犯人をようやく知るのだった。最終回、未だ0対0、ここで点を入れれば久魔港高の優勝は決定するのだが...そこに現れた2人の姿を見て、大観衆がどよめく。なんと2人はもろ肌脱ぎ、背中には高校球児にあるまじき刺青が! ヒロミツのバットからは、文句無しの場外ホームラン。点数上では勝ちだが、甲子園行きは刺青によって断たれたわけだ。しかし。「てめーらを1人たりとも甲子園にはいかせん!!」ボコボコにされる米山実業! 球場は前代未聞、阿鼻叫喚のの大乱闘になるのだった...。
そしてこう続く。「その後、久魔港校も米山実業も 甲子園に甲子園に出場した話は聞かない」「甲子園の夏期大会がはじまる頃、刑務所内の野球チームに 強力なバッテリーが出現したという話を聞いた」「うお〜ヒロミツ ぶっ殺したるで〜!!」「おお!きやがれ!!」

完。


設定勝手に大検証!
何しろ1話こっきりしかないこの漫画。重箱の隅をつついてつついてつつきまくりじゃーい!(つつかざるを得ないということです。)

舞台:久魔港町
・古い町並みを所々に残す、落ちついた人口15000の港町。瓦屋根の家屋が多い。
・海の反対側は山。
・町の中央を久魔川が流れる。上流を向いて川の左手にタケシ宅、右手にヒロミツ宅。
・「智弁学園」という学校が県内にあるらしいので、もしかしたら和歌山県。でも言葉は広島風?
・学校からタケシ宅の間には繁華街があるらしい。
舞台:久魔港高
・3年前に出来たばかりの新設校。生徒数は520人。
・これといって特徴がない(=おそらく普通高校)。
・久魔港町の山際にある。3階か4階建て。
・男子生徒の姿しかないので、もしかしたら男子高。
・校長、野球部監督は意外にしたたか者。
・野球部のユニフォームは、扉ページのカラーリングで言うと白地に緑と赤のライン。クリスマスっぽいぞ。
タケシ
・本間竹志。高校3年生、野球部所属。背番号1、ポジションはピッチャー。背中の彫り物は大魔神。
・球速は155キロ。キャッチャーミットがすぐだめになる。石灯籠もぶっ壊す。
・性格は荒々しいが、黙って凄みをきかせるのもうまい。
・極道を愛していて、家を継ぐつもりでいる。
・家のことを原因に、ヒロミツをライバル視している。いつか殺すと明言している。
・組の者には「タケシボン」、メンバーには「タケシさん」と呼ばれている。
・体格はいいが、ヒロミツより背は低い。
・左上の奥歯が無い。子供の頃、ヒロミツとの喧嘩で抜けてしまった。
・野球のユニフォームにゲタ、ドテラのいでたちが印象的。
・野球を始めたのは、ヒロミツが野球を始めたから。野球自体には興味がないと言うが、本心はそうでもないらしい。
・友達(子分)思いのところもある。
・家は久魔港町を昔から仕切ってきたテキ屋協会「九竜会」(看板の表記は「九龍会」)。自宅は敷地の広い、旧家らしい日本家屋。
・父親(竹蔵)はタケシと違って温厚な印象。タケシの野球を良く思っているらしい。
・母親は登場せず。
・タケシは次男だが、長男の姿は見えない。父親のセリフ「お前がその気なら、この九竜会もわしの代で終わりにしてもええと思っとる」からすると、長男は跡継ぎの頭数に入っていないようだ。つまり、長男は出奔したか死んだか。ムショは帰って来る可能性があるので、違うと思われる。
ヒロミツ
・山崎ヒロミツ。高校3年生、野球部所属。背番号2、ポジションはキャッチャー。背中の彫り物はバットを持った阿形の金剛力士。
・強打者。地区予選準決勝だけで6打点(うちホームラン3本)。スコアボードをぶっ壊す。
・性格は冷静沈着で古風。キャッチャーだけあって頭が良く、タケシより1枚上手。
・甲子園に行くのは子供の頃からの夢。純粋に甲子園を目指している。
・甲子園に行くまでの間は、普通の高校生らしく過ごすらしい。甲子園に行ったあとは家を継ぐつもりでいる。
・タケシを敵対視はしていない。むしろよく理解している。
・メンバーには「山崎さん」と呼ばれている。
・背が高く、体格もいい。アゴが長い。
・どう見ても高校生に見えない(老けてる)。
・扉ページでは顎にヒゲ?
・居合いか剣道をやっている?
・私服は和服。自宅で日本刀の手入れをしたりする。
・家は久魔港町にあとから入ってきた広域暴力団「山崎組」。自宅は3階建てのビル。
・父親(十吉)はヒロミツと違って太っており、都会ヤクザっぽい気性の荒い印象。九竜会を目の敵にしている。ヒロミツの野球にあまり興味はないようだが、決勝戦では応援に来ている。ちょっとお調子者っぽい。
・母親は登場せず。
・兄弟がいるかどうかは不明。
取り巻き(他のメンバー)
・タケシ派、ヒロミツ派に分かれていて、同じチーム内なのに仲が悪い。
・タケシ派には山中、猫目のやつ、岩石顔のやつなど。5,6人。
・ヒロミツ派にはサングラスのやつ、デブのやつなど。5,6人。
米山実業
・地区予選の決勝戦での対戦チーム。
・甲子園出場回数11回の野球名門校。
・現行のチームは弱小と言われているらしい。なのに決勝進出とは...?
・県の教育委員会、高野連がウラにいるらしい。
・キャプテン(7番山屋?)は眉毛と睫の境界がない。
作中の時期
・作中の時期について。甲子園と言えば、春か夏。一体どちらなのか。推察する要素は下記。

(1)監督のセリフで「この大会が終われば、あの2人も卒業」とあるので、これからすると夏と思われる(3年生が最後に出場できるのは普通、夏の甲子園)。
(2)寒い季節に思えるポイント。タケシのユニフォームにドテラという格好、竹蔵や新聞記者の格好、他の人物も長袖。最初の試合シーンで、ベンチの扇風機が稼動していない。
(3)夏に思えるポイント。入道雲がよく描かれている(しかしセミの声などは描写されていない)。街灯に蛾がたかっている。
(※最後の「甲子園の夏期大会が始まる頃...」は、翌年の夏のことかもしれないので、ここでは不確定すぎるので挙げない。)

(1)についてですが、春のセンバツというのは甲子園での大会日程が3月末〜4月頭なのが普通です。すなわち3年生は3月末で卒業扱いなので、出場していたらおかしいわけです(留年すればアリなのか?)。じゃあ、今3年生になったという意味では...というと、地区予選は2月〜3月なので、その場合2人は「2年生」と書かれていなければなりません。監督のセリフもおかしくなってきます。
そこで甲子園と言えば?と問うと、一般人は「夏」と思うでしょう。(2)(3)の絵的な部分も、夏とも春とも言い難いし、監督のセリフの件もあります。タケシのドテラなんてのは、描きたかったポイントだったので、夏だけどあえて描いちゃったんじゃないかしらと思えます。そこで私の予想は夏! 地区予選なので7月頃と推察します。「甲子園の夏期大会が始まる頃...」は8月の上旬、少年刑務所に即入ったということで(2人とも怪我治ってないのに...)。いろいろおかしい?いいんだよ、マンガマンガ!
その他
・女性の姿が全く無い漫画だが、よく見るとこのコマの左右にいる? あとは「奴」とか「威」という文字内にしか女の姿は無い。
・よく見ると、目玉のおやじがいるぞ!
・2人が入る少年刑務所は「甲子園刑務所」。兵庫県?


その他の重箱のすみ
・『週刊サンケイ別冊BBC』とはなんぞや
掲載誌『週刊サンケイ別冊BBC』とはいったいどんな雑誌だったのでしょうか。
『怪物伝』巻末の初出一覧によると「週刊サンケイ別冊BBC 1985年11月3日号」。画集『邪神』巻末によると「週刊サンケイ別冊BBC/産経新聞社」とあります。
『週刊サンケイ』(産業経済新聞社)は現『SPA!』(扶桑社)です。(扶桑社はフジサンケイグループの出版社。)『別冊週刊サンケイ 』という雑誌が発行されていましたが、それとは違と思われます。週刊サンケイは増刊をよく出しているようなので、その一種ではないかと..。『カラテ地獄変』などは雑誌形態の上、「週刊サンケイ別冊」という冠で出ているようです。
国会図書館の検索をかけてみましたが、それらしいものはヒットせずでした。大宅壮一文庫には週刊サンケイ自体が無いみたい?
というわけで謎の雑誌です(結局それかい)。BBCって何の略なんでしょう(ベースボールなんとか..と思ったけど、しょっぱなこの漫画じゃ詐欺だ/笑)。他にどんなものが掲載されていたのか、そもそも漫画雑誌なのか。漫画雑誌だとしたら、他の作者の作品で単行本収録されているものは無いものか。扉はカラーだけど、次の3ページもカラーだったのか、2色だったのか。もしかして巻頭掲載だったのか、センターだったのか。イメージではB5判で中とじですが、その辺の判型も不明です。疑問は尽きません。
同時期の週刊サンケイに広告が載っている可能性はあると思います。国会図書館...行くのか。




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