うらのおと ご訪問御礼

おとなのための男同士の恋愛小咄
18 歳未満の方はお戻りください






人前で脱ぐのは勘弁してくださいっ! マジっすっ!


「本日も当サイトへご来場くださりありがとうございました!」

拓真「したっ!」

「お帰りの際にお時間がございましたら、お手元のアンケート用紙にご記入のうえ、受付の回収ボックスへお入れください。お近くのスタッフに直接渡してくださってもかまいません。今後の参考にさせていただきますので、よろしければぜひご協力お願いいたします!」

拓真「……晶、晶、間違うてる……」

「へ?」

拓真「受付とか回収ボックスとかないし、スタッフも立ってへんから。てゆか、そもそも紙もんがない。ここは芝居小屋と違います……」

「あ、しもた。つい、いつもの調子で……」

拓真「えーと、アンケートについては、えと、六月末やったっけ?」

「はい。そです。六月末頃までをめどに公開しておりますので、ぜひともご協力ください。また、メッセージボックスと掲示板については常時稼働中ですので、その間もいつもどおりご使用いただければと思います。せーの」

二人「よろしくお願いしますっ!」(アンケートは終了いたしました。ご協力いただいた方々にはありがとうございました! ……ふゆ談)

拓真「そしてもひとつ」

「はい。もひとつご注意が」

拓真「注意っちゅーかなんつーかその」

「注意っていうより弁解やよね」

拓真「弁解っちゅーか、謝罪っちゅーか……」

「……謝罪……」

拓真「いくぞ、せーの」

「せっ」

二人「すみません! 勘弁してください! おれらにはできません!」

拓真「で、その謝罪の内容。これ」

「ええと、ご覧いただけますでしょうか。拓真の手にある、これ」

拓真「ひとつは、えーと、台本、です……」

「もひとつ」

拓真「…… DVD, です……」

「出演者は?」

拓真「こちらの台本の出演者は、えー。坂崎さんと柏原さん、でして」

「もひとつ」

拓真「DVD のほうは、えー……川島さんと康太、でした」

「そしてこちらにお手紙が一通。えと、読みます。拝啓 いつも楽しい舞台をありがとうございます。さて、神戸から始まりましたご訪問御礼の旅ですが、そろそろ辻本邸での撮影にまいりたいと存じます。ご参考までに現在までに公開されましたご挨拶を同封いたしますので、辻本さまたちにはもちろん、これまでのご挨拶を踏まえたうえ、なお一層のサービスをお見せいただきたく、謹んでお願い申しあげます。敬具 坂崎拝」

拓真「はい。で、ですね。あー」

「はい」

拓真「おれらにはできません! 無理です! 勘弁してください!」

「……というようなしだいでして」

拓真「ていうか、なに考えてんのよ、このひとたちは。おれには露出狂の趣味はない。これっぽっちもない!」

「まぁ、ぶっちゃけ、裸エプロンぐらいならええかもとは思うんやけどねぇ」

拓真「ふーざーけーんーなー。おまえはともかく、おれにそんなん似合うわけないやんけ! てゆか、人前で脱ぐとか無理。勘弁して。あんたは舞台の上でえっろいかっこしてることもあるからええんやろうけど」

「なにそれ。ひとのこと露出狂のストリッパーみたいに。上半身脱いでるだけやんか。それぐらいで騒ぐな。拓真はワンピース水着しか着たことないんか」

拓真「ものにはそれにふさわしい場所っちゅーのがあるてことやんけ。道歩くときに水着では歩かへんわいっ」

「おれかって道ばたで脱いだりせーへんよ。ご挨拶の場やねんからそれぐらいはええんちゃうんて話やん。どうせエプロンで危ないとこは隠れるやん」

拓真「これやから人前でカラダさらすの抵抗ないやつはー。ケツはどうすんのよケツは! 見せられるかっ!」

「なんでそやって、ひとのこと変態みたいに言うかな! ぎりぎりそれぐらいやったらできるかとか、そーゆー話をしてるんやん!」

拓真「できるかっ! おれはおまえらと違て常識人やて言うてるやんけ!」

「ひとを非常識のかたまりみたいにー!」

拓真「乳首見せて女の子にキャーキャー言われてうっとりしてる時点で変態やんけ! ……つか、ぶっちゃけそのへんてどうなのよ。えっろい写真とか撮られてちゅーとかされてるかもしれへんとか思たら気持ち悪ないん」

「ダンスとは関係なく単体でキャーキャー言われるのは、正直どうでもええよ。つか、別に乳首見せるために脱いだんちゃうっちゅーねん」

拓真「おれ、だめ。おまえの写真で抜いてるやつがおるかと思たら、気ぃ狂いそう」

「あー、相手がオトコの場合ってこと? おれみたいな健康的な写真で抜くやつおれへんと思うねんけど。康太のビデオはやばいと思うけど」

拓真「えろいっちゅーねん。こうのけぞった瞬間につい一時停止ボタンを……」

「……拓真、おれの DVD で抜いてんの……?」

拓真「あ」

「どっちが変態やねん! ひとの写真で抜くな!」

拓真「変態ちゃうやんけ! それこそ健康的やろーが! 恋人の写真で抜くののどこがあかんねん!」

「目の前に実物がいてるやん! 抜きたなったらおれ抱いたらええやん!」

拓真「せやって、あんた、なかなか部屋におれへんやん。おれかって独り寝がさみしい夜もあるんですよ……」

「う…… そんなん…… 電話してきたらええやん…… テレフォンセックスの相手ぐらい、おれ、すんのに……」

拓真「え? え、ええの、晶?」

「おれかってときどき……さみしいもん」

拓真「晶……」

「拓真……」

拓真「き、キスぐらいなら、ええかな、人前でも」

「ん…… ええと思う。しよ?」

拓真「晶……」

「ん……」

香苗「はーい、そこまでー。るみが起きましたー。教育的配慮をお願いしまーす」

拓真「ぶっ!」

「おー。るー。おっきしたかー」

拓真「……またかよ。なんでいっつもこうタイミング良く……」

「るー、るー。おはよー」

るみ「ばいばい?」

「えらいえらい。上手にばいばいできるようになったなー」

香苗「るみ、そろそろ覚えて。そういうときはばいばいちゃうのよ。おはよー」

「おはよーおはよー。にいちゃんとこおいで? おー、来た来た。おはよー、るみ。んー」

拓真「……香苗ママ、この二人のキスはおとがめなしですか……」

香苗「お兄ちゃんが妹におはよーのキスしてるだけやん。なにか問題が?」

拓真「ほなおれかってええやん! お父さんが息子にご挨拶のキスしようとしてただけやんけ!」

香苗「それ、本気で言うてんの? そのうちるみも喋り出すで? 保育園とかで、うちのパパとにいちゃんはおはよーのキスをしますとか言いふらしたら、あたしは知らんで?」

拓真「うっ」

香苗「なー、るみは賢いもんなー。全部全部喋ってまうやんなー。るみ、るみ、お母さんにもキスして? んー」

拓真「……えーと、あー。るー? お父さんにも……」

香苗「お父さんはあかんで? 危ないからな」

拓真「なんでやねん! おれかってええやん! キスさせろー」

香苗「なんでよ。どんな下心があんのよ」

拓真「納得できーん! おれと晶に対するこの扱いの違いはなによ!」

香苗「ほーら、るみ。みなさまにもご挨拶ー」

るみ「ばいばい?」

「かわいー!」

香苗「ええ子ー!」

拓真「お、おいしいところを全部……」

「子どもに対してなにわけのわからんことを……」

拓真「おれかってちょっとはええ思いしたいわい! つか、この家の大黒柱は……」

「拓真パパ」

香苗「でしょ?」

拓真「……はい、そうです……」

香苗「そんなに目立ちたいんやったら方法はほかにもあるやん」

「そうそう」

拓真「なによ、方法って……」

香苗「あ、それで思い出した。はい、これ」

拓真「なに、この包装紙……」

香苗「エプロン。坂崎さんがご挨拶に際してプレゼントって言うて送ってきてくれはって」

「あ。やっぱ坂崎さんも、おれらにできるのはその程度って思てはる……」

拓真「ふーざーけーんーなー! 揃いも揃ってなに変態の道に……!」

香苗「なに言うてんのよ。るみのエプロンのどこが変態やの」

拓真「へ? あ、あー。るーですか……」

「うひゃ。かわいー。これ、坂崎さんが選んでくれはったんかなー。むっちゃかわいー」

拓真「……ですね……」

「はい、るー。これでよし。さらにかわいくなりましたー」

香苗「拓真はこっち。顎あげて?」

拓真「なに、このネクタイ……」

香苗「ここ見て?」

拓真「あ……」

香苗「な。ワンポイントやけど、るみのエプロンとおそろいやねん。さくらんぼ。なかなかいいでしょ」

「……坂崎さん、どこでこんなん見つけはるんやろ……」

香苗「はい、できた。るみ、お父さんのとこ行ってあげて?」

るみ「パパ?」

拓真「るー…… るー、かわいい! 世界でいっちゃんかわいい!」

香苗「……現金なもんだ……」

「写真撮ったげるよ、拓真。こっち向いて?」

拓真「へへ」

「あ」

香苗「あ」

拓真「へ?」

香苗「るみ、よだれー!」

「うわまた盛大に」

拓真「ぎゃー!」

    ――暗転――

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