イタズラ

≫戻る≪

「おい」
と、呼ばれて。
「なに?」
と、振り向けば。
「うッ……」
唇を暖かいものが塞ぐ。
「んぅっ!?」
そのまま口の中を思うさま蹂躙されて。
「あ、……はぁ……」
離れる頃にはもうそのままへたり込みそうなくらい足に力が入らなくて、ぎゅっと、相手の背に手を回す。
「なに……いきなり……」
「俺がしたくなったからしたんだ。文句あるのか、阿呆」
腰砕けにさせられた上に“阿呆”呼ばわり。
理不尽だ。
非常に理不尽だ。
文句なら山のようにあるけれど、言う前にまた唇が下りてきて。
「ふっ……ぅん……」
罵倒も罵りも、とろとろに溶けてしまった。















だいたいアルベルのキスはいつも突然だ。
戦闘が終わった後だとか、眠る前だとか、食事中だとか。
それこそ人前、街角、所構わず。
ひどい時など、夜中息苦しさに目を開けたらアルベルの顔がアップに迫っていた、何てこともあった。
何度かその事で口論になり、
「人前でサカるな、ばかぁっ!!」
と怒っても、
「お前が悪い」
という訳のわからない一言で一蹴され、その後お決まりのように押し倒される。
正直やりたいようにやられっぱなしは業腹。
だから。
これからしようとしている事はちょっとした意趣返し。
普段やられている事に比べれば実に可愛らしいイタズラ、なのだ。


















「アルベル」
「なんだ」
部下と何やら話しこんでいたアルベルを見つけて、絶好のチャンスと声をかける。
「やけに機嫌がいいじゃねぇか、きもちわりぃ」
「気のせいじゃないか?」
一瞬ばれたかとヒヤリとしたが、アルベルは鼻を鳴らしただけで、
「ほら、とっとと失せろ。俺は今忙しいんだよ」
とつれなく袖にした。
その態度にムッとしたものの、これから起こす事を考えれば別になんてことない。
今のも含めてお返ししてやる。
フェイトはなるだけ普段の声音で、
「アルベル」
「っせえな。いったいな……」
無愛想な言葉が途切れる。
当然だ。
言葉を紡ごうにもフェイトに唇を塞がれているのだから。
それは普段アルベルがしているような濃密なものではなく、ただ唇と唇を重ねるだけの軽いものだった。
唇が触れ合ってたっぷり三分。
やっと離れたフェイトは唖然としているアルベルと、顎を落とさんばかりに驚いている部下の姿を見て内心ほくそえんだ。
「いつものお返しだよ」
ペロリ。
舌を出していたずらそうに笑う。
普段の自分の羞恥を思い知ったかという達成感で非常に満足していた。
が。
終わってまた三分も立つと、今度は固まったままのアルベルに不安を抱き始めてしまった。
「えと……アルベル。大丈夫?」
ひらひらと目の前で手を振る。
焦点のあっていない眼が、やっと普段の色を取り戻す。
と。
「わぁっ!?」
唐突に浮遊の感覚。
膝裏と背だけを支えられるなんとも心もとない状態でアルベルに抱きかかえられた。
「ちょ、あ、アルベル!?」
「行くぞ」
「ど、ドコへっ!?」
「いっとくが誘ったのは貴様だからな。いまさら泣き言は言うなよ」
「何だよ、誘うって!おい、コラ、放せ――――!!」
今度は上司の突然な行動に呆気にとられている部下を残し、アルベルはダッシュで部屋へ向う。
それから丸一日、二人が部屋から出てくることはなかった。



















その後フェイトは悟る。
下手な仕返しは――――己の身に倍になって降りかかるのだ、と。

あとがき

やたら甘いバカップルものです。
ええ、アルフェイでよもやこんなん書く羽目になるなんざ思っても見なかったです。
ただ冒頭の強引チューが書きたくって、この話書いたようなもんです。
所要時間はネタだしも含めて三十分とかかっちゃいません。
ボンノーの賜物ですね(爆)

≫戻る≪