オペラ様の逆鱗

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―――ここに一人の青年がいる。
ある者は彼を『最強の剣士』だと言い、又ある者は『氷の様な心の持ち主』だと称した。
だが、それとはまったく異なる言葉で彼を表すものもいる。
曰く『宇宙の災厄を一身に背負う者』と・・・



「おねがい!」
もう何度目かの言葉にセリーヌは重たげな溜息をついた。
今目の前で両手を合わせているのは仲間であるオペラ=ベクトラ。
プライドの高いオペラがセリーヌに何を頼み事かというと、なんと媚薬の製作。
「お願い!セリーヌ以外頼める人っていないのよ」
「ですから、どうして媚薬なんて作って欲しいのか理由をおっしゃいな「それは言えない」
カッコを閉じる余裕さえ与えぬ即答。
この無駄極まりない会話が実に一時間前から繰り返されていた。

「・・・わかりましたわ」
「えっ」
「わかりました、作って差し上げますわ」
「本当!?」
「ええ、ですから・・・」
「何?お金取るの?」


「私の頭に照準を合わせているこの武器を退かして下さらない?」


バタン。
オペラが出て行くと同時に、セリーヌは息を零した。
オペラがあんなに必死になるなんてどうせディアス絡みだろう。
共に形は違えど愛する者を失った同士。
惹かれあうのにさほど時間はかからなかっただろう。
うまく隠しているようだが、他人の恋愛事に聡いセリーヌには一目でわかった。
それ以来セリーヌは蔭ながら二人を応援している。
無論、オペラはともかく『あの』ディアスは気づいていないだろうが。
「それにしても・・・」
新しく買ったエネルギーボックスの実験台にディアスを使ったり、
わざわざ数メートル離れた町へ行くためディアスにカモンバーニィで送ってもらったり、
調理レベル10のディアスに酒を大量生産してもらったり・・・
本当に二人は『付き合っている』と言えるのだろうか・・・?
「ま、私には関係ないお話ですけど」
呟いたセリーヌは、頼まれた媚薬を作るため作業を開始した。

其の頃。
オペラは自室にて薬が出来上がるのを待っていた。
オペラがセリーヌに媚薬を作ってくれと頼んだ理由。
それはやはり最愛の人、ディアスにあった。
エルネストを亡くした後、何も言わず傍に居てくれたのは彼だった。
徐々に意識してゆき、その感情に名前をつけるようになった頃、
オペラは告白をしディアスもそれに答えた。
と、そこまでは良かったのだが・・・
「如何していってくれないの・・・?」
実は今まで一度もディアスから「好きだ」と言われたことは無い。
告白もオペラからだし、デートに誘うのもオペラ。
本当に、彼は自分の事を好きなんだろうか。
只の同情ではないのか。
日に日に募る不安に、オペラは遂に決心した。
それは媚薬を使って、彼に好きだといってもらう事。
薬に頼るなんて邪道かもしれない。
けれど・・・
「そうでもしなきゃ押し潰されそうなの・・・」
オペラは切なく鳴る胸をぎゅっと抑えた。


「出来ましたわ!」
セリーヌは薬瓶を誇らしげに掲げた。
試行錯誤を繰り返す事三時間。
ようやく媚薬は出来上がった。
通常、調合で媚薬は出来ぬのに作れたのは何故か?
・・・細かい事は置いといて。
「さぁ、さっさとオペラに渡してきてしまいましょう」
瓶に蓋をし、急いで部屋を出た。

ドン!
「キャッ!」
「おっ!」
出た途端に誰かと激突。
セリーヌは床にしりもちをついた。
「いったぁ~い・・・」
「・・・なんだ?これは」
「へっ?ああああ~!!」
ぶつかった相手はディアス。
しかも瓶は割れ、中身は相手にぶちまけられていた。
「あの、これは・・・んっ?」
慌てて弁解し様としたセリーヌだったが、ディアスの様子がおかしい事に気づいた。
「ディア・・・」
「セリーヌ」
がしっと両手を掴まれ、至近距離で、
「お前が好きだ」
「へっ?」

「ディ~ア~ス~・・・!」

廊下に響く地獄の底を這うように低い声。
セリーヌは機械人形のようにぎこちなく声の方を向いた。
そこには、
「この浮気者~」
地獄の鬼すら平伏すオーラを放ち仁王立つオペラの姿があった。
「オ、オペラ!違うんですの、これは・・・」
「問答無用!」
何処から取り出したのか、ライフルを構えるその姿は・・・!

「くらえっ!α・オンワン!!(Lv86)」

唸る閃光と炸裂する光弾。
標的を違わぬ腕にてディアスに命中。


「ディアスの莫迦~!!」
オペラが泣きながら去った後には、ディアスと思しき炭が一つ。
運良く難を逃れたセリーヌはポツリと、
「アシュトン以上に不幸な人間もいますのね・・・」


今回の教訓
何があってもオペラ様を怒らせる事だけは止めましょう。

あとがき

キリ番1234番有難うございます。

オペラ様最強説浮上(爆)
今回ディアスえらい不幸です。
キャライメージ壊れたって苦情がくるかも・・・
最近ノーマルだったら何でもいけるんじゃないかと思い始めた今日この頃。
ああ、節操無し・・・
でもアブノはクロ受けだけだもん!!
いくらマイナーでもいいの(笑)

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