災難(?)
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―――たとえばそれを夢だったと思うこともできるだろう。 事実、それは現実的に絶対有り得ない事だったからだ。 だが違う。 それは夢幻しではなく現実。 そして、『彼』にとっては災難以外の何物でもなかったのである・・・ その時。 彼らは戦闘をしていた。 強くは無いもののいかんせん数が多すぎる。 クロード達は切り捨てても切り捨てても出てくる敵に少々いらだっていた。 ・・・それが油断を招いたのである。 「くそっ!」 血を噴出しながら倒れる敵を見て、クロードは毒づいた。 振るう剣がだんだんと重くなってきた。 苛立ちばかりが募る。 水を欲する喉は、息をするたび笛のような音を立てた。 (いつになったら終わるんだ・・・?) 果てはまだ見えない。 「クロード!」 「えっ?」 ぼんやりしていたクロードはその声に振り向いた。 襲い来る敵が見えた。 だがもう遅い。 (殺られる!) クロードは反射的に目を閉じた。 (・・・・・・?) だがいつまでたっても衝撃はこない。 そぉっと目を開ける。 視界に移ったのは闇だった。 いや違う。何かの布だ。 「アシュ・・・トン・・・」 「無事?クロード」 そこには自らを楯にしているアシュトンがいた。 「無事なら・・・善・い・ん・だ・・・」 力なく笑うと、アシュトンの体は崩れ落ちた。 体を包み込んでいた温もりが消える。 「アシュトン・・・?」 揺すった手にべたりと血がこびり付いた。 戦闘の後、アシュトンはレナの手当てを受け、一命を取り留めた。 だが、まだ意識は戻らない。 「ごめんね・・・・・・」 聞こえていないと解かっている。 でも言いたい。謝りたい。 知らず知らず、クロードの目には涙が溜まっていた。 「うっ・・・」 アシュトンが微かにうめく。 クロードの顔に喜色が差した。 「!!れ、レナ!アシュトンが・・・」 「だーもう!この馬鹿!」 「お・・・き・・・たよ・・・」 「人を庇うのはいいが俺様達に実害無いようにしろ!おかげでこっちまで気絶なんて羽目になったじゃないかぁぁ!!!!ってあれ?」 飛び上がるように跳ね起きたアシュトンは、いきなり怒鳴りだすと、又いきなりきょとんとしてしまった。 「ああ?なんだ、これ・・・?」 「あ、あ・・・」 きょろきょろとあたりを見回すアシュトンを見てクロードは、 「レナ―――!は、早く来て――――!!アシュトンが壊れたぁ――――!!!」 「・・・つまりこういうことですのね?」 セリーヌはずきずきと痛むこめかみを抑えながら続けた。 「怪我をしたショックでギョロとアシュトンが入れ替わり、今アシュトンの体に入っているのがギョロ、ギョロの体に入っているのがアシュトン。そういう訳ですわね?」 「ああ」 アシュトン=ギョロはあっさりと肯定した。 「・・・やっぱり僕のせい?」 クロードがおずおずと言い出す。 ちなみにセリーヌは頭痛が激しくなったらしく後ろに引っ込んでいる。 「お前のせいじゃないだろ。勝手に飛び出したのはこいつだ」 いまだ気絶しているアシュトン入りギョロを持ち上げながらギョロは言った。 「どうすれば元に戻るの?」 「そうだな・・・」 レナの問いに、ギョロはしばらく考え込むと、きっぱり顔を上げて、 「知らん!」 ―――全員が殺意を覚えた瞬間だった。 「・・・ごめん」 「そういう事はこいつが起きてから言えよ」 「ごめん」 ギョロはふっと溜息をついた。 今この場にはクロードと体の入れ替わったギョロの二人だけ。 他の皆がいなくなってから同じ会話が繰り返されている。 「本当に・・・」 「しつこいな、言いっつってんだろ?謝ったって起こったものはもうしょうが・・・」 そこまで言ってギョロは言葉を切った。 「・・・っく」 クロードは泣いていた。 声も立てず、必死に嗚咽を噛み殺していた。 ギョロの中にちくりとした罪悪感が過ぎる。 「・・・悪い、言い過ぎた。だからもう泣くな」 「っふ・・・く・・・」 それでも涙は溢れ出る。 「・・・」 ギョロはクロードの頬に手を添えると、涙を舐め採り始めた。 びくりと身を竦ませた隙を突き、強引に口付けた。 「うっ・・・」 強引に歯列を抉じ開ける。 「んぅ・・・っふ・・・」 息を継がせぬほど舌を絡ませる。 どちらのものともつかぬ銀の雫が溢れ、服にシミを作った。 「く・・・ふぅ」 くちゅ・・・ 湿った音を立て、ギョロは唇を離した。 突然の行為にクロードの目は開かれたまま焦点が合っていない。 「おい、大丈夫か?」 ぺちぺちと頬をはたく。 それでもまだクロードはぼんやりとしている。 「クロー・・・」 「・・・の・・・」 「へっ?」 「ギョ・・・の・・・」 途切れ途切れの言葉を聞こうとギョロが顔を近づけた、その時。 「ギョロのばかぁ〜〜〜〜〜〜!!!」 戦闘時より数倍気合の入ったバーストナックルが腹を直撃。 地面を削りながらギョロは何処かへと吹っ飛んだ。 「だいっきらいだぁ〜〜!」 クロードが泣きながら走り去った後、その場には焼け焦げた地面だけが残された・・・ 後日。 無事発見された(怪我でぼろぼろの点を除けば)アシュトンは、 ちゃんと自分たちの体に戻っていた。 だが、なぜか入れ替わった日以来、口を聞いてくれなくなったクロードの態度に、アシュトンは数日間悩みぬいたという。 ―――さて、今回の騒動で一番得をしたのは誰でしょう? |
あとがき
はい、毎度おなじみ(?)777HIT有難うございます
今回はよりいっそうわけわからん話になっております(爆)
何なんでしょうねぇ?このまとまりの無さは。
クロードの性格女々しいし、ギョロ別人だし・・・
これでもずいぶん削った方なのに長いし・・・
でも冒頭で戦闘シーンが書けてちょっと満足vv(爆)
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