BOARDING
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「じゃあね」と手を振る君の、後姿の幻影≪まぼろし≫ばかり、いつまでたっても消えてはくれない。 静かな空気。 木漏れ日。木の匂い。 神護の森は、いつも穏やかに私を迎えてくれる。 ここだけは時間が止まったみたい。 けれど二ヶ月前咲きかけていた花が萎れているのを見て、確実に時間は経っているのだと知る。 二ヶ月前――クロードは自分の星に帰っていった。 そしてここは、最初と最後にクロードと話をした場所。 「僕、地球に帰るよ」 初めて出会った場所に腰掛けてそう言われた時、「ああ、やっぱり」って思った。 やっぱり、クロードも帰るんだって。 予感はしてた。 セリーヌさんも、プリシスも、アシュトンも、レオンも、チサトさんも、ノエルさんも、それぞれ自分たちの居場所に帰っていった。 でもクロードは、冒険が終わってもしばらくアーリア村にいた。 みんながすぐ帰っていったのに関わらず。 だから本当は、ほんのちょっと心の隅で、「クロードはずっとここにいるんじゃないか」なんて期待してた。 でも、そんな事ないよね。 クロードには他にちゃんと居場所があるんだから。 分かっていたの。ちゃんと、頭では。 「プリシスから連絡があってね、宇宙船が完成したから帰れるって」 「そう・・・・・・」 思わずうつむく。 おめでとうって言わなきゃいけないのに。 「・・・・・・」 言葉が詰まってうまく出てきてくれない。 「あ、の・・・・・・」 「レナ」 呼ぶ声に、少し上を向く。 けれど微笑むクロードの顔が、ちゃんと見れない。 「今までありがとう」 クロードはそう言った。 その言葉が頭の中でぼやけて。 「君がいたから、僕は今までやってこれたんだと思う」 繰り返す。 「本当にありがとう」 何度も何度も。 「レナ・・・・・・?」 滲むクロードの顔が、一瞬近づいて。 「・・・ッ!」 私はクロードに抱きついていた。 「うっ・・・・・・ふぇ・・・・・・ヒクッ・・・・・・」 泣き出す私を、クロードは少し戸惑いながら抱きしめてくれた。 抱きしめてくれた腕の強さを、体の温かさを、同じリズムを刻む鼓動を、私はきっと一生忘れない。 「クロード・・・クロード・・・・・・」 「・・・・・・レナ」 ずっと忘れないから。 絶対、ずっと・・・・・・ 「じゃあね」 ――――次の日、クロードを乗せた宇宙船は遠い空へ旅立っていった。 「はぁ・・・・・・」 知らずにこぼれるため息。 ここで私はクロードに出会って、ここでクロードと離れた。 彼に出会ったのが奇跡だとしたら、もう一度奇跡が起こってくれないかな? 「・・・・・・バカみたい」 絶対そんな事ない。 彼はもう帰ってしまったんだから。 絶対。絶対。絶対? もう本当に、会えないのかな・・・・・・ 「・・・逢いたいな」 なんて事を考えていたせいかもしれない。 足を踏み入れたとたん立ち止まる。 彼に助けてもらった場所。 大きな木を見上げる後姿。 見慣れない服装。 けれどそれは二ヶ月前、見送ったはずの後姿に似すぎていた。 ゆっくりと振り向く。 光りに邪魔されて顔が見えない。 こちらにゆっくりと近づいてくる、その姿は。 「・・・クロード?」 私は、きっと今夢を見ているんだ。 だってありえない。 クロードは、帰ったんだもの。 だから、これはクロードじゃない。 ないはず、なのに。 「レナ」 その幻は、やけにリアルに私の名前を呼んだ。 懐かしい響きが耳朶を打つ。 微笑む姿は二ヶ月前と同じ。 私は近づくのを躊躇った。 触れれば消えてしまいそうな気がして・・・・・・ 「何で・・・・・・」 それがやっと出た言葉。 何に対する問いかけかは分からなかったけど。 「何で・・・・・・」 それしか出てこなかった。 「・・・会いたかったから」 クロードの幻はすこし眉を下げ、笑った。 「この二ヶ月、会いたくて、会いたくて、死んじゃいそうになったから」 頬に触れてきた指は、間違いなく温かくて、 「戻ってきたんだ」 「――――ッ!?」 思い切って飛び込んだ胸から聞こえた鼓動。 あの日と同じリズムを刻んでいる。 「れ、レナ・・・・・・」 「・・・ッう、くろぉ・・・ド・・・・・・」 クロードのシャツがじわりと湿る。 「っく・・・・・・くローぉ、ドっ!」 「レナ・・・・・・」 躊躇いがちな腕が背を抱く。 「ただいまって・・・・・・言っていいかな?」 少し泣きそうなクロードの言葉に、私はすぐに答えることが出来なかった。 でも、もうすこし、もうすこし待ってくれたら・・・・・・ ――――ちゃんとお帰りっていえるから・・・・・・ |
あとがき
甘ったるいものがどうしても書きたくなって書いてみました(正直)
見直してみたら古ーい少女漫画を見た気分です。
レナはこんな簡単には泣かないと思うんですけどね。
一応TMRの同名曲よりイメージ。
でもこの曲ってクロードのほうがイメージ合う気がするんだがなぁ。
なんでレナ一人称?
・・・・・・謎。
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