コイノビネツ
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あの日から熱が冷めない。 じんわりと体を覆うような微熱。 けれど、心地よい微熱・・・ 空は快晴。 誰もが訳も無く心躍る、そんな日のこと。 ここに一人、えらくテンションの低い人物がいた。 十賢者ヶ一人、情報収集用素体、サディケルだ。 とりあえず変装しているから彼が十賢者である事に気が付く者はいないようだが、 それにしても何故、彼がこんな街中にいるのか・・・? 実は今、彼はある調査についていた。 その任務とは、先日エルリアタワー内にて遭遇した少年、 クロード=C=ケニ―を調査する事。 これから先、最大の障害となるのはきっと、ネーデ軍ではなくあの数名のパーティだろう。 そこで彼らの中でリーダーと思われる少年の戦力調査をしてもらいたい。 事前に調査しておけば相手の事を何もわからぬままよりも、 これから戦いやすくなるはずだ。 以上がサディケルに話された内容である。 なぜ、ガブリエルではなくルシフェルがこんな事を言ったかはしらないが、 ともかく37億年ぶりの『仕事』である。 サディケルは張り切っていた。 の、だが。 当の相手はというと両の手いっぱいの買い物袋を抱え、 「重い〜・・・」 あっちへフラフラ。 こっちへよたよた。 危なっかしい事この上ない。 それを避ける周りの人々も必死だ。 (あっぶないなぁもう・・・あ、又こけかけた!) さっきから彼の様子をずぅっと見張っているのだが、いかんせん危なさ過ぎる。 何度声を上げようかと思った事か・・・ サディケルがクロードを見ながらやきもきしていた。 その時。 どんっ! 「うわっ!」 「いってぇ!」 道の向こうから走ってきた大男にクロードはぶつかり倒れた。 買い物袋の中身が道に散乱する。 「ご、ごめんなさい」 「いってぇな、この野郎。何処見て歩いてやがんだ!」 「本当にすみません!」 「謝ってすむ問題か!!」 ガッとクロードの胸倉を掴む。 男との身長差のせいでクロードの足は地面から離れる。 周りに人が集まってきた。 「どう落とし前つける気だっ!!」 「ちょ、苦し・・・」 クロードの顔が苦痛に歪む。 (もう・・・見てられない!!) 「ちょっと!」 クロードと男の間に割り込むものがいた。 サディケルだ。 「誰だ、てめぇ・・・」 男がクロードから手を放す。 クロードは男から解放された胸元を正しながら、目の前の少年を不思議そうに見つめた。 「さっき見ていたんですけど、あれは貴方にも過失がありますよ」 「なにぃっ!」 「この人は荷物によって殆ど前が見えない状態だった。避けられないのは予想できるでしょう?それに道はまだこんなにあるんだ。僕には貴方がわざとこの人にぶつかったとしか見えませんでしたね」 「この餓鬼・・・!」 男は顔を真っ赤にしながら今度はサディケルの胸倉を掴んだ。 「・・・野蛮人が」 呆れるような溜息をつきながらサディケルは男の顔の前に掌をかざした。 瞬間。 ドウンッ! 見えない『何か』によって男の体は後ろの壁目掛けて吹っ飛んだ。 常人には聞こえないほどの『音』を利用した衝撃波。 いつも持っている武器がなくともこれくらいはできる。 「ぐ・・・う・・・」 男がよろよろと立ち上がる。 「どうします?まだやりますか?」 冷徹な笑みを浮かべ男に問う。 「くっそ!覚えてやがれ!!」 お決まりの科白をはいて、男は人ごみの中へと去っていった。 そして集まっていた人々も自然散り散りになってゆく。 「あ、有難う」 「・・・いえ」 それだけいうとサディケルは散らばった買い物袋の中身を集めだした。 (どうしてこんな事したんだろう) サディケルは自分自身の行った不可解な行動に混乱していた。 放って置けば戦闘データが取れたかもしれないのに・・・。 ただなぜか・・・あの時はああしなければいけないような気がした。 「ハイ、これで全部」 「うん、助かったよ」 「それじゃ、これで・・・」 「あ、待って!」 拾った荷物を渡し、去ろうしたサディケルをクロードは呼び止めた。 「まだ何か・・・」 「これあげる」 放物線を描きながらよこされたのはさっき拾った林檎だった。 「それはお礼。本当に有難う、又ね!」 それだけいうとクロードは人ごみの中へと消えていった。 「・・・又ね?」 繰り返された云葉と共にさっきのクロードの鮮やかな笑顔が蘇える。 とくん 「あれ・・・?」 思わず心臓を服の上から抑える。 動機が止まらない。 体から熱が・・・・・・引かない。 その後、フィーナルに帰った後も彼は訳の分からない熱に悩まされつづけた・・・ |
あとがき
2222HIT、毎度有難うございまするぅ。
・・・で、どの辺がサディクロ?
という疑問もごもっともでしょう。
ええ、本人すらわかりませんもの(爆)
今回も落ちがなんだか弱いです。
しかもちゃっかりルシフェルだしてるし。
ふふ、殆ど自己満足ですね・・・
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