クロスの城下町。
夜だというのに町を流れる人並みは絶えない。
いや、逆に昼間より増えている。
それもそのはず今日はクロスのお祭り。
いつも賑やかな町は一層賑わい、
皆不思議な服を着て思い思いに楽しんでいる。
そんな人並みの端でぽつん立ち尽くしている少年と少女。
「ねぇ、クロード私たち、」
「レナ。云わなくてもいいよ。分かってる。」
クロードは諦めたように溜息をついた。
「僕らが迷子になったって事はね」
こんな人ごみではしゃいでいたのが悪かった。
二人は完全に仲間たちとはぐれてしまったのだ。
「どうしよう・・・」
「う〜ん・・・とりあえずその辺歩いてみる?」
こうしてずっと立っていても暇だ。
それなら、
祭り見学がてら自分たちから探しに行ったほうがいくらかいい。
「じゃ、行こうか」
そう結論付けたクロードはレナに向かって手を出した。
「・・・何?」
「へっ?いや、手をつなごうって・・・」
「ええっ!手!?」
レナが真っ赤になりながら復唱した。
クロードもつられて真っ赤になる。
「い、いや、別に変な意味じゃなくて、
その、またはぐれても困るからッて言う意味で!!?」
慌てて弁明してみたがどうも言い訳くさい。
二人の間に沈黙が流れた。
「・・・・・・」
ぎゅっ
「へっ?」
「ほら、早く行こう」
「・・・うん!」
レナがつかまれた手を握り返すと、
二人はゆっくりと歩き始めた。
「いないね・・・」
「そうね・・・」
あれから思いつく場所を探してみたが仲間達は見つからなかった。
「大丈夫?」
クロードは心配そうにレナに話し掛けた。
「ん、平気・・・」
慣れない靴で足を痛めたらしい。
顔は笑っているもののかなり辛そうだ。
「ここでしばらく休憩しよう」
「ありがとう」
クロードがレナを気遣い、近くの芝生に腰掛けさせた。
その時。
ヒュゥゥゥ〜
ドォォン・・・
体に響き渡るような音。
空を見上げるとクロス城をバックに色とりどりの火薬の花が上がっていた。
時間を置いて上がる花火は地上の人々を様々な色に染める。
「・・・綺麗」
レナが足の痛みも忘れ呟く。
「・・・うん」
クロードが頷く。
二人はしばし花火に見入っていた。
クロードはふと空から視線を外しレナの方を向いた
レナは無心に空を見上げている。
白い肌に何色もの光が映る。
綺麗だ・・・
切な過ぎるほどの愛おしさが胸を締め付ける。
クロードが離れた手をもう一度つないだ。
レナも無言でその手を握り返す。
痛みにも似た切なさ。
名前を知らないこの感情は・・・
クロードは問い掛けるように、レナの横顔に見とれていた。
「あ〜!クロード達見っけ!!」
花火に勝るとも劣らない声に二人は我に返った。
「ま〜ったく、こんな所にいましたの?」
そこには仲間たちの姿があった。
「もぉ!探したんだからねー!」
「わッ!ちょっとプリシス・・・!」
「・・・・・・」
他の仲間たちとはは少しはなれた場所で、
レナはクロードたちを見ていた。
「まったく、本当にしょうがありませんわね」
「セリーヌさん・・・」
いつの間に来たのか。セリーヌが苦笑いしながらレナの隣に立っていた。
「止めませんの?」
「・・・いいんです」
レナは微笑しながらいった。
「楽しそうですわね。何かありましたの?」
「な、何かって、何も・・・あっ」
慌てて言いかけ、止めた。
「レナ?」
「ありました。いい事」
きっと今日は、大切な思い出になる。
確信にも似た想い。
かけがえの無い、これからもきっと失う事の無い記憶
地上の人々はまだ、空の幻想に酔いしれていた。
何がなんだかさっぱり・・・
とりあえず、手をつながせることが出来た・・・v
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