あなたの大切に思う人を思い出してください。
あなたを大切に思う者がいることを、思い出してください。
あなたのことを、毎晩思い出し、無事に帰ってくるようにと祈りつづける者がいることを、思い出してください。
あなたは、帰らなければならない。
あなたはまだ、生きなければならない。
おかえり、あなたを待つ人のもとへ。
「気がついた!?」
涙でぼろぼろになった顔が、視界いっぱいにあった。
「……あれ?」
「あれ? っじゃないよ! もう、本当に心配したんだから!」
安心したのか、涙目のまま、顔を真っ赤にして怒り出した。
「ああ、そっか……」
思い出した。ついさっき、火の魔法をくらい炎に包まれ、そこに魔物の横殴りを受けてしまったことを。
そうすると、自分は倒れたのだろうか。
「あの魔物は?」
「なんとか、倒した……」
一人で心細かったと、呟きながら涙を拭うその姿に、胸が痛む。そんな様子を見せたのは、初めてだったから。
「ごめん、今度は気をつけるから」
「……そうしてよ。いきなり一人になるなんて、もういやだからね」
「うん。約束する」
しっかりと目を見つめ、頷いた。
もう、待たせない。
了