If……幼馴染み編
7・不二(兄)+主人公 8・向日+主人公 9・不二(弟)+主人公
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チャイムの音が鳴り止んだ直後の廊下。 移動教室から出たと桃城は、談笑しながら自分たちの教室へ帰るところであった。 昨日のテレビがどうだったかなんて他愛ない会話を、時折ボディランゲージも含めながら続けてゆく。 桃城の冗談にコロコロと笑っていたは、廊下の中腹までやってきたところで急に体を固くした。 友人の豹変に、桃城は眉を顰めて、 「……?」 「来る……っ!」 厳しい顔で振り向く。状況を察した桃城は、とっさにと距離をとった。まさにその時。 「――――っ!」 廊下の端から、起こる筈も無い砂埃をたて、一人の少年が突貫してきた。 遠目から見てもよく分かる赤毛のくせっ毛――――。 「っ!」 「っ!」 足を緩めること無く飛び上がった少年は、そのまま目の前の少女目掛けて飛びつく。 はずだった。 しかしとっさに武道家の如き身のこなしで軸足を中心に体を半回転させると、少女は飛び掛る少年から身をかわす。 目標物を失った少年は顔面から廊下にダイヴすると、そのまま数メートル先の壁にぶつかるまで、体全体でスキーを楽しんだ。 「……」 「……」 突然のスタントショーに、廊下にいた他の生徒も、先輩が廊下を滑る様を傍観していた桃城も、そしてショーのもう一人の主役たるも唖然としている。 日中の学校に似つかわしくない沈黙があたりを包み込む。 沈黙を打ち破ったのは、全員の目が集中する廊下の端とは正反対の方角から聞こえた拍手だった。 一連の奇行を喝采していたのは、不二だった。 いつものアルカイックスマイルに、どこか楽しげな色を滲ませ、手を打ち鳴らしている。 「凄いね、ちゃん。香港のアクション俳優みたいだ」 「不二先輩……」 近づく姿を認めたは、おおきく溜息を吐くと肩から力を抜き、情けない顔を張り付かせた。 「お褒めに預かり至極光栄……と、言いたい所ですが、アレと一緒にいたんなら、走り出す前に首根っこ捕まえて止めていただきたかったですよ」 「うん、ごめんね。エージ、すばやくて……」 それに、と不二は口元をわずかにイジワルそうに捻じ曲げると、 「あのまま見てた方が面白かったし」 と付け加え、と桃城を大きく脱力させた。 は、隣で一緒に肩を落とす友人の服の裾を引っ張ると、ひそひそと耳元で、 「いつも思うんだが……不二先輩は味方か?」 「味方だろーよ。……自分にとって面白い方のな」 重々しく吐いた答えに、は唇の端でひくついた笑いを零す。 その様子に、桃城が頭の一つでも撫でてやろうかと手を伸ばした。矢先の事。 「っ!」 「ぎゃあぁっ!」 断末魔に近い雄たけびを上げたの背中に、何かがへばりついている。 子泣き爺の正体は、先ほど見事な滑りっぷりを披露してくださった菊丸であった。 「えい、エージ兄っ!」 裏返った声で、が幼馴染を呼ぶ。 背中の菊丸は、を抱く腕にますます力を込めると膨れっ面で抗議を始めた。 「ひっどいよぉー。なんで受け止めてくれないのぉー」 「受け止めたら私が潰れるじゃないか!あ、こら、ちょっと!」 痛いと喚く。それを気にした様子も無く、それどころか頭をぐりぐり押し付ける菊丸。その頭をバシバシ引っぱたく。 ――――何度見ても、派手なコミュニケーションだ。 もうこうなれば迂闊に手出しは出来ない。 下手に手を出そうものなら、菊丸はますます意固地になってから離れなくなるだろう。 の肺の潰れ具合を心配しながら、桃城は不二と同じ傍観者の立場に回った。 「なんつーのか。いつ見ても凄いっすよね。あの二人」 「揃っただけで、一気にコント状態だしね」 楽しい、と糸目をさらに細める不二。 時折その思考についていけなくなる部の先輩から一、二歩離れてると、桃城はすっかり諦めて宥めにかかっているクラスメートに、 「大変だな、お前も」 と同情の声をかければ、幼馴染の頭を撫でる手を休ませずに、 「慣れたさ」 そう言って、いつものように彼女は笑う。 どこか幸せそうな色を滲ませたその笑顔に、桃城もまたつられて笑った。 幼馴染は菊丸英二。 はたから見れば、どつき漫才なスキンシップを繰り広げればいい。 でも本当に嫌がってるわけじゃなく、スキンシップ自体は楽しい、みたいな。 なんだか不二がすっかり傍観者です。 たまにはVSじゃなくてただ蚊帳の外から観戦しているだけにしてみました。 そんな訳で、お礼SSSでした。 |
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「あなたの一番嫌いな人はどんな人?」 リポーターの質問に、周囲の人間は度肝を抜かれたように眼を見張った。 何を言っているんだと、言葉にならない非難がその視線には籠められている。 だが、突き刺さる視線など気にも留めず、リポーターは返事を待つ。 期待のためか爛々と輝く眼は、少年を一点集中したまま揺らがない。 しばらく黙って俯いていた少年は、やがて顔を上げると端整な口元に意地の悪い笑みを浮かべ、口を開いた――――。 「ユーシ兄ィー!」 虎の咆哮に負けるとも劣らぬ怒号を上げ、は叩きつけるかのようにクラブハウスの扉を開いた。 「なにっ……こ……れ……」 当初の勢いは徐々に薄れ、最後には蚊が鳴くようにフェードアウトしてゆく。 一瞬場は、水をうったかのように静まり返った。 「キャッ」 誰かがふざけて黄色い悲鳴を上げる。 ゼンマイの切れたからくり人形みたいに固まっていたは、その瞬間頭のてっぺんからつまさきまで余す所無く朱を走らせた。 「わっ、ご、ごめっ!知らっ、ら、着替え中、しら、知らなくっ……!」 慌てるあまり呂律の回らないに、忍足からとどめの一言。 「のエッチー」 「――――っ!ごめんなさあァい!」 来た時と同じぐらいの悲鳴を上げて、はドアを閉めるのもそこそこに逃げ去った。 あとに残されたテニス部員は、突然の闖入者に肝を潰して着替えの手も止まったまま、ただ揺れるドアを見つめている。 そんな中でただ一人、忍足だけがこらえ切れないように歪んだ口元から笑いを零していた。 半端にシャツを羽織った肩が、ひくひくと震えている。 次いで正気を戻した跡部が、眉を顰めて、 「何しに来たんだ、あいつ」 「なんか……手に握り締めてたような……」 ちょうどズボンのジッパーに手をかけていた向日が答える。 「えっ、なになに。ちゃん、来てたのー?」 「ジロー。お前、立ったまんま寝てんなよ」 いまだユニフォーム姿のジローにツッコんだ宍戸は、次いで床でへたり込む後輩に声をかけた。 「――――パンツ見られたからって、落ち込むな。長太郎」 「お待たせ、」 花壇の隅で花と同化していたは、忍足の声に体を震わせると、バネでも仕込んでいるかのように勢いよく立ち上がった。 「ゆ、ユーシ、兄ィ……。みな……さん……」 さっきまで赤かった顔を、今度は青く引きつらせ、は返事をした。 うろつく視線が、ほんの一瞬鳳のそれと交わる。 とたん、二人は同じタイミングで赤い顔を俯かせた。 いかにも初々しいというか青春っぽい状況に茶々を入れたのは、やはり(と言うべきか)忍足であった。 「……」 と、幼馴染の方に優しく手を置くと、 「まさかお前に覗き趣味が合ったやなんて……」 「うぉい、まてい!あんな堂々とした覗きがあってたまるかい!」 慈愛に満ちた視線に、思わずツッコム。しかし、忍足は気にした様子も無く、 「でも安心しいや。俺のンでよかったら、いくらでも見せたるさかいなっ」 「ユーシ兄ィのなんか幼稚園の頃から見飽きてるわ!いや、チガウ!まって。おかしい。話が航路からずれてる。羅針盤はどこだーッ!?」 叫ぶや否や、は飛びずさって忍足から距離をとる。 それから頭を抱えると、うんうん唸りだした。それを見て忍足がまた唇の端で笑いをかみ殺す。 相棒の意地の悪い様を目の端に見咎めた向日が、思わず助け舟を出した。 「えーっと……、お前なんで俺らの部室にきたんだっけ?」 「それだーっ!」 絶叫すると、は鞄から薄っぺらい一冊の本を取り出した。 それは、今朝発行されたばかりの学校新聞であった。 B5サイズの冊子の一面には、「特別インタビュー・男子テニス部編」と銘打たれ、中央の写真にはレギュラー陣が全員揃って収まっている。 「おー。これ、今日出たんだぁ」 向日が好奇心旺盛な様子で新聞を手に取る。 「ジロー先輩だけ、途中で寝ちゃって大変でしたね」 「ふーん。素人が撮ったにしちゃあ、まあまあの写りじゃねえか」 「当たり前だろう。なんせ俺様が真ん中に納まってんだ。どんなへぼカメラマンでも、これ以上ないほどの仕上がりになるのは当然だ。なぁ、樺地」 「ウス」 「あー、でも皆さん本当に写真写りいいですよねー。私写真自体あんまり撮らないから――――って、ちがあぁうっ!!」 和気藹々と談話に混ざっていたは、突然我に返るとちゃぶ台をひっくり返さんばかりの勢いで新聞を奪い返した。 「私が言いたいのは、この部分だ、この部分!」 が、すでにぐしゃぐしゃな新聞の一部を指す。 指されていたのは忍足のインタビュー記事の一文であった。 たしか、リポーターがとんでもない質問をしたのを憶えている。 Q―あなたの嫌いな人はどんな人? ――――幼馴染に変なちょっかいを出す奴。とくに男。 「なにこれ、ねぇ、なにこれ!?この一文のおかげで、私は朝から芸能レポーターと化したクラスメートやら道行く人やらに質問攻めに会い、廊下を歩くだけで【ほら、あの子が……】なんて話題の主なんだけれども!一躍時の人?むしろ、一晩明けたら大迷惑!!」 「ええやんか」 忍足は、怒りのあまり目に涙さえ浮かべ始めた幼馴染をあっさりあしらって、 「余計な虫がつかんで。可愛い幼馴染を護ったろぉ言う俺の涙ぐましい努力が分からんのかい」 「むしろ涙ぐまれたわ!廊下歩いてたら、いきなり上級生のおねー様に涙いっぱい溜めた目で、『私、負けませんから!』なんて宣戦布告された私の立場はどうなるッ!あの時、よっぽど君を探し出して、『不束者ですが』って熨斗をつけてプレゼントしてやろうかと思ったよ!明日っから私はどうやって学校生活を送ればいい!?」 「愉快極まりなく過ごしたら?」 「お前の脳には『人の話を聞く』という機能が欠落してるのかーッ!すいませんだれか、脳味噌関係のお医者さんはいませんかーッ!?」 ――――どんどん騒がしく愉快になってゆくドツキ漫才のはるか後方。 避難したレギュラー陣は、忍足の愉快痛快極まりない晴れやかな顔を見つめながら、複雑な気持ちに陥っていた。 「……楽しんでますね、先輩」 「だろうな。アレのやりそうなこった」 「も、この記事の続き見てたら、さらに頭に血が上って憤死してるだろうなー」 向日の指が、新聞の一文をなぞる。 そこには、こう書かれていた。 Q−あなたの最近の趣味はなんですか? ――――幼馴染で遊ぶ事。 幼馴染は、忍足侑士。 主人公はオモチャ。むしろ愛玩動物。 遊んで、からかって、苛めて、眼下でキャンキャン吠えているのを見てほくそえむイメージ。 はたから見れば喧嘩にしか見えないドツキ漫才。 そんな訳で、お礼SSSでした。 |
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時は休日のお昼前。 久しぶりに訪れた実家の玄関の前で、裕太は煩悶していた。 兄から帰宅命令をだされたのは、つい昨日のこと。 普段だったら一喝の後、叩きつけるように電話を切るのだが、その時は違った。 「後悔するよ?」 電話の向こうで声が笑いに震えている。 可笑しそうな――――何かを企んでほくそえんでいるような雰囲気が受話器を通して裕太の耳朶を打つ。 その瞬間、よく分からない焦りに、心中を埋め尽くされたのを憶えている。 いつもの返事と正反対の言葉を叩きつけて、そのあとしこたま後悔に頭を抱えた。 これでは兄の思う壺ではないか。 幼い頃から続けられてきたお決まりのパターンに、兄に関してだけ学習能力がまったく発達していないと思い知らされた。 しかし。 『後悔するよ?』 電話越しのあの言葉が、頭の中をグルグル回る。 (まさか、姉貴が結婚相手連れてきたなんて言い出すんじゃないだろうな……) ありえなくも無い想像に、裕太は再び頭を抱えた。 玄関前で苦悶する様を、ご近所の奥様方に好奇の目で見守られる事十分。 裕太はついに自宅のチャイムを押した。 聞きなれたチャイムの終りを聞くのももどかしげに、玄関に近づいてくる足音。 「はいッ!」 勢いよく開かれた扉の先には、姉の結婚相手も、脅しを掛けた兄もいなかった。 いたのは、一人の少女だった。 十人並みの容姿を持った一人の少女が、なぜか緊張した面持ちでこちらを見つめている。 誰だ、アンタ。 そう言いかけた唇は、反射的に思惑とは別の言葉を紡いでいた。 「か……お前」 「た、だいま――――いや、お帰り……かな?」 六年ぶりに出会った幼馴染は、どこかとぼけた帰郷の挨拶と共に、泣きそうに顔をゆがめた。 「言ったでしょ。後悔するって」 喰えない笑顔の兄を思う様睨みつけて、裕太は前を向いた。 テーブルの向こう側には、なんだかしゃちほこばった幼馴染が下を向いている。 さっきから、兄の話に頷きはするものの自分から話し出すことは一度も無い。 六年の間にずいぶん大人しくなったものだ。 「おい……」 あんまりにも固いその姿に、見かねた裕太は声をかけた。 しかし。 「あっ。なに、裕太君」 帰ってきた言葉に、裕太は眉を顰める。 それを見て、はまた俯いた。 妙だ。 さっきから心の底に蟠っていた感情が、頭をもたげる。 いまのの姿に、確かな違和感を感じた。 裕太は、それを思ったまま口にする。 「なんだよ。裕太君ってのは」 今まで、そんな名前で呼ばれた覚えなどない。 いつだって目の前の幼馴染は、時々うっとおしくなるくらい元気に裕太を呼んだ。 聞きなれない他人行儀な呼ばれ方と脅えたような態度に、不快感がこみ上げる。 六年も経てば、人間が変わる事くらい、裕太だって知っているし、分かっている。 だが少なくとも、目の前の少女は自分の中にある『』ではない。 誰だ、コイツは。 「困ったよね」 隣で、兄が苦笑していた。 「ちゃん、昨日帰ってきたんだけどね。僕のこともちゃんと呼んでくれないんだ」 困ったね、ともう一つおまけに嘆息する。 それを見て、少女は顔をクシャリと歪ませた。 「だ、だって……」 ここに来て、少女が始めて自分から発言した。 その声は、どうしようもなく震えている。 まるで苛めているような尻の落ち着かない気持ちになりながら、せっかく見つけた糸口を逃さぬよう、裕太は厳しい顔をする。 「。どうしたんだよ、お前」 「ちゃん、なにかあったの?」 二人掛りの尋問に、も重い口を開かざるをえないようだった。 「ほら、あの……い、嫌じゃないか」 「何が」 イライラするあまり語尾が強くなる。 は一度びくりと体をすくませると、暫く視線を泳がせたのち意を決したように二人を見つめると、 「嫌じゃないか。ろ、六年も離れてた奴に、馴れ馴れしくされるのは……」 語尾が掠れて宙に消えてゆく。 兄は何も言わなかった。裕太も何も言わなかった。 あんまりに、あんまりに、あんまりに……馬鹿馬鹿しくて。 「馬鹿だろ、お前」 脱力した体を椅子の背もたれに預けて、裕太は天を仰ぐ。 「馬鹿だねぇ、ちゃん」 兄も視線をそらせて嘆息する。 今の気分を口にするなら、『なんじゃ、そら』 長い時間掛けて聞き出した理由のあまりにあほくささに、兄弟して脱力してしまった。 しかし、それと正反対の反応を見せたのはだった。 一瞬にして耳まで赤くなったかと思うと、机の上に身を乗り出し、 「ばばば、馬鹿とはなんだ!馬鹿とは!これでもなぁ、これでも――――三日間布団の中で眠るまでの間必死で悶え悩んだ結果なんだぞ!!」 「そいつはずいぶんと笑える悩み方だな」 「笑えるかぁっ!おかげで母さんに本当は離れて暮らすのがいやなんじゃないかって誤解されて、空港で大泣きされながらカルカッタだかインド諸島だかイングランドだかに連れて行かれるところだったわ!あやうく親子で不法入国しかけたってえのっ!」 最後は派手に机を殴りつけて、の主張は終わった。 肩で息をしながら、はこちらを睨みつけている。 その目には、薄っすら涙まで滲んでいた。 「わ、私はなぁ……」 は叩きつけた方の手をもう一方の手でぎゅっと握り締めると、俯きながら言葉を紡いだ。 「私は……君たちに嫌われるのが一番怖いんだ。六年……六年だよ。六年経てば小学生だって中学生になる。そんな時間離れてたのに、何でいきなり昔みたいに接する事が出来る。下手すりゃ……忘れられてたって可笑しくないんだ。なのに……なのに……」 徐々にフェードアウトしてゆく言葉と引きかえのように、啜り泣きが聞こえ始める。 「――――やっぱ馬鹿だ。お前」 裕太は大きく溜息を吐いた。 今までの自分たちの態度を見て、何か感じ取っても良さそうなのに、いまだにこの言い草である。 鈍いにもほどがあるものだ。 「たかが六年離れてただけだろうが」 勢いよく面を上げたの、涙の滲んだ眼が裕太を捉える。 うっかり鼻水でもたれそうな間抜け面を、裕太は鼻で笑うと、 「あだっ!」 身を乗り出して、間抜け面にでこピンを食らわせてやった。 「いっ、だぁ……」 が眼下でテーブルに沈み込む。それを見て、雄太はまた鼻を鳴らすと、 「たった六年でダチ忘れるほど、俺もアニキも薄情者じゃねぇよ」 誰が忘れるか。忘れられるものか。 あんなに鮮烈で、あんなに滑稽極まりない日々を、どうやって忘れられる事が出来よう。 「要らない心配してんな、」 「僕らは、何にも忘れてなんか無いよ」 苦笑する自分の隣で、兄が柔らかく微笑む。 二人の顔を交互に見やったは、次の瞬間目に涙を浮かべたまま、 「あり……がとう――――裕ちゃん、周ニィ」 あの頃と同じ、幸福そうな笑顔を見せた――――。 幼馴染は、不二兄弟。 長いです。SSSの『S』は、最初『ショート』の意味で書いていましたが、 今では『サイド』という意味になってしまった模様です。 実はこれ、序章の予定。今後、兄編と弟編に分けていきたいです。 そんな訳で、お礼SSSでした。 |
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「ちゃん、どうしたの?」 隣に座った幼馴染が、いつもの笑顔で顔を覗きこんでくる。 息も触れんばかりに近づく幼馴染のご尊顔に、はこみ上げる溜息をぐっと堪えた。 転校してきて、まずはじめに知ったのは幼馴染が学園の有名人だったと言うことだ。 都内でも強豪(と、同じくらい変人の巣窟)テニス部のレギュラーであり、誰が呼んだか「青学の天才」として近隣に名を馳せている。 かてて加えて容姿の端麗さも学内で有名になるには十分の付加価値を持っていた。 ようするに、気がついたら相手は学内限定とはいえ手の届かない雲上人になっていたのだ。 それだけだったら、もう自分の入り込む余地なんて無い。なんだか寂しいなぁと思うくらいですんだだろう。 ――――だがありがたい事に、幼馴染は六年ぶりに帰郷したを変わらぬ笑顔で出迎えてくれた。 笑って、忘れられてしまっているのではないかと不安に慄いていたを肯定してくれた。 何も変わっていない。 背が伸びた。顔立ちも変わった。声変わりだってしていた。 けれど、変わっていない。 確かに、自分の大好きだった幼馴染の姿がそこにはあった。 ――――そう、何一つ変わっていなかったのだ。 昔から幼馴染の片割れ―周助の方はなんのかんのとを猫っかわいがりした。 喩えるなら、水飴に蜂蜜をこれ以上ないほど大量に混ぜ込んだ挙句グラニュー糖でコーティングしたような。 とにかくデロデロのドロドロに甘やかしてくれた。 昔はその甘さに寄りかかりきりになっていたが、六年の歳月がをすこしだけ大人にした。 このままではいけないと、遅まきながら幼馴染離れを決意したものの、そう簡単に事は運ばない。 登校はさすがに朝練があるのでムリだが、下校は必ず一緒。 昼休みは毎日一緒にお弁当だし、休日だって用事が無ければ極力一緒にいる。 特に昼休みが厄介で、別にどっちが言い出したわけでもないのに、周助は必ずの教室へやってくる。 そして近くの生徒から借りた椅子に座り、同じ机を囲むわけだがその対話がはたから見ればどうにも恋人臭く見えるらしい。 美味そうなおかずがあれば勝手に箸を伸ばし、何気なく向こうのお弁当の内容を褒めればおかずの一つをアーンしてくれ、さらに頬についたご飯粒まで取ってくれる。しかも、手じゃなく口で。 最初の頃は二人のやり取りに唖然呆然としていたクラスメイト達も、数週間と言う短期間で耐性を身につけたらしく今では周助が教室にやってくると、進んでの席まで道をあけ椅子まで用意してくださる始末。 それはさすがに申し訳ないと、は一度だけ周助に苦言した。 何重にもオブラートに包み込み、クラスメートに迷惑をかけていることの心苦しさを、さすがにTPOは弁えて欲しい事を、せつせつと訴えてみた。 すると、周助はそれを少し寂しそうな笑顔で真剣に聞き入れてくれ、次の日には改善してくれた。 ――――わざわざどこからかスチール椅子を調達してきたのだ。 これで他の人に椅子を借りなくてもすむね、と笑う周助に、は自分の言いたいことの万分の一も伝わっていないことを知って膝から崩れ落ちた。 いや、通じてはいるのだろうが、さらりと受け流されているのかもしれない。 どっちみち、周助の座る椅子が教室の誰かさんの椅子からスチール椅子に変わっただけで、他は何も改善されていない。 結局得たものと言えば以前と変わらぬクラスメートの好奇の視線と、正攻法でこの幼馴染に敵わないという事実だけ。 しかも、最近では"好奇の目"という奴がさらにパワーアップし始めている。 要因はやはり、幼馴染にあった。 幼馴染のクラスメート兼部活仲間に、随分と人懐っこい少年が居た。 名は菊丸英二。 彼は幼馴染がの教室に遊びに来るようになると、しばらくしてからその後ろにくっついてくるようになった。 狭い机を囲み、肩を寄せ合いながら食事をするようになって、好奇の目は倍になった。 そしてまるで引き寄せられるかのように、のクラスメートであり幼馴染の部活仲間でもある桃城も一緒に机を囲むこととなった。 菊丸印の引力は留まる所を知らない。 そうこうしているうちに菊丸のダブルスパートナー大石が、周助との関係に興味をもったらしい乾が、そして部活仲間達が次々との教室を訪れるようになった。 すごい時など総勢十一名が教室の片隅を占領することもあった。 もう、こうなったら教室に留まるだけで他の生徒達に迷惑だ。 は率先して教室を出て、広い中庭や屋上で昼食を取る事にした。 が移動すれば、自然と幼馴染+α達もくっついて来る。 好奇の視線は以前より強まった気がするが、もうそんなものはどうでもいい。 周助の幼馴染でいることの有名税であると諦めた。 そんな訳で、は今日もテニス部の面々と中庭でプチピクニックを楽しんでいる。 転入当初に掲げていた"幼馴染離れ"の誓いも、いまや今日の空に浮かぶ雲のように足早に流れ去ろうとしている。 隣で笑う幼馴染の端整な顔を眺めながら、自分の意志薄弱さを責める反面――――いつか来る"幼馴染離れ"が遠のいたことに、少しだけホッとしてもいた。 幼馴染は不二周助。 前回の不二兄弟の続き。 心の中ではまだまだ甘えたいと思っている主人公。でも、それを表に出すのは恥ずかしい。 とにかく、砂糖も裸足で逃げ出すほどデロデロに甘やかす不二が書けてちょっぴり満足です。 しかしまぁ……弟編と違って、短い上に見事に会話文がないなぁ……(汗) 弟編を未読の方、よろしかったらそちらの方もごらんください。 そんな訳で、お礼SSSでした。 |
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あれは忘れもしない一ヶ月前の出来事。 六年ぶりに再会した幼馴染は、こちらの姿を上から下までじっくり見てから、一言。 「縮め」 「だ――――ッ!!」 時は移って一ヵ月後の昼休み。 氷帝学園テニス部のレギュラー達は学園内に作られたカフェテリアで優雅なお食事中――――の、一般生徒たちの奇異の視線を一身に浴びていた。 原因は、先ほど奇声を上げた女子生徒と、その女子生徒に首をつかまれがくがく揺らされているレギュラーメンバーにあった。 「君は何を考えているんだ!人の弁当のメインディッシュであるチーズ入り卵焼きを奪った挙句、さらに人の牛乳でそれを飲み干すなんて正気の沙汰とは思えないぞ!おまけに持参した煮干も一緒くたに飲むなんて……。ぺーしなさい!がっクン、お腹壊すから、ぺー、しなさい!!」 バンバンと力任せに小柄な少年の背をたたきまくる少女。 むせつつ、吐きかけつつ、少女の手から逃れた少年は、眉を吊り上げ怒鳴る。 「うっせー!俺の目の前で乳製品食うなっつってあっただろお!」 「だから、私はわざわざ君が絶対こない、こんな私自身とは場違いすぎて地球の最深部まで穴掘って逃げたくなるようなオシャレなカフェテラスで食事をとっていたんじゃないか!後からきたのはがっクンのほうだろう!そんなに私が目障りなら、無視をすればすむだけの話じゃないかあァ!」 「誰も目ざわりなんて言ってねぇだろぉーが――――ッ!!」 肺活量の限界にチャレンジするような両者の言い争いを飯の共に、ずっと傍観していた忍足は、ふっとあらぬ方向を見上げた。 「あ……。昼休み終わったァ……」 蒼穹を流れてゆくチャイムの音にも、ますますヒートアップする二人は気づこうとはしなかった……。 「……一体なにが気に食わない」 テニスコートの近く。道とコートを隔てるフェンスのすぐ横に設置された小さなベンチに腰掛け、はぼやいた。 手にはしっかり昼間食べ損ねたお弁当と箸が握られている。 視線の先には、幼馴染。 小さな体を精一杯使って、現在スタミナ問題解消のために後輩五十人抜きとやらの真っ最中である。 小気味よく後輩達を順番に下してゆく幼馴染を見ながら、はまた先ほどと同じせりふを口にした。 昔から短気なところはあったが、現在ほどではなかったはずだ。 なのに……。 「……プライドの問題やろ」 「忍足先輩」 いつのまにか、フェンス越しに忍足が近づいていた。 腕を組み、足を組み、フェンスに凭れ掛かってと一緒に向日のほうを見つめている。 「あいつ、ほんまちっこい体でガンバルのぉ」 感心する忍足に、は少し胸をはって、 「だってがっクン、自分の好きなことには全力投球な人だから。それより先輩、さっきの話……」 意味深に呟かれた先ほどの続きを促せば、忍足はあぁ、と片眉を上げた。 「やっぱなぁ……久しぶりに会うた年下の幼馴染に――――しかも女の子に背で負けたら、そら男としてプライド傷つくやろなぁて」 思ってん。そう括った忍足に、あぁと頷き返して、は一ヶ月前のことを回想し始めた。 再会してすぐ、幼馴染は"おかえり"より先に"縮め"と命令した。 "それか。今言わなきゃならんことは、それか――――ッ!!" "お前だれ?"と言われるよりマシだ。 などと思ったが、再会の言葉を期待していなかったわけでもない。 そのあと、すぐ昔のように大喧嘩が始まった。 ちょうどその場にいたレギュラーに取り押さえられなければ、蹴りあい、つかみ合い、殴り合いくらいはやっていたかもしれない。 それから、向日は息も整えぬうちに以下のことを命令した。 "一・俺の目の前で乳製品やカルシウムを含むものを食うな" "一・登下校は絶対一緒に" "一・それ以上でかくなるな" 最初は、幼いころと同じですぐに忘れると思っていた。 しかし、一ヶ月たった今でも命令が解けないところを見ると、どうやら本気のようらしい。 困ったものだとは箸を置いた。 「身長が一体何だって言うんだ。だいたい、私とがっクンは5cmも違わないじゃないか。高低差を言うなら、ペアを組んでる忍足先輩や、私と同じ後輩の鳳君や樺地君はどうなると言うんだ……」 ぼやけば、忍足は眉を下げながらこちらを見て、 「まぁ、あれや。たぶん、岳人にとってちゃんは特別。そう言うこっちゃろ」 忍足の言葉に、そう言うものだろうかとは再びコート内の幼馴染へ視線を向ける。 "そんな事気にしなくったって、がっクンが一番かっこいいのに……" しかし、言ったら言ったで顔を真っ赤にして怒るのは目に見えている。 六年の間にずいぶん気難しくなったものだと思って――――は少しだけ肩を落とした。 幼馴染は向日岳人。 なんだかんだ言って幼馴染ラヴな主人公。 でも気持ちは届かない。届けたら、怒る(照れる)から。 空回ってすれ違って、でもやっぱりどこかで繋がってる。 そんなわけで、お礼SSSでした。 |
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蒼穹に名も知らぬ小鳥たちの声が広がる朝のこと。 聖ルドルフ学院前の門前で、は一人遠い目をしてこれから通う校舎を眺めていた。 「……長かった」 こっちに帰ってきてから二週間と経ってはいないのだが、にはその二週間強がまるで十年のようにも思われる。 はゆっくり目を閉じると、まぶたの裏に二週間前の出来事を映し始めた。 すべては、帰郷してから始めて幼馴染宅へ訪問したことから始まる。 帰ってくるまでの数日間、は悩んでいた。 はたして二人は自分の事を覚えていてくれるのか。拒絶はされないだろうか。否定はされないだろうか。 不安ばかりが雪のように降り積もり、心を凍らせてゆく。 しかし、その凍えは当の幼馴染たちによって溶かされる。 "要らない心配してんな、" "僕らは、何にも忘れてなんか無いよ" 二人の幼馴染は笑っての存在を肯定してくれた。 変わらぬ二人の優しさが、涙が出るほど嬉しかった。 その後は、離れていた数年間を埋めるかのように会話に没頭した。 離れている間、どれほど寂しかったか。辛かったか。 けれど、そのおかげで少しだけ大人になれた事も、何もかも包み隠さず話した。 話は自然な流れで、お互いの近況に移る。 はそこで、驚愕の真実を知らされた。 「ゆ、裕ちゃん、青学に行ってないのか!?」 「そうなんだ。裕太、聖ルドルフ学院って所に盗られちゃったんだ」 「盗られたはないだろ……盗られたは」 俺は望んで転校したんだと、憮然とした顔で裕太は言う。 話はすぐに再開されたが、はその先をよく憶えていない。 ショックだった。 三人でまた、一緒の時間を過ごせると思っていたのに。 裕太なら同じ学年だから、もしかしたら同じクラスになれるかもという淡い期待も抱いていた。 離れていた六年間でそれなりに大人になったとは思っていたが、幼い頃に培われた"ブラザーコンプレックス"ならぬ"幼馴染コンプレックス"はいまだ根強くの中で生きているらしい。 期待を砕かれたショックに、は思わず椅子を蹴倒し立ち上がると、 「わ、私もルドルフに行く!!」 高らかにそう宣言した。 宣言したのと同時に、裕太も目をむいて立ち上がり、 「なにいってんだ、お前!今の話の流れからどうやったらそうなれんだ!?」 「だって、裕ちゃんと一緒に学校いけると思ってたんだ!なのに別の学校だなんて……。私、ルドルフ行く!ルドルフ受ける!!」 「受けるって言って受かるようなとこだと思ってんのか!だいたい、お前ン家からウチまでどうやって通う気だよっ。俺みたいに寮に入るわけにもいかねぇだろ!」 「ポイントはそこだ――――ッ!!」 は絶叫して、裕太の眼前に指をつきつけた。 「そこだ!裕ちゃんが寮生活と言うのがネックなんだッ。考えても見ろ。君は私達と学校が別でおまけに寮にも入ってる。テニススクールに行けば会えなくもなかろうが、そんなお邪魔虫なことは出来ん。と、なれば私が裕ちゃんと同じ時間を過ごす為の唯一の解決策は、同じ学校に通う。これ以外に無いだろう!ファイナルアンサーで溜める必要が無いほど簡潔で絶対の選択肢だ!!」 自信満々、一息に言い切ったを、まるでエイリアンでも見るかのように見つめてくる裕太。 裕太は疲れたように横を向くと、 「……アニキも、なんか一言このバカに言ってやってくれ」 不二は、仕方がないとでも言うようにのほうを見つめると、 「あのね、ちゃん。さすがに、今から学校を代えるのはムリなんじゃないかな。お父さんに、"青学に行く"って言っちゃったんでしょう?」 穏やかな不二の諭しに、は思わず怯むと、 「で、でもまだ編入の書類を教育委員会に送ってないし……。今からならまだ間に合うと……」 「……ちゃんは僕と一緒に同じ学校通うのはイヤ?」 寂しそうな眼をして見つめられると、昔からぐうの音も出なくなる。 は頭を抱えて机に突っ伏するはめになった。 どうにも進退窮まったの頭を、不二は優しく撫でる。 その優しいぬくもりは幼い頃とまったく変わっておらず、の胸のうちを少しだけ温かくさせた。 まだあげられない頭の上から裕太が呟く。 「……まぁ。お前が俺と一緒に学校行きたいってのは嬉しいけどな。親父さんに"青学行く"って言っちまったんだろ。それをいまさら代えるだなんて……」 ムリだろ……と裕太は続ける。 かもしれない。と、も思い始めていた。 確かに、いまさら学校を代えるだなんて、父親になんて説明しよう。 元々、勢いから言ってしまった事だ。 正直に話せば、怒られないまでも呆れられるかもしれない。 父の困った顔を思い浮かべ、は溜息をついた。 もはや、ルドルフ入学を諦める以外、道は無いのだろうか……。 まだ諦めきれずにうぅーうぅー唸っていたに、光明が差した。 救いの主は、ずっと頭を撫でてくれていた不二だった。 「でも、そんなに裕太と同じ学校に通いたいなら、裕太が青学(ウチ)に転校してくればすむんじゃないかな?そうすれば、三人とも一緒だよ」 ニコニコ笑顔の不二に、思わず固まる裕太と。 しかし、次の瞬間。 「なに考えてやがんだ、バカアニキ――――!!」 「おっしゃあ!その手があったぁ――――!!」 二人は同時に立ち上がり、不二に向って吠えた。 は目に星を讃えたまま裕太を振り向くと、 「裕ちゃん、今すぐ転校の手続きをとってくれ!」 「てめーはバカか!ンな事出来るわけねぇだろ!!俺はルドルフの生徒としてアニキを倒すって誓ったんだよ!!」 「やり方がわからないのか?だったら私が付き添おう!!」 「そういう意味じゃねぇ!!」 「あ、ちなみにいつでも転校してきていい様に、去年の裕太の制服、とってあるから。あとでサイズ合わせしようね」 「捨てろよ!つーか、決定か。俺が青学行くのはもう決定なのか!?」 「大きくなってても大丈夫だよ。私が裁縫得意なのは知ってるだろ?」 「人の話を聞けよ、このバカコンビ――――ッ!!」 コンビ――――……。 んび――――……。 び――――……。 ――――……。 「いだっ!」 脳内であの日の裕太の大絶叫を再生し終えた瞬間、誰かに頭を叩かれた。 「なに校門の前でニヤニヤ突っ立ってんだよ」 「裕ちゃん……」 そこにいたのは、朝練が終わったらしい裕太だった。 当たり前のように、ルドルフの制服を着ている。 あの後――――君が転校しないならば私が君のところへ行く!とは延々駄々をこねた。 突っ込むことに疲れ果てていた裕太は、父親に確認を取ってからな……と控えめな了承をし、不二も必ず日曜祝日は不二家によるなら……と条件付で許してくれた。 父への説得も編入試験も無事終り、はとうとう今日、念願のルドルフ学院の制服に袖を通すこととなった。 今思い返すと、あの時のあまりの必死さと馬鹿馬鹿しさは顔から火が出るほど恥ずかしい記憶だったりする。 だが、そのおかげでまた幼馴染と一緒の学校に通えることになった。過去に過去を振り返ってはいけない。人間は未来を歩んでいるものだ。 そう自分に弁明して、先に歩き出した幼馴染の隣に並ぶ。 それから、相手の制服の裾をぎゅっと掴むと、 「今日からよろしくね!」 「……おう」 照れたように頷く裕太に、もしっかり笑顔で頷き返した――――。 幼馴染は不二裕太。 前回の不二兄弟の続き。 兄編と違ってこっちは長い上にセリフが多い多い……。 主人公もしっかり幼馴染ラヴ加減を表に出しています。 もし兄編を未読の方は、よろしかったらそちらの方もごらんください。 そんな訳で、お礼SSSでした。 |
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