夜が総てを包み込む午前零時。
コッコッ
「ハイ、誰?」
クロードは眺めていた窓から目を離した。
「・・・僕だよ」
「ああ、アシュトン」
開いた扉から、アシュトンが遠慮がちに顔を出した。
「ごめん。寝てた?」
「ううん。どうしたの?こんな夜更けに」
「あのね、今日町でこんなものを買ってきたんだ」
アシュトンが取り出したのは、
「・・・線香花火?」
「一緒にやらない?」
アシュトンは花火を手に微笑えんだ。
「あー、落ちたぁ」
「動かすからだよ」
クロードが花火を手に笑う。
アシュトンもつられて笑いながら、火の消えた花火をバケツに放り込んだ。
クロードの花火がひときわ大きく弾け、やがて灰色に変わる。
「・・・あのね、本当は線香花火ってあんまり好きじゃないんだ」
クロードが次の花火を手に取りながら云う。
「そうなの?・・・ごめん誘って」
「あ、別に。誘ってくれて嬉しいよ」
「でも、嫌いなんでしょ?」
「嫌いじゃないよ。でも・・・」
クロードの顔が花火の光に照らされる。
「線香花火って燃えている間は凄く綺麗なのに、だんだんと消えていっちゃうよね。
なんだかそれって」
花火が、命が燃え尽きてゆく。
「人みたいで、切なくなるんだ」
光が消え、クロードの姿が朧に消える。
見えないはずのクロードの横顔が、
アシュトンには何故か泣いているように見えた
―――夏が逝くね。
君と過ごしたこの季節が。
すべての記憶を思い出に変えて。
僕らはあとどれだけ、同じ刻を過ごせるのかな?
燃え尽きた最後の花火を、クロードはいつまでも見つめていた。
珍しく短い(?)ものが出来た。
そして切ない系。
うん、珍しいだらけだ(笑)
≫戻る≪