うらのおと ご訪問御礼

おとなのための男同士の恋愛小咄
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とあるシステム系企業の大阪本社における一幕


一同「本日もご訪問ありがとうございますっ。システムのご用命がございましたらぜひ我が社へご連絡を。お待ち申しあげておりまーす」

山岸「てなわけで、あれや」

坂本「あれですな」

山岸「まずおれらの自己紹介やろー!」

喜多「そんなん要りませんよぉ。そんなん読みたがってはる人はここの読者さんにはいてはりませんよぉ」

斉藤「おれもそう思います……」

喜多「山岸さんたちは辻本さんも含め、三バカのひとり、で充分やと思います」

坂本「おまえ、どの口が言うかー。おまえこそ我が社を代表するあほのひとりやろがー」

喜多「きゃー。暴力はやめてくださーい」

坂本「暴力ちゃうわい。かわいがったってるだけやんけ」

中野「坂本さん、それは……喜多ちゃんねらいやったっていうことですか……」

星野「おおっ! それは新しい説ですね!」

坂本「やめれ! それはない! 断じてない!」

山口「でも、うちもそういう話、もっとあってもいいですよね。なんていうんですか、ピンクの社内恋愛みたいな……」

山岸「いや、そういうことなら、うちには大物がいてはるから……」

斉藤「ああ…… はじめて聞いたときはびっくりしました……」

坂本「あんたらいつわかったん? おれらはあれよ、辻本が口すべらせて」

山岸「びびったな、あんときは」

坂本「でも、なんとなーく、わかっとったよな」

山岸「柏原さんはともかく、坂崎さんのほうがなー」

坂本「わかりやすすぎやよな!」

斉藤「いやでも、仲が良いってのはわかってましたし、同居してはるってのを聞いたのもびっくりしましたけど、まさかほんまにそんなんなってはるとは……」

山口「でも、聞いてみると、ああそうか、なるほどなー、みたいなのはあったよな」

斉藤「おれは、喜多に無理やり聞かされたんですよ。内緒の話があんねんけどーって」

山口「全然内緒やなかったな。みんな知っとったもんな……」

星野「はーい。おれ、目撃者のひとりでーす」

中野「……そりゃトイレの話ですか……」

星野「……どう見ても柏原さんがネコでした……」

坂本「柏原さんなー。ふだんはそういう人には見えへんよなー」

星野「ふだんはむっちゃ厳しいです。それがあんなねー……」

喜多「あんなどーですか? そこ詳しくっ!」

坂本「ぶっちゃけ、柏原さんならオッケーとか思っちゃったりしちゃったわけ?」

星野「なんでですか! やめてくださいよ!」

喜多「あわててはるのがアヤシイですっ!」

坂本「坂崎さんは? やっぱ仕事中は厳しい人だよなー」

香坂「厳しいっていうか。叱責されたりとかはしないんですけど、不注意のミスとかには辛辣です」

坂本「というと?」

香坂「『まさか校正もせんと書類提出したとかいう阿呆がここにおるとは思わんけどなー』とか、『小学校に戻って算数やりなおしー』とか」

山岸「……それ、ふつうの叱責よりイヤミとちゃうんか……」

香坂「イヤミですよ? でも、ご自分の仕事がきっちりしてはるんで、うちらも文句言えないんですよ」

坂本「そのイヤミな人があれやもんなー」

山岸「そうそう。柏原さんが隣に立ったと思ったら」

坂本「顔が違うもんな、顔が」

山岸「目つきがねー」

香坂「最初見たとき、なにが起こったのかと思いました」

喜多「あれでできてへんかったら、詐欺ですよー」

香坂「そういう意味では、柏原さんのほうがわかりにくかったですね。柏原さんのほうが坂崎さんより、仕事の虫って感じでしたから」

坂本「や、それはあながち間違いではない」

山岸「たしかに。柏原さんのほうは、話がはっきりするまでは表情読むのが難しかった」

星野「……一回、トイレ目撃してくださいよ。どう見ても、柏原さんのほうがメロメロに見えますって」

斉藤「おれも喜多から写メ見せられたときはびびりました……」

山口「ありゃ詐欺だよなー。あんなカワイイとか、思わへんやん、ふだんの柏原さん見とったら」

中野「へたしたら、社内でいちばんカワイイ……」

坂本「中野ー。目が腐ってきてるでー」

香坂「どっちがカワイイかって話やと、うち的には坂崎さんのほうがかわいいように思えるんですが」

山岸「坂崎さんは見た目の話とちゃうやろ。要するにあのギャップが」

美原「カワイーやん、坂崎。どこからどう見ても」

坂本「ぎゃー! 美原さん、いったいいつの間にっ! どこからっ!」

美原「あんたらが三バカとかいう話のあたりから?」

山岸「ほとんど最初っからですやん……」

中野「や、美原さんから見はってカワイイとかいうのはありかもですけど、おれらにはやっぱ厳しい上司っていうか……」

美原「男のカワイさは、三十過ぎてからですよー」

坂本「やめてくださいー。おれらももうすぐ三十なんですよー」

山岸「ぎりぎりまだねばってるんですよ! おれらまだそっちにはいきません!」

室田「おまえら、おとなの男を舐めてんのか」

星野「ぎゃー。室田マネージャー。いつからそこにー!」

室田「うん? 坂本が喜多ねらいとかそのあたりか?」

坂本「それは本気で違いますっ! 勘弁してくださいっ!」

喜多「むきになってるとこがアヤシイです」

坂本「おまえが言うなっ! ますます誤解されるやんけっ!」

室田「そういや三バカ、おまえらなかなか結婚せんな」

坂本「三バカはやめてくださいっ!」

山岸「……仕事仕事で出会いがありません…… 辻本みたいに、学生のときにつかまえとかんとやっぱりなー」

喜多「えー、でも辻本さんのほんとのお相手はー」

香坂「喜多ちゃん、それまだあかん! 内緒っ!」

山岸「内緒ってなにが」

香坂「社内機密ですっ!」

山岸「社内機密? 辻本の結婚がか?」

坂本「頭良さそーな人やったよなー。辻本とは大違いっちゅーか」

山岸「可愛い子どももできちゃってまー」

坂本「おれらが知らんとるまーに」

美原「……やはり三バカ……」

坂本「なにがですかー!」

山岸「やはし合コン……」

喜多「合コンっ!」

星野「おれらもまぜてくださいっ!」

室田「うーん、若いな。さすが二十代」

美原「坂本と山岸は明日ない命ですけどね」

坂本「明日ないって言うなー!」

美原「言うたったやろ、男は三十過ぎてからがおいしいんやって。柏原と坂崎も、深い仲になったんは三十過ぎてからやもーん」

山岸「え、そ、そーなんですか?」

美原「あーもう、坂崎の内に秘めたる恋の陰がやるせなかったったらっ」

中野「さ、坂崎さんの片想いだったんですか……?」

美原「かれも我慢に我慢を重ねておりましたがっ。外には丸見えでございました〜」

室田「そ、そーだったのか……」

香坂「でもなんとなく想像つきます……」

美原「それがどうして現在のかれらに相成りいたったのかっ!」

坂本「そ、それはっ!」

美原「ていうのを次の社内報の特集にしましょうか、室田マネージャー」

室田「……ほんまに、なんでもありやな、きみは……」

美原「もちろん、室田マネージャーにはただでお分けしますよぉ」

山岸「……ってことは、おれらからは金取るんですかっ……!」

美原「売上げはあれよ、辻本の結婚祝いと出産祝いの足しに」

坂本「み、美原さん……いくらなんでも……」

美原「大丈夫よぉ。坂本と喜多が結婚した暁にもちゃんとそれなりに」

坂本「しませんっ! 要りませんっ! 誤解ですっ! 勘弁してくださいっ!」

喜多「坂本さん、嫌がりすぎデスよぉ」

坂本「もうなんも喋るなおまえはっ! 本気にされたらどうするっ!」

喜多「そのときは、真実にしちゃえばいいんじゃないでしょーかー」

坂本「やめろぉっ!」

斉藤「どうなの、そのあたり。なんか知ってんの、香坂?」

香坂「うちは自分に火の粉がふりかかってさえこーへんかったらなんでもいーけど」

坂本「ふざけんな、香坂っ! 思いっきり否定しろっ!」

香坂「でも喜多ちゃんのことやから、坂本さんが否定しはったらしはるほど」

斉藤「その気になる?」

香坂「じゃなくて。坂本さんが嫌がらはるのは、そこに秘めた恋が隠されてるからやって邪推をしてみる」

斉藤「例えば?」

香坂「三人組の残された二人。未だ独身」

山岸「やめんかっ!」

香坂「かれらの慕う上司、柏原先輩の背中を追って、いつの間にかふたりのあいだに芽生えし」

坂本「香坂っ! おいっ!」

喜多「辻本さんも背中追っちゃったもんねー」

香坂「ばっ! 喜多ちゃんっ!」

一同「……はあっ……?」

    ――暗転――



美原「ってあたりを、次号の社内報にしようかと思うんだよねー」

オット「祐子ちゃんの会社はほんまになんでもありなんやねぇ……」

    ――暗転――


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