君の、夢を見た

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浅い眠りの外で、何かの軋んだ音がする。
じっと耳を澄ませていると気配が近づいてきた。
それはおそらく同室者。
クロードはいつものように寝入ったふりをする。
背後から気配が近づいて、口の前に何かが塞がる。
しばらくそのままだったが、やがて指であろうそれは移動を始めた。
まずは額の髪を少し払いのけ、続いて目蓋の丸みを確かめる。
確かめた後頬を滑り、唇の輪郭をなぞる。
最後に辿り着いたのは首。
すべる指が項あたりをくすぐり、少し身じろぎをする。
指が離れた。
クロードは内心しまったと思いながら、なおも眠る演技を続けた。











ディアスがこんな事をし始めたのはいったいいつくらいだったか。
きっと一緒に旅を始めたあたりから。
夜半に起き出しては、繰り返す行為。
優しく、そして慎重な触れ方は普段のディアスのイメージからは遠く離れていて、鼓動を抑えるのにいつも必死だ。
けれど。
同時に知ってしまった。
彼の中に巣食う闇に。
夜中、いつもの行為の前に重い悲鳴を聞いたことがある。
まるで悪夢でも見たかのように。
いや、それは間違っていないだろう。
レナから聞いた、ディアスの過去。
家族を目の前で盗賊に殺された。
それまで当たり前のように築いてきた幸福が一瞬にして崩壊するのを、彼は絶望の中で見た。
どれほどのつらさが彼に圧し掛かったのか。
恐怖。
絶望。
怒り。
誰への?
盗賊への。
或いは自分への。
安穏と暮らしてきた自分には計り知れぬ感情が、彼の中で今なお渦巻いているに違いない。
それを証明するように、彼は誰とも打ち解けようとしない。
幼馴染であるレナにも、一歩引いた場所で接する。
そんなディアスが、自分に愛撫するように触れる。
これは自分だけ?
ひょっとしたら、誰かにも?
胸の中を何か得体の知れないものが蠢く。
それの正体を見極めようとはいつもしない。
解ってしまえば……きっと、自分は……










眠りに落ちかけた意識が急速に戻る。
(ああ、また)
終わりを告げる、行為の始まり。
首に絡まるディアスの指。
熱を持ったそれが自分の首を絞める。
気道を圧迫され、空気を求めてうっすらと唇を開く。
そこへ重なる、柔らかなもの。
しっとりとした感触のそれは、ただ重なるだけ。
息苦しさとはまた違ったものが喉の奥からこみ上げる。
重なる時間はほんの少しで。
じきに指と共に離れ、彼のため息が唇をくすぐる。
そのまま気配は去り、背後で聞こえる軋んだ音。
今日の行為もこれで終わった。
まるで儀式のように繰り返される行為。
そしてまた明日になれば、互いに何も知らないふりをして顔を合わす。
背後の寝台から寝息が聞こえてきて、クロードは初めて目を開いた。
彼に絞められた喉にそっと手をやる。
誰にも言えない、深夜の儀式。
甘い罪悪感にため息をつく。
鼓動が収まるのを待って、クロードは瞳を閉じた。
(いつか……)















――――いつか彼になら殺されてみてもいい。

あとがき

暗ッ――――!!(叫び)
何、この暗さは!!
共有する、互いに知らないと思っている秘密。
クロード、されるがままですね。
首を絞める、の所で実験として本当に自分の首絞めてみました。
むせただけだった(爆)

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