夕餉の支度

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町からもだいぶ遠い場所にある森の中。
日も暮れてきた為、クロード達はここで野宿をする事となった。
テントも張ったし火も起こした。
最重要な事は一通り終わった。
続いて問題になるのは、食事当番。
いつも作る人間が固定されてしまうため、ここは一つ厳正にあみだくじで決める事に。
その結果、見事当りを引いたのが、ボーマンとクロードだった。


「おい、俺味覚のスキル持ってないんだけど?」
「大丈夫!クロードがもってますから!」
「調理レベルも低いぞ」
「クロードがLv10だから心配ありません。それにボーマンさん包丁のレベルは10でしょ?材料切る位なら出来ますって!」
ニコニコと答えるレナに対し、引き攣り笑顔のボーマンは、
「・・・誰かに胃薬でも調合してもらっててくれ」
力なく云った。


「何で俺が・・・」
「仕方ないでしょう?決まっちゃたものは」
ぶつぶつと不平を言うボーマンの隣で、クロードはさっさと用意をし始めた。
「ハイ、ボーマンさんジャガイモ剥いて」
「おう」
男二人、エプロンをつけ黙々とジャガイモを剥く姿はどこか哀愁漂う。
「うまいな」
「ボーマンさんも上手ですよ」
感心するボーマンに、クロードは照れながら云う。
しばらくは和気あいあいと作業は進んだ。



「たっ!」
クロードが小さく声を上げた。
見れば掌からぼたぼたと血が滴り落ちている。
「おい!大丈夫か!?」
「大丈夫です。あ〜あ、ジャガイモ駄目になっちゃった」
落とした泥だらけのジャガイモを見ながら悲壮に呟く。
「莫迦!そんな事気にしてる場合か!」
喋っている間にも血はどんどんと溢れ、地面に吸い取られてゆく。
「でも、なんか痛くない・・・」
「お前何処まで鈍いんだぁ!!ちょっと貸せ!」
「へっ?・・・ちょっと!」
ぐいっとクロードの手を掴んだボーマンは、そのまま掌の傷口を舐め始めた。
「ボーマンさん!」
「応急処置だ。騒ぐと歯ぁたてるぞ」
クロードは驚いて手を引っ込めようとしたが、強く捕まれている為動かない。
仕方なくクロードはおとなしくする事にした。

(誰かに見られたらどうしよう・・・)
あたりは音一つない。
手を伝う舌の感触がいやにリアルに感じる。
早鐘のような心音がうるさい。
一瞬、柘榴のように紅い舌が傷口を舐る様子が見えた。
ぞくりと躰の奥が震える。
とっさに、火照る頬を見られぬよう顔を背けた。

「おい、終わったぞ」
「へっ?ああ・・・」
見ると手はすでに解放され、傷口は綺麗になっていた。
「あ、有難うございます・・・」
「別にいいって」
そう云いながら、ボーマンは口の周りに付いた血を舌で舐めとっている。
又、ぞくりと躰が震えた。

「どうしたんだ?」
「えっ・・・?」
いつのまにかクロードは両手を拘束されていた。
「顔、赤いぞ」
「そんなことっ・・・!」
背けた顔はたやすく相手に引き戻される。
うっすらと笑う端整な顔が視界に飛び込んできた。
「なんだったら・・・」
唇が意地悪そうにゆがむ。



「他のところも嘗めてやろうか?」



「ちょーっとやり過ぎたかな?」
ジンジンと痛む片頬に手を当てながらクロードの去って行った方を見つめる。
足元には食料や鍋が無残な姿で転がっていた。
「まぁ、とりあえず・・・」
にやりと笑みを浮かべ呟く。
「長期戦覚悟だな」

あとがき

ヒット1111番ありがとうございます。
なぜか今までHPに登場していませんでした。
自分でもよく理由は分かってません(笑)
内容に関しては筆遣いが稚拙過ぎて笑うに笑えませんが・・・・・・

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