狂恋
〜pure〜

戻る

人とはなんと傲慢な生き物なのだろう。
人とはなんと自己中心的な生き物なのだろう。
人とはなんと愚かな生き物なのだろう。


なんと、なんと・・・・・・私は愚かな生き物なのだろう・・・



人の想いなど、とうに捨てたと思っていた。
あの気の遠くなるような刻の中で。
『人』というものなどとうに捨てたと思っていた。

しかし彼に出会った瞬間に蘇る。
眼を見張るほどのスピードで。
人としての想いが蘇る。
君が望むのならば、私は喜んで全てを与えよう。
この腕<かいな>を伸ばし、引き寄せ、抱きしめて手に入るのなら、私はいくらでもそうしよう。

だが皮肉なものだ。
彼が私を見る目には常に黒い炎が宿る。
恨み。憎しみ。そして憎悪。
それが、彼の私に対する全てだった。
彼は私に何も望まず。
彼は私を見ず。

私は彼を望んでいるのに。
私は彼を見つめつづけているのに。

君はこの想いを何処へやれというのか。
君はこの想いを殺してしまえというのか。

・・・・・・君は私を殺す気なのか?

嗚呼、私はこんな言葉で君を壊そうとするのか。
自分の浅儚さに嫌気がする。
だがそれでも、
たとえそうでも、
君を欲することを止められないのだ・・・・・・





漆黒が辺りを覆い、月明かり一つ無い林の中。
クロードは寝巻き姿のまま林の中を歩いていた。
頬を撫ぜる冷たい風。
空を見上げれば、星一つない本当の闇夜。
だが、見上げた空の先に想うのは亡き父の事だった。
(死んだら好きになれるかな・・・)
いつか思ったあの言葉。
だが実際父の乗ったカルナスが討たれたのだとわかった時、心を占めたのは父に対する後悔と、自分に対する責めと、・・・初めて人を殺してやりたいという衝撃だった。
相手を殺したところで父は戻らない。
けれど、
理屈ではわからない感情が沸いてくる。
殺してやりたい。
胸にわだかまるムカツキ。
クロードは唇をかみ締めると、無言で歩きつづけた。

あまり広くない林が終わろうとした頃、目の前に一片、『羽』が落ちてきた。
「これは・・・」
それを手に捕ろうとしたとき、ふわりと音も立てずに人影が舞い降りてきた。
クロードはその人影を見て目を見張る。
「ルシフェル・・・」
それは彼がもっとも憎く思う男の姿だった・・・




「どうしてお前が!」
彼は叫ぶ。
蒼い瞳が驚愕に見開かれ、その瞳の中に自分が移るのを好ましく思う。
宿の近くだからか。
武器は持っていないらしい。
隙を見せない身のこなしで愛しい相手との距離を縮める。
とっさに後ずさろうとした躯に腕を絡め荒々しく抱きしめる。
腕の中に収まる細身に眩暈がしそうだ。
「!何をする気だ・・・!!」
「決まっているだろう・・・?」
そぅっと取った手の甲に唇を落とす。
なお抗おうとする彼に、堕ちた天使は蕩けるような甘い声音で囁き掛けた。


「・・・迎えに来たよ。私の、花嫁・・・・・・」

あとがき

では、いつものごとく、
キリ番555番有難う存知ます。

だから、なんやねんという突っ込み、真に有難うございます。
ルシフェル一人称置いてみたり、えらく中途半端な位置に3人称置いてみたり、いろいろやって見ました。
個人的にルシクロシリアスのコンセプトは『狂う恋』
そしてギャグのコンセプトは『果てしない一方通行』(爆)
いろいろありましたが、何とか上がりました。
嗚呼、今度はギャグ書きて―!!(禁断症状)

戻る