【オマケ】
過去へタイムスリップしてしまった、あの出来事は夢だったのかな〜・・・なんて思い始めていたある日の、ある歌番組の収録でのことだ。
トーク中、話題はゴスペラーズの結成秘話へと突入した。
「リーダーの村上さんと黒沢さんが同じクラスでいらっしゃって・・・?」
「えぇ、文化祭でアカペラやりたいなって思ってメンバー集めたんですけど、どうしてもひとり足りなくてね〜・・・
そんな時に同じクラスの黒須ってヤツにね、学校の事務員さんに歌うまい人がいるって紹介されて、」
「ぶっ・・・!」
わわわわわ!やっぱりあれは夢じゃなかったんだ!
「ど、どうしたんですか安岡さん?!」
「い、いえっ・・・何も!大丈夫ですっ、・・・つ、続けてくださいっ・・・」
必死にその場を取り繕い、心配する司会者に先を促した。
「はぁ・・・じゃあ村上さん、続きを・・・」
「はい。・・・でね、その事務員さんに頼み込んでメンバーに入ってもらってたんですよ。
『ふさわしいメンバーが見つかるまで』っていう条件つきだったんすけど。」
「事務員さんと歌ってたんですか。」
「えぇ、その人もうまかったんですけどぉ、黒沢がね、俺らの練習の歌聴いて完璧に覚えてたっていうのをあとから知ってね。
事務員さんに抜けてもらって、黒沢をメンバーに入れることにしたんですよ。」
テツの話を受けて、今度は黒ぽんが語り出した。
「文化祭の前に美術室で絵を描いてたら、みんなの歌う声が聞こえてきてね〜、しかもそれがすっごいうまくて。
もっとちゃんと聴きたいと思ったから、よく聞こえる場所を探して、校舎の裏で毎日歌聴きながら絵を描いてたんですよ。
その時にねぇ、上の教室から舞台のセットが落ちてきてぇ〜、」
「え、セット?!セットが落ちてきたんですか?!」
話がオオゴトな展開になり、司会者もかなり驚いている。
「幸いベニヤ板とか軽いモノばかりだったんで打撲程度で済んだんですけど、その時に村上たちが助け出して保健室に運んでくれたんですよ。」
「その後、保健室で黒沢が歌ったのを聴いて。」
「いつも歌聴いてるよって伝えるためには歌うのが手っ取り早いなと思ってね、歌ってみたんですよ。」
「それ聴いてぇ、『こいつにはゼッタイにメンバーに入ってもらおう』って思ったんすよ。」
「歌った時はまさか自分が入ることになるとは思ってなかったですよぉ〜。まぁ、半分脅しみたいなもんですけど。」
「やっぱね、・・・おかしいじゃないですか、生徒のために開かれる『文化祭』なのに、4人グループで『生徒・生徒・生徒・事務員さん』って並び。
やっぱそこは『全員生徒』でないとね。」
嗚呼、俺が見てきたとおりの・・・俺が変えてしまったとおりの過去だよ・・・
酒井さんも北山さんもおかしいなんて言い出さないし、観覧しているファンのみんなも普通に話に聞き入っている。
どうやら、あの過去は決定的なモノになってしまった・・・ようだ・・・
うわぁ〜・・・もう、カラダが融(と)けちゃうんじゃないかと思うほどの大量の汗が全身から吹き出してきて、全く止まる様相を見せないんですけど〜!?
「それで文化祭で歌ったら客席が、拍手喝采で、歓声とかもものすごくてね。
そのうえ、サッカー部の顧問の先生にフルーツもらったり、別の事務員さんにプルートのぬいぐるみと音叉をもらっちゃって。」
「プルートかわいいよねぇ〜♪」
は?!!
・・・プルート?!・・・音叉?!
ままままま、まさか・・・
思いつく人物の方に視線を向けると・・・その張本人は、俺に対して「してやったり」な目配せをしてグッと親指を立てたのだった・・・。
【end!】
アトガキ。
もうひとりの彼も過去に行ったようですが、うまいことやってたようです。
しかもわざと過去を変える余裕もあったりして。
それはそうと、もらったのは桃なのかメロンなのか、それが問題だ。