クロード君の恋愛事情
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どこまでも広く澄み渡った青空。 透明な風が頬を掠め行く今日この頃。 そんな心地よい空の下とはまったく対極に彼はいた。 「はあぁぁ・・・」 吐き出される溜息はどこまでも重く、なぜか身体がだるくて億劫だ。 クロード=C=ケニー、十九歳。 彼は今大いなる悩みを抱えていた。 年頃の少年の悩みと言えば、そう、恋煩い。 (何でかなぁ・・・) どうしてこんな感情を抱いてしまったのか。 元々ただの仲間だと思っていたのに・・・ クロード、一生の不覚である。 (あの夜からだ) あの夜から、自分はおかしくなってしまったのだ。 それはつい先日の事。 久しぶりにとった宿でクロードはぐっすりと寝ていた。 筈だった。 (んん・・・?) 床とベッドの軋む音にクロードは目を覚ました。 同室の仲間が起きだしたらしい。 クロードは壁際の方を向いていたから相手に悟られる事はなかった。 やがて扉の開く音と閉まる音がし、後には元通りの静寂が戻った。 (こんな夜更けにどこへ・・・) 好奇心に駆られクロードはベッドから起きだすと、音を立てぬよう部屋を出た。 後には仲間たちの寝息だけが残った。 相手と少し距離をおいて夜の道を歩く。 気づかれぬよう、静かに、静かに。 周りには誰もいない。 時折、名前も知らぬ獣の吼える声がした。 夜は人の恐怖心を駆り立てるという。 けれど今のクロードは恐怖心よりも好奇心の方が勝っていた。 (なんか探偵みたいだな) 心臓がどきどきと鳴る。 相手は早足のような速さで歩いている。 つかず離れず。 ついていくのがやっとだ。 (まさか夢遊病?) そう思いかけたとき、相手はふと足を止めた。 そこは小高い丘の上。 昼間はカップルや子供たちで賑わうそこはさすがにこの時間帯は誰もいない。 (何をする気だろう) 近くの木の陰に身を潜めことが起こるのをじっとまつ。 五分。 十分。 ・・・何も起こらない。 (なんなんだろう・・・) クロードがもう帰ろうかと思ったとき、 「オイ、そこにいるのは誰だ」 だしぬけに呼ばれ思わず飛び上がった。 そうっと木の影から顔を出すと、相手はこちらをじっと見ていた。 「・・・ばれてたの?」 クロードが照れ隠しに笑う。 「最初から」 相手は顔色一つ変えず言った。 「気づいてたんなら言ってくれればいいのに・・・」 クロードはそう言いながら相手の隣へ移動した。 「えと、こんな所で何してるの?」 「月光浴」 「はあ・・・」 月光浴ねぇ・・・ クロードは相手の顔をじっと見つめた。 月を見るかれはいつもと同じ顔をしていた。 いや、微妙に違う。 いつもより綺麗だ。 月明かりに照らされた顔はどこか神々しい。 細めた目が優しい光を放つ。 クロードはなぜか顔を赤らめた。 (あれ?なんなんだ?) 頬が熱い。 心臓が耳元に移動したかのようにうるさく聞こえる。 喉がからからと渇いてくる。 (なんだよ、これぇ・・・!) 「どうした?」 声に反応して面を上げると、そこにはとろりと、優しい笑みを浮かべるかれの姿があった。 「――――――――ッ!!」 目の前が、くらくらする。 「あの!僕、もう宿に戻る!!」 そう叫ぶと、クロードは脱兎のごとく宿へと帰った。 その夜、クロードは目を閉じたまま布団の中で動かなかった。 空が白々と明けるまで。 それからである。 クロードの苦悩が始まったのは。 戦闘中もかれの姿を見るとまともに戦えなくなる。 結果、レナのお世話になりっぱなしとなる。 日常でも姿を見ればさっさと逃げる。 いい加減疲れてきたし、絶対おかしいと思われている。 おりかくここはあの夜きた丘の上。 いやがおうにも思い出してしまう。 (でも、きちゃうんだよね・・・) ここに来るたび思い出すかれの笑顔。 胸に浮かべるたび切なくなる。 「どうしたもんかなぁ・・・」 クロードが溜息混じりに呟くと、 「クロード!」 聞きなれた声に、クロードはびくりと身体を振るわせた。 ゆっくり振り向くと、そこにいたのは、 「あ、アシュトン・・・」 「こんな所で何してるの?」 「え、別に・・・」 ポーカーフェイスを覚えておいてよかった。 表面上は笑顔で接しているものの内面は半分パニック状態だ。 (ここで逃げたらあからさまにおかしいと思われる!!) 「アシュトンこそどうしてここに?」 「いや、ちょっと・・・」 それだけ言うと二人は黙り込んでしまった。 沈黙が痛い。 「あ、あのさ・・・」 アシュトンが口を開いた。 「え、な、何・・・?」 クロードもどぎまぎしながら聞き返す。 「最近・・・えと、僕のこと避けてない?」 ドクンッ! 核心に触れられクロードは狼狽した。 「え、いや、そんな事ないと思うよ、うん!気のせい、気のせい!!」 慌てて笑顔で手を振る。 でもかなりぎこちない。 「そう?・・・ならいいけど」 その様子を不信がることもなくアシュトンは納得した。 (ば、ばれてない?ばれてないよね、よし!) 「アシュトン、宿に戻ろうか。もうじき夕食だし」 「うん、そうだね」 二人は並んで歩き出した。 とめどない雑談をしながらクロードはふと、かれの顔を見た。 「―――ッ!」 一瞬、あの夜みたいに微笑まれた気がして慌てて顔を背ける。 (ばれてない?本当に、本人にはばれてないよね!?) ポーカーフェイスを続けるのに精一杯でアシュトンの話が耳に入らない。 高鳴る心臓を抑えながら、クロードは思った。
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あとがき
たまには悩め!青少年!!(爆)
と、ゆーわけで今回はクロード、恋に悩むの巻。
いっつもまわりが苦悩してるので今回はクロードに悩んでもらいました。
途中で恋の相手に気づかれた方、多いでしょうね。
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