うらのおと ご訪問御礼

おとなのための男同士の恋愛小咄
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とある企業第 4 幕~三ばか 2/3 の幸薄い日常


■毎度おなじみ

一同「いつもご訪問くださりありがとうございます! システムのご用命がございましたらぜひ当社へご連絡ください! お待ちしておりまーす!」

坂本「てなわけで、あれですな」

山岸「あれでしょう」

坂本「いっせーの、せっ!」

一同「ええ加減おれらにもお相手見つけやがれ、こんちくしょうー!」

坂本「ほんま女はええわ、女は…… なんやかんやでさっさとお相手見つけて結婚ゴールインして子どもまでー!」

山岸「つか、システム部、独身男多すぎやねん……」

坂本「おれらよりも出番あとのくせに、さくっと結婚したやつもいてるっちゅーのが、また腹立ついうたかて。なー、斉藤ー」

斉藤「やー、はは……なんていうか、あのですね……」

市橋「斉藤の場合はあれやな、喜多の同期っちゅーのがきいたな」

坂本「そうですよ! そこですよ! 女優遇されすぎなんですよ。おれらにもお相手をー!」

中山「そういうもんでもあらへんよ。猫と添い遂げる設定されてしもた女もここにおるわけで……」

豊掛「いちばん優遇されてるのは香坂さんやと思います。お相手めっちゃ格好いいんですよ!」

香我美「豊掛さんは大好きなアイドルと添い遂げたらええんやないの?」

豊掛「もちろん、それが夢ですけどね!」

山口「豊掛、おまえもそろそろ現実見ろよ……」

星野「そのまえに、おれらそろそろ人物設定をもう少しはっきりやな……」

塩切「ぼくにしてみたら、坂本さんとか山岸さんって、めっちゃ扱いよくて憧れなんですけど」

坂本「おれらみたいのは扱いええ言わん!」

山岸「ええように使われてるだけいうな……」

小島「そこまで辿り着くだけでも、おれら的には奇跡ですよ…… おれなんか斉藤と同期設定ですけど、扱いの軽いことといったらないです……」

斉藤「う……正直すまんかった…… けど、そういう意味なら、市橋さんてめちゃおいしくないですか? 主要登場人物の誰とも同期やなくて、柏原さんのチームでもないのに、めちゃスポット当たってますよね?」

坂本「ふふん。そうは言うても、市橋さんはおれらと同レベルー。お相手のいてへん仲間ですやん。もっとおれらとも仲良うしましょうよ、市橋さんー」

市橋「勝手に暗黒面に引きずり込むな。おれは既婚者だよ」

一同「え!」

山岸「……なん……だと……?」

坂本「マジですか! 市橋さん、ずるいです! おれにそのポジションくださいよー!」

市橋「それこそなんでやねん。つか、おれだけやないやろ。うちの会社にも既婚者はようけいてるて。たまたまここが吹きだまりになってるだけで」

星野「吹きだまり……」

山口「うわーん、おれ、もうここには来ませんー!」

中山「ていうか。あれやないの? 疫病神は坂本くんと山岸くんのふたりやないの? 実はそれ以外はみんなそれなりにお相手がいたりして」

市橋「あー、それは思てた。ずっと思てた。坂本、山岸、おまえら、もうふたりでくっつ……」

山岸「それはないです! 絶対ないです!」

坂本「つか、あまった人間同士くっつけとけばええいうその魂胆がこの会社の闇の……!」

喜多「必死になって否定しようとしてるところがアヤシイですー」

坂本「ぎゃっ! おまえ、今日出社日ちゃうやんけ! なに突然わいて出てんねん!」

喜多「そろそろ認めちゃいましょーよー。ていうか、みんな胸の内では確信があるわけですよ。坂本さんと山岸さんは仲良すぎです!」

坂本「まとめるな! こんなんふつーじゃ!」

山岸「喜多、おまえ、もうふたりも子どもいてんねんし、ええ加減もうその病気直してくれ……」

喜多「なに言うてはるんですか! 純粋な好意ですよ! おふたりには誰よりも幸せになってほしいというー」

山岸「……おまえ、こういうときだけ、いっつも目ぇきらきらしてるな……」

喜多「人生の潤いなんです~」

市橋「また美原さんみたいなことを……」

坂本「潤いだー? けっ。リアル潤ってるニンゲンはみんな敵じゃ! 当然市橋さんも敵ですよー」

市橋「ええ感じで拗らせてるな、坂本……」

樋口「正直、柏原さんとか辻本さんとか間近で見てて、羨ましいとか思わないですか」

山岸「あー。羨ましいことは羨ましいですよ、それは。はっぴーオーラ満タンなのは正直羨ましい。けど、おれらの目標はそこやなくてですね……」

中野「それにしても、なんで何歳になってもあんな初々しいんですかね、柏原さんは……」

大串「ああ、仕事離れて坂崎さんと一緒のときの柏原さんな。四十路になってあの初々しさは正直化けもんやな……」

山岸「仕事中は歳相応以上に練れた人なんやけどな……」

美原「そんなん普通っしょー。仕事中とつれあいの前とで全然キャラ変わらんニンゲンのほうが珍しいやろ」

斉藤「ぎゃっ!」

坂本「出ましたね…… てか、ここ、ほんまのとこ、こそっと何人いてんねん!」

喜多「坂本さんもあれでしょ。山岸さんとふたりきりでいるときは、ここにいるときと違う、甘~い雰囲気にー」

坂本「ふざけてんのか、おまえはー!」

喜多「きゃー、やめてくださーい! 脳みそこぼれますー!」

市橋「そういや、坂本、山岸、おまえら、ふたりきりでいてるときはどんな感じやねん」

山岸「は?」

坂本「へ?」

市橋「ふたりっきりパート、今まで一回もないやんけ。せやから勘繰られんねやろ。一回、ふたりっきりでいてるとこ、みんなに見せといたらええんちゃうか? したら、喜多とかも納得するやろ」

山岸「いや、それ、なんていうか……」

坂本「別にどっこも変わりませんて! 市橋さんまで勘弁してくださいよ!」

喜多「そ、そ、そ、それ、と、と、と、盗撮してもいいですか!」

坂本「おまえは黙ってーて!」

喜多「きゃー!」

美原「や、それええな。市橋、でかした」

市橋「……美原さんに褒められるとか、雪降りますよ……」

美原「まま、そう言わんと。そんなわけで、樋口、舞台設定ー!」

樋口「はっ。こんなこともあろうかと。ささ、お二方こちらへ」

山岸「……樋口さん、なんです、これ……」

樋口「柏原さんと坂崎さん御用達、といえば」

喜多「喫煙所!」

樋口「ではなく。ふたりの原点、といえば」

香坂「お待ちしておりました。男性用トイレの準備できてますよ」

坂本「こ、香坂ー! おまえまでー!」

美原「坂本と山岸のために特別セッティングしたったわけよ。さー、いつもどおり」

樋口「いつもの会話をどぞ」

坂本「ちょっ、待てっ!」

山岸「なんなんですか、これー!」

美原「なに慌ててんの。いつもの会話でええねんて。ささ、あたしらはささっと退場してやるからー」

香坂「いつもの会話をどうぞ」

    ――拍子木鳴る。ちょーん。



■ふたりきり

山岸「あー、えー。こほん」

坂本「ほんまもーあの人たちはっ! いったいおれらをどーしたいわけ!」

山岸「どーっていうか…… 遊ばれてるだけやろ……」

坂本「もー、おれ、泣く! 仕事は死にそうに忙しいうえに、いつまで経っても独り身で、出番も辻本のおまけみたいなもんで、ずっとずっとずーっと扱い悪いうえに、こんな目にまであわされてー!」

山岸「あー、おまえはそうだよな。おれは柏原さんの直属で樋口さんとも絡みがあるから、いっつも鬼のように働かされるうえに、いつまで経っても半人前扱いの現場ばっかり……」

坂本「それでも、おれよかおまえのほうが出番あるやんけー。おれなんか、活躍する場はここしかなくて、しかも喜多と絡まされて、気づいたらその喜多は斉藤とええ仲にー!」

山岸「……坂本、それ、おまえ、やっぱ喜多のこと……」

坂本「はあ? ちゃうって。そういうこと言うてんちゃうて! おれはただもうちょっとだけ扱いをやなー!」

山岸「……おれの前でまで建前で話さんでええて。正直、ちょっとショックやったんちゃうか? 喜多のこと」

坂本「う……? うー。……正直な話をするとやな」

山岸「おお」

坂本「あ、おれ、喜多にも負けたんやて、そういう思いがずっとこうじくじくと……」

山岸「あー、うん」

坂本「……おれかて出番欲しいねん…… 結婚もしたい。せめて誰かと交際したい! そういうこと考えるの! おかしいか?」

山岸「あ、やー。そっか。坂本、悩んでたんやな」

坂本「悩むっつーか…… ちょっと待て。おまえ、なに平然とした顔してんねん…… もしや、おまえ、まさかー!」

山岸「あー。正直な話をするとやな」

坂本「……山岸ぃ。おれおいてひとりで幸せになんなよぉー」

山岸「なんでやねん。や、ぶっちゃけ、おれ、出番に関してはそこまで不遇とは思てへんいうか。シングル生活も、おまえほど不満ない。仕事は割と充実してるし。それに……」

坂本「……ん……」

山岸「おれにはおまえがいてるし。やから、これでええかなって。おまえとこやって話したり、たまに一緒に飯食ったり。おれ、それだけで、けっこう、なんていうか……」

坂本「……山岸、おまえ……」

山岸「おれ、おまえと同期で良かったよ。それだけは言える」

坂本「……山岸……おまえ……」

山岸「ん。なに?」

坂本「……おかしないか? いっつものおまえとちゃうやろ……」

山岸「そんなことないでー。おれはいっつもこんな感じー」

坂本「……おまえ……おまえ……山岸ちゃうなー?」

    ――ちょーん。



■司令室本部

美原「あかんか。くっそ、坂本め。あいつ、山岸のこと知りすぎてるわ」

瀬那「おれの声色に無理がありましたか」

美原「や、あんたはがんばってた。ていうか、何もんなのよ、坂崎、あんた」

瀬那「美原さんがそれ言いますか。台本書いたん美原さんやないですか」

美原「坂崎がこんなアテレコうまいとはさすがに思てへんかったしー」

瀬那「けど、すぐばれましたね。さすがやな、山岸、おまえと坂本との絆はおれらにはどうにもできん」

山岸(本物拘束中)「ふぐぐぐぐ」

樋口「てゆか、あの等身大フィギュアがすごすぎですよ…… どやって作ったん、瀬那っち」

瀬那「3D プリンター。モーションは里哉作。このコントローラーでこうやって」

樋口「こうか? 動け、山岸さん!」

瀬那「正太郎くんの気持ちがわかるやろ」

美原「おー、滑らかに動くー。さすが柏原やな」

山岸(拘束中)「ふぐぐぐ」

里哉「あの……こんなんに使うなんか知らんかって、おれ…… 悪かったな、山岸」

美原「おー、坂本、狂乱中」

瀬那「もう愛でええやろ、あれ」

坂本『山岸、山岸ー! 無事かー? どこにいてんねん。山岸ー!』

里哉「ごめんな、山岸、痛かったやろ。すまん」

山岸(拘束解けた)「ぶはっ! な、な、な、なにしてはるんですか!」

美原「ん? 人生の潤い」

瀬那「の楽しみ」

樋口「のお手伝い」

山岸「……悪魔だ……」

里哉「……悪魔やな……」

山岸「……柏原さん、おれ、もう、柏原さんのこと、金輪際羨んだりしません……」

里哉「……おれの苦労、わかってくれたか……」

山岸「……はい……泣いていいですかね……?」

里哉「……ほんますまん……おれも泣きそうだよ……」

坂本『山岸ー! なんでもする。なんでもしたるから、無事に帰ってきてくれー!』

美原「お、おいしい展開キタ」

樋口「なんでも、言わはりましたね」

瀬那(マイク)『……おれのためやったら、なんでもしてくれんのか、坂本……』

坂本『……わかりましたよ……その声、坂崎さんですね…… もーええかげんにしてください!』

美原「お、ばれた」

瀬那「ばれましたね。愛かねぇ」

樋口「や、さっきのはさすがに本性出すぎやったって、瀬那っち」

山岸「おれ、無事やから、坂本ー! ああ、なんだっておれら、こんな幸薄いねん……」

里哉「悪い……ほんま心底すまん……」

坂本『山岸ー! どこいてんねん、おまえー! 無事かー! ちくしょー! なんでおれら、こんな幸薄いねんー!』

美原「お、シンクロしたよー」

瀬那「愛やな、山岸」

山岸「鬼ですか!」

樋口「愛でしょ」

里哉「悪魔だよ……」

坂本『山岸ー!』

山岸「坂本ー!」

    ――ちょーん。



■実は総元締め?

喜多「ああ、もう、あんな想いおうてはるのにー。もうつきおうてしもたらええのにー」

香坂「なんであかんのかしらね」

斉藤「……おまえら……どんな悪の組織が展開してんねん、この会社……」

    ――暗転――


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