策士の微笑
≫戻る≪
久しぶりの宿。 久々の人並みの夕食。 だが事件は、その楽しいはずの夕食時に始まった・・・ 「ごちそう様」 「・・・レオン?」 まだだいぶ残っている皿を見てクロードは眉を寄せる。 「まだたくさん残ってるよ?」 「そうですわ。好き嫌いはいけませんわよ」 隣から自分もちゃっかり肉類を残しているセリーヌが口を出す。 「ごめん。食欲ないんだ」 申し訳なさそうに言うと、レオンはそのまま食堂を出て行った。 「・・・何かあったのかな?」 「ここ最近残してばかりよ」 アシュトンとレナも心配そうに、 レオンがさっきまで座っていた椅子を見つめた。 「心配事でもあるのかな?」 「ありえますわねぇ」 只でさえ普段から弱いところを見せないレオンの事だ。 悩みがあったって自分ですべて解決しようとするに決まってる。 「心配だな・・・」 クロードはレオンの去っていったドアを、見つめながら呟いた。 その夜。 レオンの部屋。 こつこつ 「はい」 「レオン。僕だよ」 「お兄ちゃん・・・」 ドアから顔を出したのはクロードだった。 レオンが寝台から起き上がる。 「入っていい?」 「・・・どうぞ」 クロードはレオンの横に腰掛けた。 そのまましばらく沈黙が続く。 「・・・・・・」 「・・・・・・何のよう?」 レオンがぶっきらぼうに口を開いた。 「いや、今日夕食残したから、どうしたのかなって・・・」 クロードが視線をそらしながら云う。 「食欲がなかっただけだよ」 「昨日も残したろ」 「昨日も食欲がなかった」 「おとついも、その前も、その前の前も・・・」 「・・・・・・」 「なあ、何か悩み事でもあるのか?」 「・・・・・・」 レオンは俯き、黙り込んでいる。 クロードも黙ってレオンの言葉を待った。 眩いほどの月明かりが部屋に差し込む。 カーテンが夜の風と戯れる。 心臓の音が五月蝿いほどの静寂の中、 少年たちは互いの言葉を待った。 「・・・あのさ」 沈黙に耐えられなくなったのか、クロードがポツリと口を開いた。 「悩みって、人に話せば半分になるんだよ」 レオンが弾かれたように面を上げる。 そこには、月明かりの中、微笑むクロードがいた。 「・・・実はね」 レオンが静かに語り始めた。 「好きな人が、いるんだ」 「好きな、人?」 意外な言葉だった。 レオンに、好きな人・・・ 「びっくりした?」 「・・・ちょっとだけ」 クロードは素直に言った。 「その人の事、凄く好きで、考えるだけでこう、」 レオンが服の上から胸を抑え、 「心臓≪ここ≫が、ぎゅってなるんだ・・・」 切なそうに、呟いた。 「そんなに好き?」 レオンがこくりと頷く。 よく見ると耳元が真っ赤だ。 (レオンも、やっぱり普通の子供だったんだな・・・) いつも大人びた発言ばかりしているレオンが恋煩い・・・ 相手は誰だろう。 レナ?セリーヌさん?それとも自分の知らない誰かか・・・ クロードはなんだか微笑ましくなってしまった。 「告白はしたの?」 「そ、そんなこと出来ないよ!!」 レオンは顔を真っ赤にして叫ぶ。 「僕、嫌われたくない・・・」 そうして又俯いてしまった。 「嫌うなんてそんな」 「だって、云ったらその人僕のこと嫌いになるよ、絶対」 「自信がないの?」 レオンは小さく頷く。 そんなレオンの頭を、クロードは優しく撫でた。 「大丈夫だよ。レオンに好きって云ってもらって嫌がる人なんていないよ」 「・・・本当?」 レオンの眼が潤む。 「うん、自分に自信をもって」 クロードは安心させるように微笑んだ。 「じゃあ、あのね」 レオンがゆっくりと、口を開く。 「僕、お兄ちゃんが好き」 「・・・えっ?」 思わぬ言葉にクロードは笑顔のまま凍りついた。 「僕、お兄ちゃんの事がずっと好きだったんだ」 「い、いや、ちょっと」 「お兄ちゃん嫌いにならないって言ったよね」 「い、云いました。云いましたけど・・・!」 レオンがじりじりと迫ってくる。 それにあわせてクロードも後退。 だが狭い寝台の上。 すぐに壁際に追い詰められた。 「お兄ちゃん・・・クロード」 レオンの顔がゆっくりと迫ってくる。 「ちょ・・・まって・・・うわぁぁぁぁ!!」 「どうしたの!クロード!!」 クロードの悲鳴を聞きつけ部屋に乗り込んだアシュトンは、 不幸にもこの尋常ならぬ事態の第一目撃者となってしまった。 そこには少年に馬乗りに押し倒されている仲間の姿が・・・ しかも二人の顔はしっかりくっついている。 「っわぁ――!!クロードがレオンに押し倒されてる――!!!」 夜半近くの宿に轟く悲鳴。 「ええっ!何!?どうしたのアシュトン!!」 それに応じて駆けつけてくるほかの仲間と宿の人間。 (何でこうなるんだよぉぉぉ!!) クロードはドミノ倒しのように崩れていく日常を感じながら叫んだ。 無論、口は塞がれていたので本当に叫ぶ事は出来なかったけど。 ---ちなみに、レオンの食欲不振が、 クロードを手に入れるための演技であった事に気づくのは数日後。 この罠から抜け出せるがどうかは・・・また、別のお話。 |
あとがき
では、毎度のごとく5900HIT有難うございますv
例のよって例のごとくタイトルに何ら意味はありません。
只、作中のレオンが子悪魔というより策士っぽいと思ったから(笑)
ついでにクロード。
七つも年下の奴に軽々と押し倒されるなよ・・・
なんていう突っ込みも無視してくださいv(爆)
細かい事気にしてたら自分の小説読めませんvv(再爆)
≫戻る≪