一周年特別企画小説
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+Another


それは多分、現実にはありえないお話・・・




「うっわぁ・・・」
クレスは始めてみる光景に目を奪われた。
色とりどりの風船が空に舞い、楽しげな音楽が空間を彩る。
大勢の人々が一時の夢を見る場所。
エナジーネーデ最大の遊園地、ファンシティ。
「凄いね!こんなに人が多いなんて・・・」
クレスがきらきらと両目を輝かせる。
「気に入った?」
「もちろん!!」
クロードが訊くと、クレスはさも嬉しそうに何度も頷いた。


――ちょっと、まて。
どうしてクレスがここにいるんだ、と思われる方もいるだろう。
答え
『遊びに来たクレス達をクロードがファンシティに遊びにいこうと誘ったから』
・・・ではなくて。
“なぜ”ファンタジアのクレスが“どうして”SO2の世界に“どういったわけで”遊びにこれるのか?
・・・まぁ、そんな細かい事は横に置いといて・・・と、誤魔化して先に進もう。




「他のみんなは・・・もういっちゃったみたいだね」
「じゃあ、僕等も早く行こうよ!」
きらきらと子供みたいに目を輝かせ、腕を引くクレスにクロードはふっと笑みを零し、ファンシティの門をくぐった。

「ねぇ、アレ、なに?」
まず真っ先にクレスが指差したのはインフォメーションセンター。
「迷子になったとき来る場所。覚えとくと良いよ」
「僕は迷子になったりしないよ」
「自信ある?」
「自信は・・・」
と、ファンシティの広大な敷地を見回し
「ちょっと・・・無いけど・・・」
蚊の鳴くような声でぽつりと言った。
その言葉にクロードは自然、笑みを漏らす。
「ああもう!いいでしょっ。ほら、他いこう!!」
クロードの腕をぐいぐい引っ張り先を急ぐクレス。
その背中を見ながら、クロードはポツリと思った。
(・・・弟ってこんな感じかなぁ・・・)
子供の頃街中で兄弟のいる子を見るたび凄く羨ましかった。
そんな事を言うと、『でも頼られてばっかでうっとおしい』なんていう奴もいて、『そういうものか』と思っていたけど。
(今考えたら、それって凄く贅沢だよね)
こういう風に頼られるのは、決して気分の悪いものじゃない。
「どうしたの、クロード?」
クレスが黙ったままのクロードに訝しげな視線を送る。
「なんでもないって」
クロードはにっこりと“弟”に向かって笑いかけた。


最初に訪れたのはやっぱり・・・と言うか、闘技場だった。
「こっちにも闘技場ってあるんだね〜v」
クレスは嬉しそうにあたりを見回す。
「しかもかなり広い!!」
「一度出てみる?」
クロードが恐ろしい事を訊いた。
そんな事になったらあの殺人コンボで被害者続出するかと・・・
だがクレスは首を横に振り、
「う〜ん、いいや。それよりちょっと見学したいな」
「見学だけでいいの?」
「いいよ。ほら、こっちの剣士たちがどんな技を使うのか見てみたいし・・・」
剣士として当然の、純粋な願いなのだろう。
むしろそれでよかったのかもしれない。
出場した翌日、ファンシティが営業停止になったら確実にクレス達のせいです(断言)


――闘技場では信じられない光景が広がっていた。
「でぃ、ディアス選手、デュエルバトルAランククリア!!」
一斉に上がる歓声。沸き起こる拍手。
仮想の魔物の消えた中で、ディアスは息切れ一つせず立っていた。
「・・・・・・」
「・・・ディアスさん、強い・・・」
観客席から見ていたクレスは感嘆の溜息と共に言葉を吐き出した。
試合は途中からしか見ていないが、確かに凄かった。
Aランクのモンスター相手に汗を流す事無く圧勝。
剣の道に身を置くものはすべからくその試合を見て身震いしたに違いない。
恐怖に、或いは憧れに。
クロードもその一人だった。
「凄い・・・」
強い事は知っていた。
それの実力が自分を遥かに超える事も。
今、クロードの心を占めているものは恐怖でも、憧れでもない。
(絶対、超えて見せる!)ただ一つの決心だけだった。
「あ、ディアスさん、こっち向いた」
嬉しそうに大きく手を振るクレスの横でクロードも小さく手を振る。
と、ディアスがダッシュで出入り口に消えた。
「あ」
「へ?」
「何をしている」
「「わぁっ!!」」
消えた。と思ったらすぐに横に現れた。そんなあなたは幽霊ですか。
「い、いきなり現れないでってば!!」
「では次から予告しよう」
そういう問題でもなくて・・・
「ディアスさん!お強いんですね!」
クレスが横から憧れの視線をディアスに向けた。
「別に・・・あんなもの、肩慣らしにもならん」
だがディアスはしれっとそう言い返す。
「それでも凄いって。それはそれとして、なに?その後ろの大荷物」
クロードが指したのはディアスの後ろにある大袋。
まるで季節はずれのサンタクロースか、七福神の布袋のようだ。
顔が良いだけになんだか間抜け。
「ああ、これは・・・闘技場の賞品だ」
「賞品!?」
「この大きな袋が?」
じゃ、なくて中身の事だと思う。
「・・・君はいったい幾つのバトルに出たの?」
「全部。デュエルにブリーングにサバイバルにチームに・・・」
「ちょっとまってよ。チームって、他に誰か一緒にいたの?」
「それは私です」
「「だぁっ!!」」
ふっ、とどこからか姿を表したのはクレスの仲間のすずだった。
「す、すずちゃんが?」
「いかにも。少々鍛錬になるかと思ったのですが・・・」
肩慣らしにもならなかったんですね・・・。
しかし、ディアスとすず。
ある意味最強でしょう、この二人。
「ところでクロード」
「なに?」
「やる」
「へ?」
と、ディアスから手渡されたのはライトクロス。
「俺が持っていても似合わん」
「クレスさん、これを」
「何、これ?」
すずからクレスに手渡されたのはマジッククロス。
「先ほど入手いたしたものですが、私よりクレスさんがお持ちになっていたほうが相応しいかと」
確かに毎度の戦闘で壁代わりされているクレスにはぴったりな品物かと。
「あ、ありがとう・・・」
「あ、すずちゃん達、どこに行くの?」
立ち去ろうとする二人を呼び止めると、ディアスは少し振り向いて、
「もう少し遊んでいる」
「私も、もう少し・・・」
「ああ、そう・・・」
立ち去る二人の背中を見つめ、クロード達は思わず闘技場支配人に同情を禁じえなかった。
「ねぇ、二階に上がってみない?」
闘技場を出ると、クレスはすぐさま二階を指した。
「上?」
「上!」
闘技場の二階といえば・・・
「やめよう!」
クロードはキッパリと言い切った。
「どーして!?」
「どうしても!!」
不満を訴えるクレスを引きずりながら、クロードは次のアトラクションへむかった。
(あそこは“絶対にいっちゃいけませんオーラ”が出てる!!)
野生の感はこういうところにも発揮されるようです。


不満がるクレスをなだめすかしながらやってきたのは占いの館。
「ここの占い、凄くよく当たるんだって」
「ふ〜ん・・・」
きょろきょろとクレスが周りを見ていると、
「あ、あれ」
「ん?」
クレスの差す指の先には。
「あなたと彼の相性はかなりよろしいようです」
「ほ、本当ですか!?」
「よかったね、ミント!」
「はい!」
「ここの占い、よく当たるそうですからよかったですわね」
「ミント、ここにいたの」
「――!!」
クレスが呼びかけると、ミントはバネ仕掛けのびっくり箱みたいに椅子から飛び上がった。
「くク、クレスさん!!」
「レナ、セリーヌさん。ここにいたんですか」
「アあ、く、クロード!」
「あら、クロード達も占いにご興味があって?」
セリーヌが訊くと、クロードは苦笑しながら、首を横に振った。
「まさか。ちょっと暇つぶしに来ただけですよ」
「クレスさんも?」
今度はレナが問うと、クレスは頷いて、
「はい。ねぇ、ミントはさっき何を占ってもらってたの?」
「わ、私ですか!?あの・・・エエと・・・」
ミントは耳まで真っ赤にして口篭もる。
その横でレナはにまにま笑いながら、
「あのねー、ミントは相性占いしてたの」
「レ、レナさん!!」
「へぇ。それで、相手は誰?」
「それはね〜・・・」
「ダ、ダメですぅっ!!」
暴露しそうになったレナの口を、ミントはとっさに塞いだ。
「むぐぐ・・・」
「へ?何?」
「何でもありません!!」
「セリーヌさん、何か知りません?」
ふると、セリーヌは意味ありげに微笑んでかぶりを振った。
「いいえ、何も。どうせならその事をここで占ってもらったらいかがです?」
「う〜ん。いいです。ここにはちょっと冷やかしに来ただけだし」
「あら、残念ですわぁ。ここの占いはよく当たりますのに」
セリーヌの本当に残念そうな声を背後に聞きながらクロード達は占いの館を後にした。
ばたんっ。
あ、レナ・・・



続いてやってきたのは・・・
「あれ?何?」
見るとクッキングマスター会場から煙が吹いてる。
「火事かっ!?」
慌てて近寄る二人。
すると、煙の中から見慣れた人間が現れた。
「げほっ、げほっ・・・」
「チェスター!!」
「うぇ〜、気分悪い・・・」
「アシュトン!!」
それは煙にむせ返るチェスターと顔面蒼白のアシュトンだった。
二人が走りよると、アシュトンはクロードにもたれかかるようにして倒れた。
「大丈夫!?」
「あ、あんまり・・・大丈夫ぢゃ、ない・・・」
それは顔色からしてよく分かる。
背中の二匹も顔色が・・・変わるわけないけど、なんだか体調が悪そうだ。
「何があったの?」
クレスに背中を摩ってもらい、何とか普通に喋れるようになったチェスターが口を開いた。
「ちょっと、中にアーチェが・・・」
「――なるほど」
一瞬にしてクレスは納得した。
「へっ?なになに?」
状況をよく飲み込めていないクロードが困惑気に問う。
「ちょっと・・・うちのアーチェが料理してるみたい」
「だから?」
「アーチェには、その、ある才能があるんだよ」
「どんな?」
先を急くと、クレスは言い辛そうに、
「特別料理を作れるという・・・」
「――はっ?」
やっぱり理解しがたいとクロードは眉を寄せた。
「この煙、アーチェって子が料理しだした途端上がったものなんだ」
アシュトンとチェスターが補修するように説明を引き継ぐ。
「確か最初はヒゲのおっさんがフルコース勝負って題目出したあと、あのピンク頭が調理開始したんだが、その途端鍋から紫色の火花出しやがってよぉ」
「実はプリシスも一緒にいたんだけど、プリシスが自作のメカで消火に当たった途端、今度は黄色い煙が上がって・・・」
「なかの人は!?」
「あらかた逃げ出したんだけど・・・」
「まだ、ピンク女とプリシスって女の子とヤーマってヒゲのおっさんがなかで頑張ってる」
恐ろしきはプロ根性。死ぬぞ、本気で。
まぁ、あの料理魔人ならげれげれスライム食って生きてるんだから平気かも・・・
「放って置いて・・・大丈夫かな?」
「平気だろ?」
さり気に酷い科白を吐いて、チェスターは後ろを振り返った。
中からはまだ、三人が出てくる様子はない。
煙はさらに酷くなっている。
さらに中で小さな爆発音。
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・平気、な訳ないだろぉ〜〜!!」
クロードは一呼吸おいて絶叫すると、
「クレスは二階に行ってセリーヌさん達呼んできて!アシュトンはウルルンと一緒に消火作業!チェスター君は煙に巻かれた人の手当!!」
さすが授業サボりまくってても少尉。
てきぱきとその場を指揮する。
「クロードは!?」
「僕は人を呼んでくる!」
叫ぶと同時にクロードは全速力で走り始めた。
と、言っても誰かあてがあるわけでなし。
とにかくインフォメーションセンターに駆け込んで事態の説明。
慌てたのはファンシティの関係者だ。
何人か警備の人間がすっ飛んでゆく。
しかし、クロードが駆け込むまで気づきもしなかったのだろうか、警備の人間は。
まぁ、十賢者が来襲しても営業してたんだから、不可解な煙くらいじゃ動きもしないか。
警備の人間に続き、クロードも現場に戻ろうとした。
その時。
「あれ〜、お兄ちゃん?」
この騒ぎの中、何とも呑気に声をかけてきた人物がいた。
「レオン!!」
「なんなんだ?この騒ぎは」
「と、クラ―スさん!!」
渡りに船、地獄に仏、試練の洞窟にサンタとばかりにクロードは二人の腕を掴むと、
「ちょっと助けて!!」
そのままバーニィシューズの威力も借りて、全速力で現場へと向かった。



――現場は大して進展を見せていなかった。
「状況は!?」
「多少はよくなってる」
「・・・ような気がする」
何とも頼りない返事。
「レオン、クラースさん!!見てのとおりなんです、早く何とか・・・!?」
連れてきた二人に助けを求めると、二人はそれどころではなかった。
「・・・気持ちワル・・・」
「は、吐きそうだ・・・」
「どうしたんですか!?」
「十中八九あんたのせいだ――!!」
心配そうに問い掛けるクロードに、少年博士と召喚士は真っ青な顔で、指を突き立てた。
「お前さんが全速力で走ってもらったおかげで酔った」
「見える景色が後ろに帯を引いていくんだもん・・・最高速度のサイナードの方がまだマシだよ・・・」
どうやら光もびっくりな速さで走っていたらしい。
人間必死になると何ができるか分からないものだ。
「それより早く助けてください!!」
クレスの言葉に、クラ―スははっと我に帰った。
「どうした!?」
「なかでアーチェが料理を・・・」
「よくわかった」
さすが激戦を潜り抜けてきた仲間となると少ない言葉で分かり合えるものなのか。
と、言うより「アーチェが料理」という単語がこの上ないほど鮮烈な印象で脳にインプットされてるだけかもしれない。
「レオン君、手伝ってくれ!」
「ハイ、ハイ!!」
「私もお手伝いしたいのですけど・・・」
遠目から見ていたセリーヌがポツリと呟く。
「私、火とか星属性の呪紋しか知りませんの」
「いいですよ。やっぱり女性にこんな危険な事手伝わせる訳には・・・」
「そこで考えたのですけど」
セリーヌはにっこりと笑みを浮かべ
「サザンクロスで建物ごと破壊して消火、というのはどうかしら?」
『却下――!!』
方々から否定の声が響いた。


「ノア――ッ!!」
「出でよ、ウンディーネ!!」
空間から突如現れた水は津波となり、炎と煙を包み込む。
水の引いた後、そこには全身洗浄されたクッキングマスター会場があった。
「アーチェ!」
「プリシス!!」
水浸しの廊下を進み、一同はバトル会場に向かう
とそこには――!
「あれ〜、クレス?」
「あ、クロード!!」
・・・火事にも煙にも気づかず調理中のアーチェと、消火ロボの修理に勤しむ二人がいた。
「どうしたのよ、何の騒ぎ?」
「てか、なにこれ―!?床水浸しジャン!!」
――全員がその場に脱力したのは言うまでもない。



「散々な一日になったね〜」
「そうだね」
あの後、事務局の方からたっぷりお説教をくらい(アーチェとプリシスは何があったのかさっぱり分かっていなかった)解放されたのはついさっき。
既に空には宵闇が迫っていた。
「あー、疲れた」
買ってきたアイスをクレスに渡し、どっこいしょ、と老人のような声を出しベンチに座るクロード。
「ほとんど遊べなかったね」
「うん」
申し訳なさそうにクロードは苦笑する。
「別に、いいけどね」
クレスはアイスに口をつけながら言った。
すっかり夜のビロードに覆われた空には幾つもの星が光る。
それに対抗するように上がる色とりどりの花火。
地上の人々はそれを見上げ、それぞれ感嘆している。
そして満月にはまだ気の早い月が一つ。
人口の光に邪魔されながらも懸命に輝いている。
「結構、楽しかったな」
「そう」
二人の少年の顔に空の花の色が移る。
「また、来てもいいかな」
「――歓迎するよ」
クロードは微苦笑を浮かべ、
「さすがに、今度みたいな愉快なハプニングは二度と起こらないと思うけど」
「そうだとありがたいな」
くすくすと楽しそうに笑みを漏らし、二人は空を見上げた。
空にはまた一つ、火の幻想が舞い上がった。


あとがき

一周年ありがとうございます!!
遅れに遅れて小説上がりました!!
実はこれ、二本目なんです。
記念日の一週間も前に書いていた奴はつまってしまい悩んだ結果、コレを書く事となりました。
しかもコレ、たった三日で書けたしな〜・・・
一週間も悩んでいたのがばかばかしくなってきた・・・
いちおうTOPパーティキャラは全員出す事が出来ました。
かなり強引な方法ですが(滝汗)
その他のキャラのファンの人(ダオスとかルーングロムとか)、SO2の出ていないキャラのファンの人、
本当にすみません。
恨むんなら龍都の文才無い頭を恨んでください(泣)
ではでは、これからも『幻燈懐古店』をどうぞよろしく☆

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