暗躍の再会

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それはある快晴の朝の事。
クロードは通い慣れた通学路を全力疾走していた。
その訳は、
「遅刻する〜!!」
・・・入学式の時といいほんっとうによく遅刻するな。
だがいくら特技だからって、毎度実行する事ないだろうに。



(今回遅刻したら・・・まずい!まずすぎる!!)
学園新記録を作る気などさらさらないクロードは、点滅し始めた信号を大急ぎで渡った。
ここまでくれば学校は目と鼻の先。
時間もまだ少し残っている。
ほっと息を付いた、その時。



「あいたっ!」
「へっ?」



振り向くと、今まさにわたってきた横断歩道に子供が倒れている。
信号はすでに赤。
足を痛めたのかその子供は起き上がらない。
けたたましいクラクションを鳴らしながら車が迫っていた。
子供にぶつかるまでほんの少し。
それらすべてがまるでコマ送りのように映る。
「危ない!」
「きゃぁ――!!」
別の誰かの叫ぶ声が共鳴するように頭に響く。
つられてクロードも思わず叫ぼうとする。
―――――だがそれよりも先に彼の体は車道に飛び出していた。







「痛ったぁ・・・」
後頭部に走る鮮明な痛み。
目の前でちかちかと星が光る。
だがそれのお蔭で今の状況が理解できた。
ダンプにはねられそうになっていた子供を助け出そうとしていた事に・・・
「っ!!」
慌てて腕の中の子供を揺すると微かに身じろぎをした。
生きている。
ほぅっと安堵の息を吐く。
と、とたんに周りを人で埋め尽くされた。
「大丈夫!?」
「よかったぁ、あなた達無事なのね」
「すっごぉい、君アクション俳優みたいだったわぁ」
「え、いや、あのぉ・・・」
口々に浴びせられる賞賛の声。
それにどう受け答えすればいいのか、クロードが戸惑っている時。
キ〜ンコ〜ンカァ〜ンコォ〜ン・・・
妙に間延びした、そして聞きなれたあの音は・・・
「嗚呼嗚呼ぁ゛ぁ゛ぁ゛〜〜〜!!!」
いきなり叫びだしたクロードに人垣が引いた。
「学校!」
・・・すっぱり忘れていたのか、最初の目的。
「あ、あの、この子お願いします」
「え、ちょっと、キミ!」
持っていた子供を近くの男性に渡し、クロードは一目散に走り出した。
渡された方は唖然とその後ろ姿を目で追うのみ。


・・・〜ンコォ〜ンカァ〜ンコ〜ン
「嗚呼ああああああ〜!!!」

鳴り止んだチャイムと重なるように、緑の学園都市にワイヤーロープを引きちぎったような少年の悲鳴が轟いた・・・。


はい、新記録樹立決定。











時は飛んでその日の放課後。
時間には間に合わなかったものの、通学途中の人命救助が教師に伝わったのか、今回はお咎め無し、という事になったのだ。
・・・しかしなぁ、ちょうど出席執り終わったところへ頭から血流しながら鬼気迫る表情で駆け込んでこられちゃ誰だって『あなた遅刻よ♪』なんていえんだろう。
おまけにその後隣のクラスからプリシスやってくるは、どこから聞きつけたのかディアスまでやってくるはで、てんで授業にならなかったし。

「ねえクロード、本当に大丈夫なの?」
レナが心配そうに訊く。
「平気だよ、これくらい」
笑った拍子にぴりりと傷口に走る痛みにクロードは顔を顰めた。
「ああ、無茶するから・・・」
おろおろするアシュトンにクロードはもう一度、大丈夫だよと言った。

それから又数十分後。
クロードは職員室の扉の前にいた。
帰るとき寄るようにと担任に言われていたのだ。
(うう・・・やっぱり緊張するな・・・)
職員室にいい思い出はないらしい。
クロードは深呼吸一つするとゆっくりと扉を開けた。
「失礼します。用事って何・・・」



「これを届けに来たんだよ」



語尾にソプラノが重なる。
クロードははっと声のする方を向いた。
そこにはこの場に似つかわしくない・・・つまり白衣の少年がいた。

何故こんな所に子供がいる?
クロードがひたすら目を点にしていると、
「はい、これ」
少年が何かを手渡した。
それはクロードにとって見慣れた・・・
「財布!」
「今朝落っことしたんだよ。気づかなかったの?」
呆れ気味の少年の言葉にクロードは記憶の糸を手繰り寄せた。
「あ、そういや、今朝人を助けたっけ!」
・・・あんな一歩間違えたらあの世行きな貴重体験忘れるなよ。
それとも事故のショックで一時記憶障害にでもなったか?
「一応御礼を言っておこうと思ってねー」
「そっかぁ、わざわざ有難う」
にっこり笑顔で少年の頭を撫でる。
「・・・」
顔が赤いぞ少年。
子供まで惹きつけるとはさすがだな、クロード(謎)
「じゃ、もう用事無いみたいだから帰るね」
「え、ちょっと」
「じゃあね、財布有難う!」
そういうとクロードは足早に職員室を出て行った。



そしてそれから又数日後の事。
クロードは高校に隣接している大学の学部内にいた。
担任からある書類を届けるよう頼まれたのだ。
勝手に生徒使うな。
「大学って結構広いね」
アシュトンが言う。
書類を届けるよう言われたのはクロードだけなのにアシュトンまで居るのは何故か?
・・・細かい事は気にしない。
「そうだねぇ・・・あ、ここだよ」
クロードは目の前のドアを開けた。
「失礼しまーす」
「クロードお兄ちゃんっ!」
聞き覚えのある声と共に、少年がクロードに飛びついてきた。
身長差を利用しての腰タックル。
・・・いいなぁ。
「な、な、な」
突然の事にアシュトンがどもっていると、
「君はあのときの・・・」
おお、覚えてたのかクロード。珍しく。
「あ、書類ってこれだね、有難う。お兄ちゃん」
にーっこり笑って書類を受け取る少年。
「何で君がココに・・・?」
「嫌だなぁ、ココは僕の研究室だよ」
「・・・・・・はい?」
わが耳を疑い聞き返すクロード。
「だからココは僕の研究室なんだって。表に書いてなかった?『責任者・レオン・D・S・ゲーステ』って」
・・・見てない。
大体あんたの名前も知らなかったのにどうやって確認できる。
「ま、とにかく有難う。今お茶持ってくるからゆっくりしといてね!」
白衣を翻し部屋の奥へと消えるレオン。
ゆっくりならもうさっきからしてるぞ。
・・・二人とも魂抜かれたようにドア前で突っ立ったまんまだし。

「ふふふ〜」
上機嫌で紅茶を入れるレオン。
どうでもいいがビーカーに入れるな、ビーカーに。
(まずは第一段階終了だね)
やっぱり今回のお使いはお前が仕組んだのか。
公共機関を私用に使うな。
(さて、これからどうしようか・・・)

うっすら暗い部屋の中。小さな天才は内心ほくそえんでいた。
こいつ絶対悪魔の羽根生えてるよ・・・

あとがき

学園シリーズ第四弾!
前にも増して読みづらさUP!!(爽)
そしてレオン登場です。
しっかし今回は何が主体なのかよくわからないなぁ。
大学の様子もよく知らないし。
ディアスもプリシスもレナもちょっとしか出てこないし・・・
次回はいっぱい出せるようにがんばります!

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