けんかをやめて≪黒沢編≫

 

 

現在レコーディング合宿中。

村上と酒井が不穏な雰囲気。

「早く詞、仕上げろよ!できてねぇの、お前だけだろが!」
「わかってますよ!もうちょっと待ってくださいよ!」

いい作品をファンのみんなに届けたいという気持ちの表れというのはよくわかるけどさ・・・
両者掴み掛からん勢いで言い合っている。

安岡が村上の腕を、北山が酒井の腕を掴み、ふたりを引き離そうと必死になっている。

この空気、変えなきゃ・・・

え〜い、こうなったら!

 

 

村上、酒井の間に割って入る。

俺「せこんだぁ〜ぅ(セコンドアウト)、せこんだぁ〜ぅ。」
北山・安岡をそれぞれ対角線の部屋の隅へ追いやる。

俺「れでぃ〜い、ふぁ〜いっ!」

『カ〜ン!』←ペンで空き缶を叩く

村「お前なぁ!」

(実況アナ:俺)「おっと先に攻撃を仕掛けたのは村上!酒井の胸倉を掴む!」

酒「なぁんすか!?」

(実況アナ:俺)「一方酒井はまだ手を出す様子はありません。相手の出方を伺っております。」

村「みんなちゃんと期限に仕上げてきてんだよ!それなのにお前は徹夜でゲームして遅刻して来やがって!」

(実況アナ:俺)「村上が間合いを詰め、酒井を一気にコーナーへ追い込んだ!」

酒「たしかに気分転換にゲームはやりましたよ!けど遅刻したのはそれが原因じゃありませんよ!」

(実況アナ:俺)「酒井も黙ってはいません!村上の手を払い除け、しっかりディフェンスっ!」

村「気分転換だと!?お前の場合、気分転換の域、超えてんだよ!ただ遊んでるだけじゃねぇか!」

俺「ブレイクっ!」

(実況アナ:俺)「おっと、ここでブレイクが入ります。リングのセンターからリスタートです。」←村上・酒井を部屋の中央へ連れ戻す

 

俺「ふぁいっ!」

(実況アナ:俺)「試合再開です。」

酒「あ〜、もう!頭の中ではだいたい出来上がってるんすよ!アナタとこんなことしてる時間がもったいないって言ってるんです!」

(実況アナ:俺)「おっと、酒井、反撃に出ました!村上をロープ際まで追い込む!」

村「だいたい出来上がった分だけでもいいから早くカタチにしろよ!」

(実況アナ:俺)「村上、タックルで酒井を倒した!素早くマウントポジションをとりました!これは有利!」

安「テツ!やめなって!」
北「ふたりとも落ち着いて!」

(実況アナ:俺)「セコンドから盛んに指示が飛びます。」

 

俺「すとっぷ!どんとむーぶ!」

(実況アナ:俺)「ここでドントムーブがかかりました。リングの中央で村上のマウントの状態から再開です。」←馬乗り状態の村上を酒井の上から退かせ、酒井を立たせる。ふたりを部屋の中央へ連れ戻し、酒井を床に寝かせて村上を再び馬乗りの状態にさせる。

俺「ふぁいっ!」

(実況アナ:俺)「試合が再開されます。酒井としてはなんとか形勢逆転させたいところです。」

酒「ちょっとリーダーっ!退いてよ!重いだろうにっ!」

(実況アナ:俺)「おっと!酒井の足が抜け、マウントからガードポジションへ!これで酒井も下から攻めやすくなります!腕を狙いにいくか?!あっ、試合時間残りわずかっ!」

 

『カ〜ン!』←ペンで空き缶を叩く

(実況アナ:俺)「ここで試合終了〜!制限時間内に決着がつきませんでした!判定に入ります!」

俺「北山〜、安岡〜。これどっちの言い分が正しいと思う?」

北「ん〜・・・てっちゃんの言い分ももっとものような・・・」
安「けどあそこまで言わなくてもいいよねぇ〜」

俺「ジャッジ北山・・・“村上”っ!
ジャッジ安岡・・・“酒井”っ!
村上が先に手ぇ出したから・・・ジャッジ黒沢・・・・・・“酒井”っ!
勝者、酒井雄二っ!」←酒井の片腕を掴んで高々く掲げ、酒井を指差す

(BGM:俺)「♪ふぁ〜、ふぁふぁふぁ〜、ふぁ〜ふぁ〜ふぁあ〜ふぁあ〜・・・」←PRIDE勝利者のテーマ熱唱

 

「黒ポン・・・?」
安岡が俺の顔を覗き込んで声を掛けてくる。

「♪ふぁ〜・・・ん、何?」
「喧嘩、止まったみたい・・・」
「あっそ?じゃちょっとコンビニ行ってくる。・・・お前ら全員・・・『男』だよ。」

呆然と立ち尽くす4人に親指を立て、俺は部屋を後にした。

 

 


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