聖マリク魔法学校騒動記

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「っわぁぁぁ〜!!」
聖マリク魔法学校第三実験室。
神聖な授業の真っ最中にどういった訳だか悲鳴が上がり、窓から・・・
人と思しき巨大な足が生えていた。


「まぁ〜た、あなたですの?」
艶かしい衣装に身を包んだ担任、
セリーヌ嬢は怒りを通り越して呆れたような口調で言った。
目の前には殊勝そうに頭をたれている金糸の少年。
先ほどの騒動の張本人、クロードである。
「どうしてあなたはそう、問題ばかり起こすのでしょう・・・?」
問われたところで解かるはずも無い。
クロードはただ静かにこのお説教が終わるのを待っていた。



今日の授業は成長促進の魔法。
他のクラスメイト達が種に魔法をかけ、
どんどん花を咲かせているなか、クロードの種だけ一向に成長しない。
魔法が効いていないのかと何度も魔法をかける。
花に送られつづけた魔力が一定値を越えたところで、
内部に溜め込みきれなかった魔法が外部に漏れ出し、
運の悪い事に近くの人形に注ぎ込まれ・・・・・・
人形巨大化という事態に陥ったのだ。


「あの実験室、一週間は使えなくなってしまいましたわよ」
「・・・・・・」
「本当に・・・お父様とお母様はあんなに優秀でしたのにねぇ・・・」
そこで初めてクロードの肩はぴくりと震えた。
「もうよろしいですわ、お下がりなさい」
「失礼します・・・」
クロードは震える声を抑えながらそれだけ言うと、部屋を後にした。




「はあぁ〜〜〜」
見晴らしのいい屋上で、クロードは服が汚れるのも構わず寝転がっていた。
『お父様とお母様はあんなに優秀でしたのにねぇ・・・』
先ほどのせりふが頭の中を反芻する。
クロードの父親と母親は共にこの学校の卒業生だ。
現在父は王立軍隊の魔術師に、母は国立アカデミーに其々奉職している。
在学中、二人とも天才の名をほしいままにし、
卒業した後もこの学校における存在感は計り知れないものがある。
だがその息子たる自分はどうだ?
空を飛ぼうとすれば木にぶつかり、呪文も必ず間違える。
周りにかけた迷惑は計り知れない。
かくして伝説の天才の息子は、伝説のおちこぼれとかしていた。
「才能ないのかなぁ・・・」
「何をぶつぶつ言っているんだ」
後ろからふと、声がかかる。
「っ!ディアス!!」
そこにはクラスメイトのディアスがいた。
ディアスはクロードとちがって優秀な生徒である。
元々は剣士の家の出らしいが、なぜか魔法使いになる事を選んだ。
「い、いつから聞いてたの!?」
「大体五、六分前から」
ディアスはいつもの無表情を崩さずに言った。
「立ち聞きなんて趣味が悪いよ」
「では今度から座って聞こう」
ディアスは、そういう問題じゃない・・・などとぶつぶつ言うクロードの隣に座ると、
「何を悩んでいるんだ」
単刀直入に聞いてきた。
「な、悩むなんて別に・・・」
「・・・・・・」
慌てて言い返そうとしたクロードだったが、
ディアスの見透かすような蒼の双眸に見つめられ、言葉を詰まらせた。
なんで。
どうしてディアスには嘘が通用しないんだろう・・・
「今日の騒動の事か?」
「それもあるね・・・」
クロードは髪をかきあげ自嘲気味に笑った。
「どうして僕は父さんや母さんみたいになれないのかな・・・?」
いつも思っている疑問が口をついて出た。
「よく言われるんだ。お前の両親はあんなに優秀だったのにってね。
なのにどうして息子の僕はこんなおちこぼれなのかなぁ・・・」
不満を並べればきりがないけど。
「僕は、父さんたちになれないのかな・・・」
思わざるをえない。
"僕は、あの人たちになれない"
「・・・無理だろうな」
ディアスが口を開く。
「お前は、お前の両親にはなれない」
「・・・・・・だろうね」
わかっていた答えだけれど、改めて人の口から聞くと辛い。
「じゃあ、僕行くね」
「おい、クロード・・・」
立ち上がるクロードをディアスが引きとめようとした、その時。



「クロード!ディアス!」



クラスメイトのレナが飛び込んできた。
「ど、どうしたの、レナ」
苦しそうに荒い息を吐くレナに、クロードは何があったのかと戸惑った。
「じ、実験室で・・・」
「落ち着け。ゆっくりと息を吐いて・・・」
ディアスがレナの背中をさする。
そうしてようやく落ち着いてきたレナは、クロード達に告げた。


「実験室で、今日使った植物が暴れてるの!!」


特別教室のある別館へ降りたクロード達はさんさんたる光景を目の当たりにした。
廊下や教室は原形を留めておらず、
壊れたドアや割れたガラスが微かに面影を残しているのみであった。
「どうしてこんな事に・・・」
クロードが呆然と呟く。
「解からない・・・でもほとんど魔物化していて手がつけられないの」
「他の生徒はどうした」
「先生たちが結界を使って非難させてる。二人がいないって、探してたわ」
「じゃ、早く先生たちのところへ・・・」
行こう・・・、そう言いかけた瞬間。



隣の壁が爆音と共に崩れ、中からグロテスクな巨大植物が顔を出した。



「っっ!?」
「逃げるぞ!」
ディアスが二人の手を取りきびすを返した。
植物は棘のついた蔓を伸ばし、三人を捕らえようとした。
が、一歩及ばず空を切る。
三人は瓦礫の中をつまずきそうになりながら走った。
息が切れるのも忘れ、走りつづけた。
角を曲がるとドアの剥がれた玄関が見えた。



その時。



玄関前の壁を突き破り、巨大植物が這い出してきた。
「・・・そんな・・・」
クロードがその場にへたり込む。
「ちっ!」
ディアスがとっさに結界を張った。
「クロード!」
「え、何!?」
「お前確か浄化の呪文を知ってたな!?」
前に呪文書き取りの補習で散々覚えさせられたのだ。
「一応、覚えてるけど・・・」
「それを使ってこの植物を元に戻せ!!」
「なっ・・・!?」
浄化は高位の呪文だ。
先生達でもまともに使える者は少ない。
「そんなの、できるはず無いだろ!?」
「やるんだ!!でないと俺たちはこのままやられるぞ!」
「でも・・・っ・・・ダメだよ!!」
「どうして・・・」
「だって・・・僕は父さんたちじゃないから!だからそんな難しい事出来ないよ!!」
「そんな事関係あるか!!」
ディアスの怒鳴り声にクロードははっと面を上げる。
「どうして『両親』になろうとするんだ!他の誰でもない、お前はお前だろう!?
自分の力を信じろ!!」
「ディアス!結界が!!」
レナが叫ぶ。
振り下ろす蔓が今にも結界を突き破りそうだ。
「クロード!!」
「・・・解かった!」
クロードは立ち上がると、印を結んだ。
霞みのように頼りなく覚えている呪文を唱え始める。
魔力が渦を巻き、クロードのローブや髪をはためかせる。
一瞬、頬を渦が掠めた。
少し気をとられていた間に魔力が霧散しかける。
(ダメだ!)
「落ち着け、クロード」
印を結んだ手に暖かい手が触れた。
ディアスだった。
「ディアス・・・結界は?」
「レナに代わってもらった。大丈夫。あいつは俺より保護系魔法が得意だ。
それより、お前はこっちに集中しろ」
霧散しかけた魔力はディアスの力により、また渦を成す。
「落ち着いて、光りを思い浮かべるんだ。この世界を清めるような光りを・・・」
耳元で聞こえる言葉どおり、イメージを浮かべる。
もう少し。
光が足りない。
あと、少し・・・
クロードがゆっくりと唇を開く。
「クロードッ!」
レナが叫ぶ。
クロードは閉じられていた瞳を開いた。
瞬間。



「ディスペル!」



叫ばれた言葉と共にクロードの身体から、
目の眩むような光が螺旋を描き飛び出し、放たれたそれは学校中に降り注いだ。
その場が真白き光に包まれる。



一秒、二秒・・・
眩しさに目を閉じていたレナはゆっくりと瞼を開いた。
そこに巨大な植物の姿は無かった。
かわりに瓦礫に埋もれるように、花の種が落ちていた。
「クロード!」
レナは喜色も露わに振り向いた。
そこには倒れたクロードを起こしているディアスがいた。


「やれば・・・できるじゃないか」
ディアスはめったに見せない笑みを浮かべた。
「・・・・・・うん、そうだね」
クロードもつられて笑った。
この学校に来て以来、初めての満開の笑顔だった。



あとで解かった事だが、今回の一連の騒動の原因はクロードにあったらしい。
クロードの使っていた花の種が後になって発芽し、あのような姿になったのだ。
無論、あとで思いっきり油を絞られたのだが。
それ以来、クロードはよく笑うようになったらしい。



「うわぁ!失敗したぁ!!」
「またですの――!?いい加減になさ〜〜〜い!!」
―――トラブルメーカーぶりは相変わらずだったけど・・・

あとがき

はーいvキリ番7777ゲット有難う存知マース!

で、皆さんの言いたいことは解かってます。
上記の小説のどの辺がきりリクに沿ってんねん!!
解かってます。ええ、わかってますよ。
分かってても書けなかったんだい!!
はっきり言って完全パラレル!!
しかもロニキスやイリアの一文字もナッシング!!
あはははは、でも魔法少女って具体的にどういうものかわかんないんだよぉうい(泣)
すんません、朝霞さん。これで許してください・・・(号泣)

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