letters

戻る

君がいなくても、太陽は昇る。
朝は始まる。
けれど・・・















朝、クロードは海辺の町で目を覚ました。
もう何週間もここに滞在している。
磯の香りと波の音が目覚まし代わりだった。
寝台から起き上がると寝巻きのまま海の見える窓へ向かう。
窓辺に寄りかかり外を眺める。
今日も海は穏やかに朝の光を照り返している。
白い浜辺がきらきらと光った。
彼が夢の中に出てくるようになってもう何日になるだろう。
離れてからそうたっていないのに毎晩のように夢見る。
まるで頭の中に痕跡を残そうとしているかのようだ。
窓辺についた手にかさりと何かが触れた。
ちいさなサボテンの横に白い手紙。
クロードはしばらくそれを見つめていたが、文面を開く事はなく、そっと部屋の中へ戻った。
――遅い朝食が始まる。

















朝というより昼頃に町へ出かけて夜近くに戻る。
買い物の時もあるが何か手伝いの時もある。
クロードは宿にも泊まらず海辺の家を借り、そこで生活している。
そちらの方が気兼ねも気遣いも無用のせいだ。
薄暗い部屋に灯りがともる。
暗い部屋が人工の光に満たされる合間、クロードは今日出会った年上の女性の事を思い出していた。
彼女は言った。






――・・・一人でも大丈夫。






そう言って快活に笑った彼女。
本当なのかと疑う反面、その強さが羨ましかった。
自分は・・・どうだろう?
窓辺に寄りかかる。
外に見える海は朝のときと違い、不気味な色をしていた。
まるで手招きをしているように波が寄せてはかえる。
彼の声を聞かなくなって何日になるだろう。
彼に触れられなくなって何日になるだろう。
彼の夢ばかり見るようになって何日だろう。
いつも突然いなくなる。
電話越しでもいいから声を聞きたい。
シャツ越しでもいいから彼に触れたい。
夢越しでなく直接会いたい。
視線が海から離れ、窓辺に戻る。
朝と同じ場所に同じ手紙。
違うのはそれを開いて見たこと。
突然いなくなるとき、言葉はかけなくてもいつも手紙が残されていた。
言葉を残すのが苦手な彼はいつも置手紙。
――こんなものを残すくらいなら。
こんなものを残すくらいならいっそ何もいらない。
声も、温もりも、存在も、消していってくれればいい。
なのに彼はそれを許さない。
まるで跡を残すように、いつも手紙を残していく。
卑怯だと思う。
自分はさっさとどこかへ出かけて、また気まぐれに帰ってくる。
この手紙一つで彼は自分をここに引きとどめつづける。
いっそ何もかも忘れてここから消えてしまおうか・・・
けれどそれができない事は自分が一番知っていた。
それは出来ない。
彼がこの世界のどこかにいると分かっている限り。
自分の中を占めている限り。
幾度も読み返した文面。
彼と同じでそっけなくて短い言葉。
一番最後の文に指を滑らせる。
そこから彼の心を知ろうとして・・・
何度やっても出来なかったけれど。
言葉を交わすのが苦手な彼の手紙。
最後に書かれていた言葉は――
















『必ず帰る。』

あとがき

元ネタは宇多田ヒカルのアルバム『Deep River』より同名の収録曲。
聞いた瞬間「ディクロだっ!!」
病んでマスねぇ(爆)
あと文中に会話文のカギカッコが出てこない小説!
書きたかったんです〜
あとディアスの名前がどこにもありませんがディクロです。
誰がなんと言おうとディクロ!

戻る