『赤ペン先生』

手紙を受け取って、差出人を見て驚く。
数ヶ月前に村を発ったキャラバンの、……色々あった友人兼幼馴染み。
何かあったのだろうか、また資金が不足したのかと、恐る恐る封を開けて、紙を広げる。

真っ赤だった。
一瞬血まみれの手紙を受け取ったのかと、蒼くなった。
だが、

『こんないだはほんとごめ! その内ぜったい返すっから! たぶん倍にして返す! のしつきで!』

まるで喋っているかのような勢いのある文字の列。それは特徴有るヴィ・ワの字。
そして、所々に書き込まれた赤いものは、添削の後らしい。それはしっかりしたガーネットの字。

“ハネすぎると別の字に読める可能性高し”
“単語が前後していて文法的におかしい。注意!”
“えくすくらめーしょんまーく多すぎ”などなど、注意点とおぼしき言葉がびっしり。

……ガーネット、ちょっと細かいよ。
それともヴィ・ワの文はそれほど凄まじいのかもしれないけど。

おそらく手紙を送るのに、ヴィ・ワは彼女に添削をお願いしたのだろう。
普段から本を読みなれている彼女の文章力はかなりのものだから。
そして、彼女自身も、アレを少しばかり気にしているのかもしれない。
ちょっと悪い言い方で『かつあげ』、友好的に見れば『カンパ』。
本当に嫌なら、渡しはしなかったよ?とも思うのだけれど、向こうは結構負い目に感じていたんじゃないか。
だからヴィ・ワはきちんとした手紙を送りたいと、添削を頼み。
だからガーネットは面倒くさいことを嫌がることもなく、引き受けた。
そう考えるのは、少し変だろうか。
けれど。

『ああっ! しまった、書き直した方じゃなくって、下書きの方送っちゃったかも!』
『ええ!? せっかく頑張って添削したのに……』
『ごめーんっ』
『もう……』

そんなやり取りが頭の中に浮かんで、ちょっとだけ笑ってしまった。

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